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第五章
2.そんな生活があった【4】
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「マズイ事になった」
不意にヴォルが呟きました。
濡れた手を拭いて彼を見上げると、どうやら帰ってきた精霊さんとお話をしているようです。──でも良い報告ではなかったようで、難しい顔をしていました。
「メル。落ち着いて聞いてくれ。……城内の人間全てが眠っているようだ」
「……全て、が?」
ヴォルが一言前置きをしてから告げます。
それを聞いて私は勿論驚きましたが、取り乱す事はありませんでした。
「結界に異常はない。内部の何らかの異変と思って良い。俺は調査の為に城内を見て回るつもりだ。メルは……」
「私も行きます」
ヴォルの言葉に被せるようにして主張します。──だって、こんなところで一人でお留守番だなんて絶対に嫌でした。
いえ、キッチンでなくとも嫌ですよ。
「……危険かもしれないのだぞ」
「それはここにいたって同じではありませんか?」
少し低い声でヴォルが問い掛けてきます。それでも私の気持ちは変わらないのでした。
だってヴォルのいないところなら、何処だって同じなのですよ。
「結界を……「嫌です」……」
今度は彼の言葉を食い気味に答えます。
結界の中だろうと、精霊さんがついていようと同じなのですって。
「私はヴォルがいるところが良いです」
強く訴えました。
真っ直ぐ視線を向け、引く意思がない事を訴えます。
「……分かった」
「ごめんなさい。私が一緒だと、ヴォルの負担になるかもしれないのですけど。それでもここに一人でいるのなんて嫌なのです」
渋々といった感じでヴォルが了承すると、私は素直に謝罪しました。
「あぁ。俺もメルを残していくのは心配だ。共に行こう」
「はいっ」
改めて同行を求められ、元気に頷きます。
大体私って戦闘では全く役に立たないのですから、元気に笑っているくらいしか出来る事がなかったりします。
そうしてヴォルとお城の中を見て回ったのですが、見事に皆さんが寝ていました。
勿論夜中なので眠る事が悪い訳ではないのですが、ベッドで寝ていない人達に問題の鍵があるようなのです。
「倒れるように寝てしまったようですね」
座り込んで確認してみますが、その人達には特に異常がないように見えました。
それでも力尽きるように、その場に崩れるようにして眠ってしまっているようです。
「魔法か」
呟かれたヴォルの言葉に、私は首を傾げました。
魔法?──眠ってしまう魔法があるのですか。それは眠れない人には便利ですよね。私には必要ないですけど。
だって私は自慢ではありませんが、何処でも寝られますから。
「揺すっても起きないですよ?」
「あぁ。……元を探すしかなさそうだな」
魔法を掛けた人って言う事ですかね。
立ち上がったヴォルの後を追い掛けます。──って言っても、置いて行かれるような事はないですけどね。
ヴォルは常に私の居場所を把握していると言うか、気を配ってくれているようですから。
これは旅をしていた時もそうでしたが、戦闘中でも自分と私の場所を意識されていた気がします。
勿論視線をこちらへ向ける訳ではないのですが、それは感覚の鋭さの違いなのでしょうか。
「何処も同じだな」
「はい。……ベンダーツさんの無防備な顔、初めて見ました」
ここが最後とばかりに様子を見に来た執務室でした。
そしてヴォルと二人、目の前で机に伏せるようにして眠っているベンダーツさんを見ます。
やはり身体を揺すってみても起きないのでした。
不意にヴォルが呟きました。
濡れた手を拭いて彼を見上げると、どうやら帰ってきた精霊さんとお話をしているようです。──でも良い報告ではなかったようで、難しい顔をしていました。
「メル。落ち着いて聞いてくれ。……城内の人間全てが眠っているようだ」
「……全て、が?」
ヴォルが一言前置きをしてから告げます。
それを聞いて私は勿論驚きましたが、取り乱す事はありませんでした。
「結界に異常はない。内部の何らかの異変と思って良い。俺は調査の為に城内を見て回るつもりだ。メルは……」
「私も行きます」
ヴォルの言葉に被せるようにして主張します。──だって、こんなところで一人でお留守番だなんて絶対に嫌でした。
いえ、キッチンでなくとも嫌ですよ。
「……危険かもしれないのだぞ」
「それはここにいたって同じではありませんか?」
少し低い声でヴォルが問い掛けてきます。それでも私の気持ちは変わらないのでした。
だってヴォルのいないところなら、何処だって同じなのですよ。
「結界を……「嫌です」……」
今度は彼の言葉を食い気味に答えます。
結界の中だろうと、精霊さんがついていようと同じなのですって。
「私はヴォルがいるところが良いです」
強く訴えました。
真っ直ぐ視線を向け、引く意思がない事を訴えます。
「……分かった」
「ごめんなさい。私が一緒だと、ヴォルの負担になるかもしれないのですけど。それでもここに一人でいるのなんて嫌なのです」
渋々といった感じでヴォルが了承すると、私は素直に謝罪しました。
「あぁ。俺もメルを残していくのは心配だ。共に行こう」
「はいっ」
改めて同行を求められ、元気に頷きます。
大体私って戦闘では全く役に立たないのですから、元気に笑っているくらいしか出来る事がなかったりします。
そうしてヴォルとお城の中を見て回ったのですが、見事に皆さんが寝ていました。
勿論夜中なので眠る事が悪い訳ではないのですが、ベッドで寝ていない人達に問題の鍵があるようなのです。
「倒れるように寝てしまったようですね」
座り込んで確認してみますが、その人達には特に異常がないように見えました。
それでも力尽きるように、その場に崩れるようにして眠ってしまっているようです。
「魔法か」
呟かれたヴォルの言葉に、私は首を傾げました。
魔法?──眠ってしまう魔法があるのですか。それは眠れない人には便利ですよね。私には必要ないですけど。
だって私は自慢ではありませんが、何処でも寝られますから。
「揺すっても起きないですよ?」
「あぁ。……元を探すしかなさそうだな」
魔法を掛けた人って言う事ですかね。
立ち上がったヴォルの後を追い掛けます。──って言っても、置いて行かれるような事はないですけどね。
ヴォルは常に私の居場所を把握していると言うか、気を配ってくれているようですから。
これは旅をしていた時もそうでしたが、戦闘中でも自分と私の場所を意識されていた気がします。
勿論視線をこちらへ向ける訳ではないのですが、それは感覚の鋭さの違いなのでしょうか。
「何処も同じだな」
「はい。……ベンダーツさんの無防備な顔、初めて見ました」
ここが最後とばかりに様子を見に来た執務室でした。
そしてヴォルと二人、目の前で机に伏せるようにして眠っているベンダーツさんを見ます。
やはり身体を揺すってみても起きないのでした。
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