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第四章
8.歩み寄って【3】
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「最近は少し違いますよね?」
「え……っ」
何かを含んだような問い掛けでした。
ガルシアさんはヴォルと私の一番近い場所にいてくれる存在です。私達の関係性に気付かない筈もないですよね。
「メルシャ様は、ヴォルティ様の事をどうお考えですか?」
「ヴォルを……?」
ガルシアさんの問い掛けに落としていた視線を彼女に向けます。
これはヴォルにも問われた事でした。
「す……、好き……です」
「……それだけですか?」
「っ?!」
強く言われた訳ではありません。でもガルシアさんは私を見つめたままです。そしてまたヴォルと同じ問いを向けられてしまいました。
『それだけ』とは、何を指しているのでしょうか。
思わず息を呑んだ私に、ガルシアさんはフワリと笑みを浮かべました。
「感情というのは、時々厄介なものでございます。頭で考えてもどうにもならない事の方が多いので、自分の感情に振り回されてしまう事もあるでしょうね」
柔らかいガルシアさんの表情にホッとしつつも、話の内容はかなり私の心情を見抜いたものでした。
彼女の言葉通り、私は自分自身に振り回されている自覚があります。
「私……は……、どうしたら良いのか……分からない、のです」
冷めてしまったカップに再び視線を落として溢れた言葉は、既に自分の感情に翻弄されている私の本音でした。
「どうしたらも、こうしたらもないですよ。自分達を取り囲む環境は、刻一刻と変わっていきます。変化の波に乗り遅れたら、二度と取り戻せなくなってしまいますよ?」
少しだけ厳しく告げるガルシアさんに、私は恐る恐る顔を上げます。
『変化の波』が何を意味するのかは分かりませんが、この場合の取り戻せなくなるのはヴォルの事だと分かりました。
「一言でなくても良いのです。ヴォルティ様の事をどうお考えですか?」
「……一緒に……いたい、です。……触れられるのは……気持ちがフワリとして……、姿を見ないと……不安で……。声が聞こえると、ホッとして……でも、また姿を捜してしまいます。少しずつ……初めて見る事の出来るヴォルが嬉しくて……、もっと知りたいと思って……。ヴォルが……好きになっても良いと言ってくれた時、凄く嬉しくて……結ばれた時、凄く幸せで……」
支離滅裂でも、私は私の思ったままを口にしました。
ガルシアさんはそんな私の話を、小さな相槌を返しつつ聞いてくれます。
「それでは今のメルシャ様はどうなのですか?」
「……苦しい……です。あまり触れてくれなくなって……あまり話をしてくれなくなって……笑ってくれなくなって……」
ポロリと手の甲に滴が落ちました。
私はまたいつの間にか泣いていたようです。
「そうですか、苦しかったですね。……でも、ヴォルティ様も同じ様に思っていらしたかもしれないですね?」
「ヴォル……も?」
「えぇ。残念ながら人は、言葉を使わなくては心を伝える事が出来ません。言葉が少し足りないだけで思い違いをしてしまうなんて事、いくらでもありますよ?」
思い違いをして──。
そうです。私、言葉が足りないようです。一言でなんて、ヴォルへの気持ちを伝えられる訳がないではないですか。
「時には感情に身を任せても宜しいのではないでしょうか」
感情に──。
私が気付いた事を察したのか、ガルシアさんは優しく後押ししてくれます。
「メルシャ様は少々考えすぎなところがあるようですからね。思慮深いのは良いのですが、臆病すぎるのはどうかと思いますよ?」
ガルシアさんの言葉に、確かにあれこれと考えを巡らせていた事を思い出します。
私、そんなに臆病──ですか?
「え……っ」
何かを含んだような問い掛けでした。
ガルシアさんはヴォルと私の一番近い場所にいてくれる存在です。私達の関係性に気付かない筈もないですよね。
「メルシャ様は、ヴォルティ様の事をどうお考えですか?」
「ヴォルを……?」
ガルシアさんの問い掛けに落としていた視線を彼女に向けます。
これはヴォルにも問われた事でした。
「す……、好き……です」
「……それだけですか?」
「っ?!」
強く言われた訳ではありません。でもガルシアさんは私を見つめたままです。そしてまたヴォルと同じ問いを向けられてしまいました。
『それだけ』とは、何を指しているのでしょうか。
思わず息を呑んだ私に、ガルシアさんはフワリと笑みを浮かべました。
「感情というのは、時々厄介なものでございます。頭で考えてもどうにもならない事の方が多いので、自分の感情に振り回されてしまう事もあるでしょうね」
柔らかいガルシアさんの表情にホッとしつつも、話の内容はかなり私の心情を見抜いたものでした。
彼女の言葉通り、私は自分自身に振り回されている自覚があります。
「私……は……、どうしたら良いのか……分からない、のです」
冷めてしまったカップに再び視線を落として溢れた言葉は、既に自分の感情に翻弄されている私の本音でした。
「どうしたらも、こうしたらもないですよ。自分達を取り囲む環境は、刻一刻と変わっていきます。変化の波に乗り遅れたら、二度と取り戻せなくなってしまいますよ?」
少しだけ厳しく告げるガルシアさんに、私は恐る恐る顔を上げます。
『変化の波』が何を意味するのかは分かりませんが、この場合の取り戻せなくなるのはヴォルの事だと分かりました。
「一言でなくても良いのです。ヴォルティ様の事をどうお考えですか?」
「……一緒に……いたい、です。……触れられるのは……気持ちがフワリとして……、姿を見ないと……不安で……。声が聞こえると、ホッとして……でも、また姿を捜してしまいます。少しずつ……初めて見る事の出来るヴォルが嬉しくて……、もっと知りたいと思って……。ヴォルが……好きになっても良いと言ってくれた時、凄く嬉しくて……結ばれた時、凄く幸せで……」
支離滅裂でも、私は私の思ったままを口にしました。
ガルシアさんはそんな私の話を、小さな相槌を返しつつ聞いてくれます。
「それでは今のメルシャ様はどうなのですか?」
「……苦しい……です。あまり触れてくれなくなって……あまり話をしてくれなくなって……笑ってくれなくなって……」
ポロリと手の甲に滴が落ちました。
私はまたいつの間にか泣いていたようです。
「そうですか、苦しかったですね。……でも、ヴォルティ様も同じ様に思っていらしたかもしれないですね?」
「ヴォル……も?」
「えぇ。残念ながら人は、言葉を使わなくては心を伝える事が出来ません。言葉が少し足りないだけで思い違いをしてしまうなんて事、いくらでもありますよ?」
思い違いをして──。
そうです。私、言葉が足りないようです。一言でなんて、ヴォルへの気持ちを伝えられる訳がないではないですか。
「時には感情に身を任せても宜しいのではないでしょうか」
感情に──。
私が気付いた事を察したのか、ガルシアさんは優しく後押ししてくれます。
「メルシャ様は少々考えすぎなところがあるようですからね。思慮深いのは良いのですが、臆病すぎるのはどうかと思いますよ?」
ガルシアさんの言葉に、確かにあれこれと考えを巡らせていた事を思い出します。
私、そんなに臆病──ですか?
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