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第11章 そのお祭り、本当に必要ですか?

第121話 負けるは恥だが上塗りは役に立たない

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『問題はルールではない、我ら騎士の矜持きょうじだッ!』

 クラインの呆れる主張は延々と続く。

 途中からウェルシェもレーキも聞くのが馬鹿らしくなってきた。

 その主張を要約すると――双剣は騎士の戦い方として認められない。よって、今の判定は無効だ。ラースと剣一本で再戦させろ、と言うものであった。


「……クライン様はアホゥなの?」
「完全に恥の上塗りですね」

 開いた口が塞がらないとは正にこの事。

「ラースは昨年の敗北をバネに研鑽けんさんを積み、ついには独自の双剣に辿たどり着いたのです」
「その努力をたたえずおとしめる事こそ騎士の矜持にあるまじき行為なのに……クライン様には理解できていないのね」

 クラインの愚行に二人とも呆れ顔だ。

「だいたい双剣が認められない邪道だったとしても、異議申し立ては試合が始まる前にしなさいよね」
「仰る通りです。負けてから何を言っても敗者の戯言たわごとです」
「その戯言も実戦においては負けて骸躯むくろとなれば言えないのにね」

 ウェルシェは合理主義者である。勝てば実力、負ければ相手のせいにするクラインの性根とは相容れない。

「試合なんて百戦百勝したって実戦で一回負ければ実質実績はゼロなのよ」

 逆もまた真。

 試合で何度負けようと実戦で一回勝てば全てチャラになってしまう。

 ここでの勝敗にこだわる必要はない。実戦で勝てる実力をつければいいだけなのだ。それがクラインにはまるで分かってない。

 当然だがクラインの主張が認められるはずもなく、教師陣がやって来て彼を闘技場から追い出した。

 その時に至っても「不当判定だ!」「俺は殿下の側近だぞ!」と教師達に両脇を拘束されながらクラインがわめき散らしていたが……

「頭を抱えたくなるような結末ね」
「己の見苦しさとは意外と自覚できないものなのですね」

 自分も気をつけますと口にしたレーキであったが、クラインを反面教師にできるなら道を踏み外す事もないだろうとウェルシェは思う。

「オーウェン殿下はクライン様達には成績では測れない素晴らしい才能があると仰ったようだけど……」

 実力も人格も見るべきものは無い。

「危うく国王、王妃両陛下にお見苦しいものをお見せするところだったわ」
「まったくです」

 本戦には国王と王妃が観戦しに来る予定となっている。

「こんな場面を目撃されたら、伝統ある剣武魔闘祭の品位を疑われてしまうわよね」

 それに、クラインの愚かな行為を見咎められればオーウェンの王位継承権剥奪に拍車がかかっていたかもしれない。

(これが予選でホント良かったわ)

 心底、ひやっとしたウェルシェであった……
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