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第13章 そのラブコメ、本当に必要ですか?
第139話 努力と才能
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敗北した緑髪の少女が退場していく。
「来年、きっと彼女はもっと強くなっているよ」
その少女の背中を見送りながらエーリックは呟いた。
「ええ、私もそう思います」
主人に倣って少女を拍手で讃えていたスレインも同意する。
「殿下は、敗北が成長するための糧になると?」
「そうあって欲しいって僕が信じているだけなんだけどね」
寂しく笑うエーリックにセルランは天才の婚約者を持つ者の苦悩を察した。
「判官贔屓と言われるかもだけど、彼女には勝って欲しかったなぁ」
先程の試合にエーリックは自分の姿を重ねているのだ。積み重ねた努力が才能の前にあっさり敗れてもなお、歯を食いしばって最後まで立ち続けた彼女の姿に。
「悔しいですか?」
セルランにはエーリックが危うく感じられた。
「努力が才能に屈するのは?」
人は弱く、どんなに努力をしても才能に勝てないと諦めてしまうものだから。
「確かに自分の努力が成果に現れないのは苦しいし、頑張っているのに認められないのは悔しいものだよね」
「そう……ですね」
セルランも王妃に認められた人間である。能力には自信があったが、自分より才ある者達に太刀打ちできず辛酸を舐めた時期があった。
(俺は小才に溺れ努力を怠った身だ。だから、逆に立ち直れ王妃殿下に登用されたわけだが……)
エーリックは頑張り屋である。それを側近としてセルランは間近で見てきたのだ。
(殿下の悔しさは俺の比じゃないよなぁ)
エーリックは一所懸命に剣の鍛錬を積んできた。それなのに、昨日は剣闘の部で自分より体格に恵まれた者に敗れてしまったばかりだ。
「だけど勘違いしてはいけないよ」
だが、エーリックはセルランに心配されるほど弱い少年ではなかった。
「失敗や負けを才能のせいにして逃げたい気持ちは僕にも痛いほど分かるけど……」
僕も何度も苦しんだからね、とエーリックは自嘲気味に笑う。
「でもね、勝ったルーナミリア嬢だって努力をしているだろ?」
「殿下!?」
セルランは頭を金槌で殴られたような衝撃を受けた。
「彼女だって頑張っているのに、それを才能という言葉で片付けてはいけないと思うんだ」
「殿下の仰る通りにございます」
いつになくセルランはうやうやしく頭を下げた。いや、自然に下がったのだ。
「さすがエル様です。このスレイン、感服いたしました」
「別に褒められるような事ではないよ?」
「いやいや、エル様のお歳でそこまで他者を慮れるのは日々の研鑽の賜物。このスレイン、エル様が今まで積み重ねたものの重みを感じます」
何をやっても手放しに褒めちぎる乳兄弟にエーリックは苦笑いしていた。
(スレインと同意見なんはちょい癪だが、エーリック殿下は真っ直ぐ成長されてる)
だが、セルランもこれにはスレインに同意するのだった。
「来年、きっと彼女はもっと強くなっているよ」
その少女の背中を見送りながらエーリックは呟いた。
「ええ、私もそう思います」
主人に倣って少女を拍手で讃えていたスレインも同意する。
「殿下は、敗北が成長するための糧になると?」
「そうあって欲しいって僕が信じているだけなんだけどね」
寂しく笑うエーリックにセルランは天才の婚約者を持つ者の苦悩を察した。
「判官贔屓と言われるかもだけど、彼女には勝って欲しかったなぁ」
先程の試合にエーリックは自分の姿を重ねているのだ。積み重ねた努力が才能の前にあっさり敗れてもなお、歯を食いしばって最後まで立ち続けた彼女の姿に。
「悔しいですか?」
セルランにはエーリックが危うく感じられた。
「努力が才能に屈するのは?」
人は弱く、どんなに努力をしても才能に勝てないと諦めてしまうものだから。
「確かに自分の努力が成果に現れないのは苦しいし、頑張っているのに認められないのは悔しいものだよね」
「そう……ですね」
セルランも王妃に認められた人間である。能力には自信があったが、自分より才ある者達に太刀打ちできず辛酸を舐めた時期があった。
(俺は小才に溺れ努力を怠った身だ。だから、逆に立ち直れ王妃殿下に登用されたわけだが……)
エーリックは頑張り屋である。それを側近としてセルランは間近で見てきたのだ。
(殿下の悔しさは俺の比じゃないよなぁ)
エーリックは一所懸命に剣の鍛錬を積んできた。それなのに、昨日は剣闘の部で自分より体格に恵まれた者に敗れてしまったばかりだ。
「だけど勘違いしてはいけないよ」
だが、エーリックはセルランに心配されるほど弱い少年ではなかった。
「失敗や負けを才能のせいにして逃げたい気持ちは僕にも痛いほど分かるけど……」
僕も何度も苦しんだからね、とエーリックは自嘲気味に笑う。
「でもね、勝ったルーナミリア嬢だって努力をしているだろ?」
「殿下!?」
セルランは頭を金槌で殴られたような衝撃を受けた。
「彼女だって頑張っているのに、それを才能という言葉で片付けてはいけないと思うんだ」
「殿下の仰る通りにございます」
いつになくセルランはうやうやしく頭を下げた。いや、自然に下がったのだ。
「さすがエル様です。このスレイン、感服いたしました」
「別に褒められるような事ではないよ?」
「いやいや、エル様のお歳でそこまで他者を慮れるのは日々の研鑽の賜物。このスレイン、エル様が今まで積み重ねたものの重みを感じます」
何をやっても手放しに褒めちぎる乳兄弟にエーリックは苦笑いしていた。
(スレインと同意見なんはちょい癪だが、エーリック殿下は真っ直ぐ成長されてる)
だが、セルランもこれにはスレインに同意するのだった。
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