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第一章──百足(ムカデ)──
じゅう
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※ ※ ※
回想終了。
そして、今。ぼくは見知らぬベッドの上。
見回しても、本当に知らない場所。しかも、妙に豪華。ぼくに与えられた、四畳半の和室とは。雲泥の差、だ。
まぁ、豪華といっても。キンキラキン、とかではなく。高そうな。高品質そうな、って感じで。
目が覚めたぼくは。情けない事に、それ以上行動を起こせないでいる。
女の子じゃないんだから。ぼくの服装が、真っ白なスベスベのパジャマになっていても。何だか、髪の毛が物凄く良い匂いする事に気付いていても。このドキドキは。それと違うだろう。そうぼくの中の、冷静なぼくが頷いている。
だから。コンコン、と。静かに扉を叩かれた今。工事現場のように。ぼくの心臓は、物凄いビートを刻んでいた。
「気が付いたんだな、潤之介。マジでもう、全っ然起きねぇからよぉ。校舎閉まっちまうし。そのままにしておけねぇし。しゃあねぇから、お持ち帰りしちまった。いや、マジでおれ。初体験だわ~。すっげぇのな、アレ。気持ち良かったぁ~。……あ、潤之介も、スッキリしただろ?」
入ってきたのは、冴木で。知っている人物だからと、心臓が元通りの動きに戻ろうとしたけど。
何だか一方的に告げられた。
所々──というか。色々と聞きたい事はたくさんあるのだけど。
「どういう事っ?!」
ガバッと。勢い良く、冴木に向かって動き出そうとして。ぼくは──落ちた。
物理的に。
※ ※ ※
「ったく~。安静にしとけって」
「そんな……事、言われても」
笑う冴木に支えられ、子供のように寝かせられる。しかも、背中に大きなモコモコのクッションをあてられ。今は、半身起こした状態で固定された。
ベッドから落ちたぼく。身体に力が入らなくて。支えにした筈の右手が、ポキッと。自分の体重を支えられず、体勢を崩したぼく。
コメディかと疑うような。顔面からベッド下に、ゴン。打ち付けたのはおでこだったけど。本当に、怖かった。鼻血出なくて、本当に良かった。
豪華な部屋は、床まで豪華で。ふわふわな、毛足の長い絨毯──カーペット?が敷いてあった。
「とりあえず。今は、体力を取り戻さねぇと。これ食え」
「うぐっ……んぐ、んぐ、んぐ……ごくん。冴木。ぼくは、説明を求める」
強引に口に突っ込まれた桃を。
無茶苦茶柔らかくて、甘くて。スッゴク美味しかったけども。ちゃんと味わいつつ、咀嚼して。
ぼくは冴木に、改めて問い掛けた。
そのぼくの視線の先に。美味しそうな、湯気をあげるスープとか。見た事もない、丸々と大きな塊のお肉とか。艶々の、輝いているかのような林檎や葡萄とか。今、冴木の持っている。さっきぼくの口に入ってきた、ジューシーな桃とか。
決して、視線を釘付けになってはいけないのだ。
回想終了。
そして、今。ぼくは見知らぬベッドの上。
見回しても、本当に知らない場所。しかも、妙に豪華。ぼくに与えられた、四畳半の和室とは。雲泥の差、だ。
まぁ、豪華といっても。キンキラキン、とかではなく。高そうな。高品質そうな、って感じで。
目が覚めたぼくは。情けない事に、それ以上行動を起こせないでいる。
女の子じゃないんだから。ぼくの服装が、真っ白なスベスベのパジャマになっていても。何だか、髪の毛が物凄く良い匂いする事に気付いていても。このドキドキは。それと違うだろう。そうぼくの中の、冷静なぼくが頷いている。
だから。コンコン、と。静かに扉を叩かれた今。工事現場のように。ぼくの心臓は、物凄いビートを刻んでいた。
「気が付いたんだな、潤之介。マジでもう、全っ然起きねぇからよぉ。校舎閉まっちまうし。そのままにしておけねぇし。しゃあねぇから、お持ち帰りしちまった。いや、マジでおれ。初体験だわ~。すっげぇのな、アレ。気持ち良かったぁ~。……あ、潤之介も、スッキリしただろ?」
入ってきたのは、冴木で。知っている人物だからと、心臓が元通りの動きに戻ろうとしたけど。
何だか一方的に告げられた。
所々──というか。色々と聞きたい事はたくさんあるのだけど。
「どういう事っ?!」
ガバッと。勢い良く、冴木に向かって動き出そうとして。ぼくは──落ちた。
物理的に。
※ ※ ※
「ったく~。安静にしとけって」
「そんな……事、言われても」
笑う冴木に支えられ、子供のように寝かせられる。しかも、背中に大きなモコモコのクッションをあてられ。今は、半身起こした状態で固定された。
ベッドから落ちたぼく。身体に力が入らなくて。支えにした筈の右手が、ポキッと。自分の体重を支えられず、体勢を崩したぼく。
コメディかと疑うような。顔面からベッド下に、ゴン。打ち付けたのはおでこだったけど。本当に、怖かった。鼻血出なくて、本当に良かった。
豪華な部屋は、床まで豪華で。ふわふわな、毛足の長い絨毯──カーペット?が敷いてあった。
「とりあえず。今は、体力を取り戻さねぇと。これ食え」
「うぐっ……んぐ、んぐ、んぐ……ごくん。冴木。ぼくは、説明を求める」
強引に口に突っ込まれた桃を。
無茶苦茶柔らかくて、甘くて。スッゴク美味しかったけども。ちゃんと味わいつつ、咀嚼して。
ぼくは冴木に、改めて問い掛けた。
そのぼくの視線の先に。美味しそうな、湯気をあげるスープとか。見た事もない、丸々と大きな塊のお肉とか。艶々の、輝いているかのような林檎や葡萄とか。今、冴木の持っている。さっきぼくの口に入ってきた、ジューシーな桃とか。
決して、視線を釘付けになってはいけないのだ。
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