ある日、突然始まったかのように思えたそれ

まひる

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第四章──山椒魚(サンショウウオ)──

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※ ※ ※

 酪農家の一日は早い。ぼくたちに振り分けられた担当は、一日三分割ぶんかつ。五時から十二時まで一番担当。九時から十二時と、十五時から十八時まで二番担当。十五時から二十一時まで三番担当。十二時から十五時までは休憩時間の為、基本的には休みだ。
 四人で順番にローテーション。二日働いて三日目休み。三日働いて四日目五日目に連休となる。休みはその時の二番担当。初日の今日は、名渡山などやまだけ三番担当。その分、明日は休み。
 そんな感じで組まれた予定表を見る。誰かと休みが一緒になる場合もあれば、一人の時もあった。この日は課題をやろう。一人で遊びになんて行けない。

潤之介じゅんのすけと休みがかぶるの、初回は八月二日か。なぁこの日、街に遊びに行こうぜ」
「うん、良いよっ。楽しみ。でもぼく、何処に何があるのか分からないから。臥竜がりゅうと一緒に、行けそうなところを探したいな」
「おぅ、一緒にな」
「諸君っ。その為の観光ガイドなのだよぉ」
「おっ。たまにはやるな、名渡山」
「おぉ~、たまにはな~。って俺……褒められてるんだよな、田地たじぃ?」
「まぁ、そんな感じだ。で、最終日八月二十五日。俺たち、揃って休みなわけじゃん。その日の行き場所も選出しないとだぜ?」
「そっかぁ。二人で先に行っちゃったら、四人で行く時に初めてじゃなくなるもんね」
「それならそっちから先に決めようぜ。名渡山の仕事開始には、まだ時間があるだろ。おれと潤之介は、後で決めるからよぉ」
「「おぅ」」
「楽しみぃ」

 近くの駅までの行き帰りは。酪農家の誰かが出るついでに、車で送っていってくれるらしい。
 とても助かる、至れり尽くせりだ。それに、公共交通サービスで自由行動だなんて。ぼく、ワクワクが止まらない。

※ ※ ※

 夕食後。部屋でそれぞれの自由時間だ。
 一ヶ月滞在する事もあり。学校の課題なども含めて、結構な荷物がある。それらを出して整頓しながら、それでもぼくはニコニコが止まらない。

「ふふっ」
「潤之介、楽しそうだなぁ」
「うん、スッゴク楽しい」
「来て良かったな」
「うんっ」

 与えられた二人部屋。ぼくは臥竜と同室で、それも楽しい要因だった。
 いつも宗颯そうりゅう寺──冴木さえき家では、ぼくに個室が与えられている。叔父さんの家にいた時のような。四畳半の物置部屋じゃなく、立派な部屋だ。
 和室だけど、綺麗で清潔感のある場所。これからぼくの部屋なのだと言われた時、思わず涙がでちゃった。臥竜や天照てんしょうさんは慌ててたけど、嬉しくて仕方がなかったんだ。
 今回は二人部屋だけど、それもまた新鮮で。本当に毎日幸せ。
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