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番外編①『赤き魔女のフレチェリカ』
7. 黒の凱旋
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ユーヤのお陰で私達の戦局は一気に好転し、遂にスターデンメイアを奪還する事に成功した。
国内には『魔族』による爪痕が多数残されていて、まだまだ情勢は予断を許さないけれど、これで人類側も一息つけると言ったところでしょう。奪還したスターデンメイアの王都は破壊されていて、すぐに復興は無理だったけれど、きっと昔の様に活気のある街に戻ると私は信じている。
兵達も自分達の戦いが王都奪還という結果に結びつき、廃墟同然の王都でありながら、街の各地で明るい笑い声が聞こえてきた。
「アシュレイン王国から凱旋の帰還要請がきたんだって?」
「ああ、そうなんだが……」
アシュレイン王家は不祥事続きの上に王太子妃の件もあって、国内外でその信用を失っている。スターデンメイアを奪還した象徴としてユーヤに凱旋して欲しいのだと容易に想像できるわ。
ユーヤもそれは分かっていて、奴らにいいように扱われるのは癪なよう。
その気持ちは分からないでもないわね。だけど今のスターデンメイアは『魔王』を倒しに魔族領へ攻め込む余力がない。恐らく暫くは国の立て直しが優先されると思う。
だから……
「次は『魔王』との決戦だからな。英気を養っておくのも必要だろう」
「そうそう。戦い続きだったんだし、美味しいものでも食べて体を休めてきなさい」
ユーヤもずっと戦い詰めだったし、少しは休んでもいいと思うのよね。それに、凱旋して民意を味方に付けておけば王家や貴族もユーヤに迂闊なことはできないと思うの。
「『魔王』を倒せばアシュレイン王家にとってユーヤは邪魔な存在になるからな」
「ええ、ここで王都の民を味方にしておいた方が後々の為よ」
アシュレインの奴らは絶対にユーヤを亡き者にしようとするでしょう。だけど、そんな真似はさせないし、もしそんな状況になっても私がユーヤを必ず守る。
そう思ってユーヤをアシュレイン王国に送り出したのだけれど、この後で私はユーヤを行かせるべきではなかったと酷く後悔することになる。
ユーヤがアシュレイン王国へ凱旋した後、私とゴーガンはスターデンメイア国内を安定させる為に尽力した。主に『魔族』の残党やまだまだ多数出現する『魔獣』を討伐しに東奔西走する毎日だ。
そうやって1ヶ月が経ち、2ヶ月が経ち……
「どうしてユーヤは帰ってこないの!?」
「いや、どーしてって俺に聞かれてもな……」
幾ら待ってもユーヤは帰ってこなかった。
「ゴーガンはユーヤが心配じゃないの?」
「心配は心配だが……今の俺達には何もできんだろ」
うーっと睨み付けてやったけど、確かにゴーガンの言う通りなのよね。スターデンメイアはまだ国内に多数の『魔族』や『魔獣』が徘徊しているわ。主力である私達が抜けるなんてできない。
「スターデンメイアの首脳陣もアシュレインに問い合わせ中らしい。今は耐えろ」
「う、うん……」
納得はできない。でも今は目の前の問題に対処するので精一杯。
「さっさと国内の『魔族』どもを駆逐しちまおう」
「ゴーガン?」
「そうすりゃユーヤを迎えに行く余裕も生まれるだろ?」
私はあっと声を上げた。
「そんときゃ俺も付き合ってやる」
「ありがとうゴーガン!」
よーし!
全ての懸念を処理して、アシュレイン王国までユーヤを迎えに行くわよ!
国内には『魔族』による爪痕が多数残されていて、まだまだ情勢は予断を許さないけれど、これで人類側も一息つけると言ったところでしょう。奪還したスターデンメイアの王都は破壊されていて、すぐに復興は無理だったけれど、きっと昔の様に活気のある街に戻ると私は信じている。
兵達も自分達の戦いが王都奪還という結果に結びつき、廃墟同然の王都でありながら、街の各地で明るい笑い声が聞こえてきた。
「アシュレイン王国から凱旋の帰還要請がきたんだって?」
「ああ、そうなんだが……」
アシュレイン王家は不祥事続きの上に王太子妃の件もあって、国内外でその信用を失っている。スターデンメイアを奪還した象徴としてユーヤに凱旋して欲しいのだと容易に想像できるわ。
ユーヤもそれは分かっていて、奴らにいいように扱われるのは癪なよう。
その気持ちは分からないでもないわね。だけど今のスターデンメイアは『魔王』を倒しに魔族領へ攻め込む余力がない。恐らく暫くは国の立て直しが優先されると思う。
だから……
「次は『魔王』との決戦だからな。英気を養っておくのも必要だろう」
「そうそう。戦い続きだったんだし、美味しいものでも食べて体を休めてきなさい」
ユーヤもずっと戦い詰めだったし、少しは休んでもいいと思うのよね。それに、凱旋して民意を味方に付けておけば王家や貴族もユーヤに迂闊なことはできないと思うの。
「『魔王』を倒せばアシュレイン王家にとってユーヤは邪魔な存在になるからな」
「ええ、ここで王都の民を味方にしておいた方が後々の為よ」
アシュレインの奴らは絶対にユーヤを亡き者にしようとするでしょう。だけど、そんな真似はさせないし、もしそんな状況になっても私がユーヤを必ず守る。
そう思ってユーヤをアシュレイン王国に送り出したのだけれど、この後で私はユーヤを行かせるべきではなかったと酷く後悔することになる。
ユーヤがアシュレイン王国へ凱旋した後、私とゴーガンはスターデンメイア国内を安定させる為に尽力した。主に『魔族』の残党やまだまだ多数出現する『魔獣』を討伐しに東奔西走する毎日だ。
そうやって1ヶ月が経ち、2ヶ月が経ち……
「どうしてユーヤは帰ってこないの!?」
「いや、どーしてって俺に聞かれてもな……」
幾ら待ってもユーヤは帰ってこなかった。
「ゴーガンはユーヤが心配じゃないの?」
「心配は心配だが……今の俺達には何もできんだろ」
うーっと睨み付けてやったけど、確かにゴーガンの言う通りなのよね。スターデンメイアはまだ国内に多数の『魔族』や『魔獣』が徘徊しているわ。主力である私達が抜けるなんてできない。
「スターデンメイアの首脳陣もアシュレインに問い合わせ中らしい。今は耐えろ」
「う、うん……」
納得はできない。でも今は目の前の問題に対処するので精一杯。
「さっさと国内の『魔族』どもを駆逐しちまおう」
「ゴーガン?」
「そうすりゃユーヤを迎えに行く余裕も生まれるだろ?」
私はあっと声を上げた。
「そんときゃ俺も付き合ってやる」
「ありがとうゴーガン!」
よーし!
全ての懸念を処理して、アシュレイン王国までユーヤを迎えに行くわよ!
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