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第7話 カワイイ子はお持ち帰りするのです!

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 彼女の本当の名前はサワラー。

 モノホンのクリスヒロインと同じ孤児院にいたモブキャラでゲームには登場していません。しかも彼女はどうやら私と同じ乙女ゲームを知る転生者。

 一緒の孤児院だったのをいいことにヒロインの持つ剣の紋章の指輪を盗んで、クリスに成り済ましてエストック家に取り入ったらしいのです。

 それでは本物のクリスヒロインはどこへ行ったか?
 賢明な読者諸氏はもうお分かりでしょう。

 ヒロインは薄いピンクの髪にライトブルーの瞳なのです。

 私の愛すべき侍女に顔を向ければ薄い桜色の髪、澄んだ水色の瞳が目に入る。


 そう、この専属侍女ショーテル実は……本物のクリス・エストック乙女ゲームのヒロインなのです。


 どうして正ヒロインが私の専属侍女になっているかと言いますと――


 私が前世の記憶を取り戻す前のまだ幼き日の話。
 母と一緒に孤児院へ慰問に行った時のことです。



「ううっ、おかあさん……くすん……」


 孤児達と取っ組み合いの遊びをしていたら、隅で1人うずくまっている少女を見つけました。


「どうしたの? 何を泣いてるの?」


 私が声をかけると少女はビクッと肩を震わせると恐る恐る顔を上げました。


「おかあさんの……指輪が……」


 それは、はらはらと涙を流す美少女……


「なにこの可愛い生き物!?」
「は、はい?」
「あなた名前は?」
「えっ、あっ、ク、クリスです」
「クリス捕獲しました」
「えっ、えっ、どうして抱きついてくるんです?」


 私の暴走に悲しみどころではなくなって彼女の涙も引っ込んだようです。

 彼女を愛でながら事情を聞けば、大事にしていた母の形見の指輪が見つからないと嘆いていたらしい。

「もう私……生きていけない」

 母の形見があれば慰められ、勇気づけられ、どんなにつらく厳しい事でも耐えられた。
 それを失ったクリスの悲しみは計り知れない。


「大丈夫よ!」
「どうして?」
「つらい事も悲しい事も何もなければ問題なし!」
「そんなの無理よ」
「私に任せなさい!」


 私は自信満々に戸惑う美少女の手を引いてお母様のところまで(無理矢理)連行しました。


「お母様、そこで捕まえてきました!」
「レイピアも好きねぇ」
「お母様の娘ですから」


 お母様は迫力のある美人ですが、実は意外と少女趣味なのです。

 お母様に似た私は美人で優秀なのに「もっと可愛い娘が良かったわ」と嘆くようなお方ですから。

 そして私も実は……可愛いものが大好きです!


「見てください」
「ふむ、なかなか可愛いわね……ならばよし!」


 は~い、お母様の許可ならばよしを頂きました。
 これで恐妻家のお父様は何も言えません。


「これですべて問題なしよ」
「えっ、えっ、えっ?」


 強引な私の行動にクリスは目をパチクリーーカワイすぎでしょ!!


「この私がクリスの前に立ちはだかるものすべてを粉砕してあげるわ」
「えぇぇぇ~!?」


 絶対守ってあげるからね!
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