22 / 52
第二章──解放者──
じゅう
しおりを挟む
※ ※ ※
「冴木と申します。昨日もお電話致しましたが、潤之介くんの事ですが」
「あぁ、あいつ何かやったの?今、父さんも母さんもいないんだよね」
「それでは、またお時間を改めて」
「いや、良いよ。何か、お宅が面倒みてくれるんでしょ?昨日、そんな話をして喜んでたよ。学校も、面倒みてくれるんだって?こっちとしては、清々するよ。いっつも、鬱陶しい感じだったんだよねぇ。鹿毛だか何だか知らないけどさ。ド田舎の部族の風習なんて、こっちには迷惑しかないっての」
「……それでは。潤之介くんは、もうそちらへ顔を出さなくとも宜しいと」
「あぁ、良いよ良いよ。もう顔も見たくないって」
「…………分かりました。では、そちらの潤之介くんの身の回りの品。教科書類など、本日承りに伺います」
「あぁ、そうして。マジでもう、金とか一切払わないからねっ」
「構いません。書類上の手続きもございますので、本日改めて伺います」
※ ※ ※
「え?何。冴木って、寺の坊主?」
「そうらしいわね。本当に、何をやらかしたのかしら」
「あぁ、もう良いだろう。もう私たちとアレとは、書類の上でも無関係になったんだ」
「本当に、貴方のお兄さん。面倒事を振ってくれたわよね」
「仕方がないだろう。私だって、急にアレを押し付けられて困ったんだ」
「そうは言っても。結局面倒を見るのって、私に丸投げだったじゃないの」
「私は働いているのだぞ。家の事は、妻であるお前がやるべきだろう。アレの事だって。兄さんから養育費として金がもらえるからって、お前だって喜んでいただろう」
「あぁ、それもそうね。あら、どうしようかしら。もうあのお金、もらえないのよね」
「まぁ、そうだろうな」
「え。それじゃあ、俺の小遣いは?」
「嘘を言って、まだ養育している事に出来ないかしら」
「それもそうだな。どうせ、会いに来ないんだから。分からないだろう」
※ ※ ※
「ちょっと、貴方。まだあのお金、入らないの?」
「それがだな。私も連絡を取っているのだが、一向に兄さんと話が出来ないんだ」
「どうするのよ、貴方。今まであのお金でやりくりしてたのよ?このバッグのお金だって、まだ支払いが残ってるのに」
「何だ、お前。また鞄を買っていたのか。私も、新しいゴルフクラブが欲しかったのに」
「こんな事なら、あの指輪を買っておくんだったわ」
「私もだ。来月は部長を旅行に連れていく事になっているのに」
「ねぇ、俺の小遣いはぁ?」
「「煩いっ」」
「冴木と申します。昨日もお電話致しましたが、潤之介くんの事ですが」
「あぁ、あいつ何かやったの?今、父さんも母さんもいないんだよね」
「それでは、またお時間を改めて」
「いや、良いよ。何か、お宅が面倒みてくれるんでしょ?昨日、そんな話をして喜んでたよ。学校も、面倒みてくれるんだって?こっちとしては、清々するよ。いっつも、鬱陶しい感じだったんだよねぇ。鹿毛だか何だか知らないけどさ。ド田舎の部族の風習なんて、こっちには迷惑しかないっての」
「……それでは。潤之介くんは、もうそちらへ顔を出さなくとも宜しいと」
「あぁ、良いよ良いよ。もう顔も見たくないって」
「…………分かりました。では、そちらの潤之介くんの身の回りの品。教科書類など、本日承りに伺います」
「あぁ、そうして。マジでもう、金とか一切払わないからねっ」
「構いません。書類上の手続きもございますので、本日改めて伺います」
※ ※ ※
「え?何。冴木って、寺の坊主?」
「そうらしいわね。本当に、何をやらかしたのかしら」
「あぁ、もう良いだろう。もう私たちとアレとは、書類の上でも無関係になったんだ」
「本当に、貴方のお兄さん。面倒事を振ってくれたわよね」
「仕方がないだろう。私だって、急にアレを押し付けられて困ったんだ」
「そうは言っても。結局面倒を見るのって、私に丸投げだったじゃないの」
「私は働いているのだぞ。家の事は、妻であるお前がやるべきだろう。アレの事だって。兄さんから養育費として金がもらえるからって、お前だって喜んでいただろう」
「あぁ、それもそうね。あら、どうしようかしら。もうあのお金、もらえないのよね」
「まぁ、そうだろうな」
「え。それじゃあ、俺の小遣いは?」
「嘘を言って、まだ養育している事に出来ないかしら」
「それもそうだな。どうせ、会いに来ないんだから。分からないだろう」
※ ※ ※
「ちょっと、貴方。まだあのお金、入らないの?」
「それがだな。私も連絡を取っているのだが、一向に兄さんと話が出来ないんだ」
「どうするのよ、貴方。今まであのお金でやりくりしてたのよ?このバッグのお金だって、まだ支払いが残ってるのに」
「何だ、お前。また鞄を買っていたのか。私も、新しいゴルフクラブが欲しかったのに」
「こんな事なら、あの指輪を買っておくんだったわ」
「私もだ。来月は部長を旅行に連れていく事になっているのに」
「ねぇ、俺の小遣いはぁ?」
「「煩いっ」」
0
お気に入りに追加
5
あなたにおすすめの小説
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
鬼上司と秘密の同居
なの
BL
恋人に裏切られ弱っていた会社員の小沢 海斗(おざわ かいと)25歳
幼馴染の悠人に助けられ馴染みのBARへ…
そのまま酔い潰れて目が覚めたら鬼上司と呼ばれている浅井 透(あさい とおる)32歳の部屋にいた…
いったい?…どうして?…こうなった?
「お前は俺のそばに居ろ。黙って愛されてればいい」
スパダリ、イケメン鬼上司×裏切られた傷心海斗は幸せを掴むことができるのか…
性描写には※を付けております。
真面目系委員長の同室は王道転校生⁉~王道受けの横で適度に巻き込まれて行きます~
シキ
BL
全寮制学園モノBL。
倉科誠は真面目で平凡な目立たない学級委員長だった。そう、だった。季節外れの王道転入生が来るまでは……。
倉科の通う私立藤咲学園は山奥に位置する全寮制男子高校だ。外界と隔絶されたそこでは美形生徒が信奉され、親衛隊が作られ、生徒会には俺様会長やクール系副会長が在籍する王道学園と呼ぶに相応しいであろう場所。そんな学園に一人の転入生がやってくる。破天荒な美少年の彼を中心に巻き起こる騒動に同室・同クラスな委員長も巻き込まれていき……?
真面目で平凡()な学級委員長が王道転入生くんに巻き込まれ何だかんだ総受けする青春系ラブストーリー。
一部固定CP(副会長×王道転入生)もいつつ、基本は主人公総受けです。
こちらは個人サイトで数年前に連載していて、途中だったお話です。
今度こそ完走させてあげたいと思いたってこちらで加筆修正して再連載させていただいています。
当時の企画で書いた番外編なども掲載させていただきますが、生暖かく見守ってください。
十七歳の心模様
須藤慎弥
BL
好きだからこそ、恋人の邪魔はしたくない…
ほんわか読者モデル×影の薄い平凡くん
柊一とは不釣り合いだと自覚しながらも、
葵は初めての恋に溺れていた。
付き合って一年が経ったある日、柊一が告白されている現場を目撃してしまう。
告白を断られてしまった女の子は泣き崩れ、
その瞬間…葵の胸に卑屈な思いが広がった。
※fujossy様にて行われた「梅雨のBLコンテスト」出品作です。
いっぱい命じて〜無自覚SubはヤンキーDomに甘えたい〜
きよひ
BL
無愛想な高一Domヤンキー×Subの自覚がない高三サッカー部員
Normalの諏訪大輝は近頃、謎の体調不良に悩まされていた。
そんな折に出会った金髪の一年生、甘井呂翔。
初めて会った瞬間から甘井呂に惹かれるものがあった諏訪は、Domである彼がPlayする様子を覗き見てしまう。
甘井呂に優しく支配されるSubに自分を重ねて胸を熱くしたことに戸惑う諏訪だが……。
第二性に振り回されながらも、互いだけを求め合うようになる青春の物語。
※現代ベースのDom/Subユニバースの世界観(独自解釈・オリジナル要素あり)
※不良の喧嘩描写、イジメ描写有り
初日は5話更新、翌日からは2話ずつ更新の予定です。
社畜だけど異世界では推し騎士の伴侶になってます⁈
めがねあざらし
BL
気がつくと、そこはゲーム『クレセント・ナイツ』の世界だった。
しかも俺は、推しキャラ・レイ=エヴァンスの“伴侶”になっていて……⁈
記憶喪失の俺に課されたのは、彼と共に“世界を救う鍵”として戦う使命。
しかし、レイとの誓いに隠された真実や、迫りくる敵の陰謀が俺たちを追い詰める――。
異世界で見つけた愛〜推し騎士との奇跡の絆!
推しとの距離が近すぎる、命懸けの異世界ラブファンタジー、ここに開幕!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる