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第五章
9.いらないおまけがついてきた【5】
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「そんなに俺と兄弟が嫌なのか?」
「当たり前だ」
「即答か、つまらん。昔はマークお兄ちゃ~んって追いかけてきて、可愛かったのになぁ」
ベンダーツさんはヴォルの迷いのない返答に苦笑いを浮かべ、思い出すかのように少し遠くを見るような目をしました。
──ええっ?!ヴォルの幼少の話ですかっ?き、聞きたいですっ。
口には出さなかったですが、私の内心では思わずベンダーツさんに掴み掛からん勢いでした。
「……いつの話だ」
「ん?まだヴォルがこんな小さかった頃」
そう言って腰の辺りに手を広げて見せるベンダーツさんです。
──それ、本当に幼少の頃ですよね。五歳とか六歳とかの。
「知らん」
「まぁ……一年もなかったけどな。皇太子教育が始まってからは、俺の事もファミリーネーム呼びになったし」
「……覚えてはいないが、そう教育を受けたからだろ」
ベンダーツさんとヴォルの関係性は、こういった幼い頃から続いているのだと改めて知らされました。
そうなんですか──。お二人の間にも色々な物語がありそうです。
少し嫉妬してしまいそうになりましたが。
「お?あの山の麓辺りだ」
ベンダーツさんが指し示す方向には、低木草地帯に似つかわしくない木々がこんもりと盛り上がっていました。
ここまで来るのにあまり木々が多くなかったのに、その辺りはとても自然豊かになっています。
「山……なのか?」
「あの林の先は霧で見えないんだ。分かるだろ?」
確かにベンダーツさんの仰る通り、緑の木々の先は白く霞んでいました。
その為、森の大きさすら見極められないのです。
「結界か」
「そう言う事。魔力所持者でないと、その入り口すら見つける事も出来ない隠れ里。興味わいた?」
「……面白い」
ヴォルがニヤリと笑みを浮かべました。
結界で森を囲んで外部から侵入出来ないようにしているなんて、ここにはかなり強い魔力所持者がいるのでしょうか。
それにしても、ヴォルの表情が何処と無く黒いです。
「ヴォル、怖いで……よ?悪い人みたい……なの」
「ククッ、メルってば本当に不器用さんだな。良いよ、もう。それで口数が減ったら、俺がその分ヴォルの相手をしないとならないから疲れるし。メルの普通で喋ろうぜ」
大笑いのベンダーツさんですが、私的には一生懸命でした。でも、これで話し方を変えなくても良いのは助かります。
それに、絶対的に人前で噛まない自信がありませんでした。
「はい……、ありがとうございます」
「メル。こんな奴に礼など必要ない」
思わず頭を下げた私に、ヴォルが後ろから頭を撫でてくれます。
ウマウマさんに二人で乗っているのであまり顔を見る事が出来ませんが、頭を撫でられるのは好きです。──子供扱いをされているのかもしれませんけれど。
「事あるごとにイチャつきやがって。ヴォルがそんなタラシだとは知らなかったぜ」
「何とでも言え。メルは俺の妻だ」
「はいはい、 ご馳走さまでした。そうだ、メル。三角関係とかやってみない?案外、俺の方が良くなるかもよ?」
ベンダーツさんがヴォルと私の乗ったウマウマさんにご自分のそれを近付けました。──えっと、私に何を求めていらっしゃるのでしょうか。
簡単に言われていますが、三角関係というのは観劇的なやつですか?村にはあまり劇団が来なかったので詳しくは知りませんが。
「殺すぞ、お前」
「嫌~、怖い~。……冗談だ。すぐ魔力を集めるのはやめろ、ヴォル」
「俺は冗談が嫌いだ」
「わ、分かったから魔法はやめようぜ」
ウフフ──。何だか口調の違いだけなのですが、酷くお二人の距離が近い気がします。
そうしてそんな風にジャレ合いながら、私達はクスカムの集落の入り口を探しに森へ足を向けたのでした。
「当たり前だ」
「即答か、つまらん。昔はマークお兄ちゃ~んって追いかけてきて、可愛かったのになぁ」
ベンダーツさんはヴォルの迷いのない返答に苦笑いを浮かべ、思い出すかのように少し遠くを見るような目をしました。
──ええっ?!ヴォルの幼少の話ですかっ?き、聞きたいですっ。
口には出さなかったですが、私の内心では思わずベンダーツさんに掴み掛からん勢いでした。
「……いつの話だ」
「ん?まだヴォルがこんな小さかった頃」
そう言って腰の辺りに手を広げて見せるベンダーツさんです。
──それ、本当に幼少の頃ですよね。五歳とか六歳とかの。
「知らん」
「まぁ……一年もなかったけどな。皇太子教育が始まってからは、俺の事もファミリーネーム呼びになったし」
「……覚えてはいないが、そう教育を受けたからだろ」
ベンダーツさんとヴォルの関係性は、こういった幼い頃から続いているのだと改めて知らされました。
そうなんですか──。お二人の間にも色々な物語がありそうです。
少し嫉妬してしまいそうになりましたが。
「お?あの山の麓辺りだ」
ベンダーツさんが指し示す方向には、低木草地帯に似つかわしくない木々がこんもりと盛り上がっていました。
ここまで来るのにあまり木々が多くなかったのに、その辺りはとても自然豊かになっています。
「山……なのか?」
「あの林の先は霧で見えないんだ。分かるだろ?」
確かにベンダーツさんの仰る通り、緑の木々の先は白く霞んでいました。
その為、森の大きさすら見極められないのです。
「結界か」
「そう言う事。魔力所持者でないと、その入り口すら見つける事も出来ない隠れ里。興味わいた?」
「……面白い」
ヴォルがニヤリと笑みを浮かべました。
結界で森を囲んで外部から侵入出来ないようにしているなんて、ここにはかなり強い魔力所持者がいるのでしょうか。
それにしても、ヴォルの表情が何処と無く黒いです。
「ヴォル、怖いで……よ?悪い人みたい……なの」
「ククッ、メルってば本当に不器用さんだな。良いよ、もう。それで口数が減ったら、俺がその分ヴォルの相手をしないとならないから疲れるし。メルの普通で喋ろうぜ」
大笑いのベンダーツさんですが、私的には一生懸命でした。でも、これで話し方を変えなくても良いのは助かります。
それに、絶対的に人前で噛まない自信がありませんでした。
「はい……、ありがとうございます」
「メル。こんな奴に礼など必要ない」
思わず頭を下げた私に、ヴォルが後ろから頭を撫でてくれます。
ウマウマさんに二人で乗っているのであまり顔を見る事が出来ませんが、頭を撫でられるのは好きです。──子供扱いをされているのかもしれませんけれど。
「事あるごとにイチャつきやがって。ヴォルがそんなタラシだとは知らなかったぜ」
「何とでも言え。メルは俺の妻だ」
「はいはい、 ご馳走さまでした。そうだ、メル。三角関係とかやってみない?案外、俺の方が良くなるかもよ?」
ベンダーツさんがヴォルと私の乗ったウマウマさんにご自分のそれを近付けました。──えっと、私に何を求めていらっしゃるのでしょうか。
簡単に言われていますが、三角関係というのは観劇的なやつですか?村にはあまり劇団が来なかったので詳しくは知りませんが。
「殺すぞ、お前」
「嫌~、怖い~。……冗談だ。すぐ魔力を集めるのはやめろ、ヴォル」
「俺は冗談が嫌いだ」
「わ、分かったから魔法はやめようぜ」
ウフフ──。何だか口調の違いだけなのですが、酷くお二人の距離が近い気がします。
そうしてそんな風にジャレ合いながら、私達はクスカムの集落の入り口を探しに森へ足を向けたのでした。
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