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第11章 そのお祭り、本当に必要ですか?

第120話 どうやら予選落ちのようです

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「クラインがんばって~!」

 ふと聞き覚えのある声が貴賓席にまで届いてきた。

「そんなモブ、軽くぶっ飛ばしちゃえ!」

 観客席の最前列でひときわ目立つピンク頭が、ひときわ甲高い声で品の無い声援を送っている。

「あの方も相変わらずのようね」
「そのようです――が、お陰で退屈な試合も終わりそうです」

 アイリスの声援にクラインが笑って大剣を天へと突き上げ、上段の構えのままラーズへと突進したのだ。

「あのバカ、あんな大技キマるわけないでしょうに」
「アイリス嬢に良いところを見せたかったのでしょうが……処置なしですね」

 ゴウゥッと轟音と共に振り下ろされた大剣は暴風をまとい、その斬撃は見る者に戦慄を与えるほど大迫力だ。

 決まれば間違いなく勝利するだろう必殺の一撃――当たればの話であるが。

 ラースは迫り来る大剣を右の剣で受けたかと思うと僅かに角度をつけて力を逸らした。

「どわッ!?」

 等身大の大剣はラースの剣身を滑って横斜めへと流れていき、クラインは渾身の力を込めた斬撃の勢いを殺せず大きく体勢を崩して前のめりに膝をついた。

「こ、このッ――くッ!」

 慌てて起きあがろうとしたが、既にクラインの喉元にはラースの左の剣の切先が突きつけられていた。

 勝敗は決した。

「勝負あり!」

 主審が右手を挙げる。

「勝者ラース・ラーズ!」

 そして、ラースの勝利を宣言し、挙上した右手をラースへ向けて下す。

 わあぁぁぁ!!!

 その瞬間、大気を震わせるような歓声が湧き上がった。

「まあ、順当な結果ね――ん?」

 闘技場の中央でクラインが何やら騒いでいるのがウェルシェの目に留まった。

「何かあったのでしょうか?」

 何やらクラインが主審と揉めている。

「さあ……トラブルかしら?」
「クラインが怒鳴り散らしているようですが……」

 だが、歓声に掻き消されて貴賓席まで声が届いてこない。

 怒り狂うクラインと困惑する主審の様子が気になり、ウェルシェは呪文を詠唱し始めた。

「収音の魔術ですか」

 レーキはすぐにウェルシェが何をしようとしているか察した。

『……だから何度も言っているだろ!』

 魔術が発動しクラインの怒声が貴賓席の中へと届く。

「お見事です」

 レーキはウェルシェの魔術の腕に賛辞を贈った。貴賓室に届く鮮明な声質から、ウェルシェの魔術精度の高さが窺える。

『奴の騎士にあるまじき振る舞いを黙認するのか!』
『そう申されてもラース・ラーズ殿には何の不正も過失もございません』
『双剣など騎士として恥ずべき邪道そのものではないか!』
『いえ、しかし、二本の剣を用いてはならないというルールはないのですが……』
『問題はルールではない、騎士の矜持だッ!』

 ウェルシェの魔術でクラインと主審のやり取りが次々に貴賓席の中へと届いてきた。
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