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第8章 そのザマァ、本当に必要ですか?

第96話 とんでも計画

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「このままでは王家によってセギュル家の権勢を削がれてしまうわ」

 ケイトは悲嘆に暮れた。

 跡取りならともかく、出来の悪い次男ケヴィンが謹慎処分になったくらいで侯爵家が落ちぶれるはずもないのだが。

「私も王妃のお茶会から爪弾きにされそうだし、このままだと旦那様あの人も閑職へ回されるんじゃ?」

 だが、王家がセギュル家の凋落ちょうらくを画策しているのだと勘繰かんぐってしまい、ケイトは悪い方へ悪い方へと思考が向かっていく。

「何とかしないと」

 ブツブツと呟きながらケイトは部屋の中をせわしなく歩き回る。ケイトの険しい形相に、主人がまた癇癪かんしゃくを起こすのではないかと、侍女達はビクビクと祈るように見守るしかない。

「そうよ……そうだわ!」

 突然、パッとケイトは愁眉しゅうびを開いた。

「ケヴィンにグロラッハの小娘と既成事実を作らせれば良いんだわ」

 貴族、それも王族となれば婚前の純潔は必須条件である。だから、既成事実さえ作ってしまえばエーリック殿下とあの娘ウェルシェの婚約は解消せざるを得なくなるだろう。

「そうすればケヴィンは好きな相手と結ばれるし、あの娘もエーリックから解放されて私に感謝する事でしょう」

 ケヴィンとウェルシェが結ばれれば、セギュル侯爵家はグロラッハ侯爵家と強固な関係を結べる。そうなれば王家も迂闊に手が出せなくなるはずだ。

「そうよ、それが良いわ」

 自分の思いつきが最良の方法だとケイトは信じた。もちろんセギュル侯爵がいれば絶対に止めていただろう。

「みんなが幸せになれる良い方法だわ」

 だが、不幸にもここにケイトを止められる者はいなかった。

「恩を仇で返した王妃に目にもの見せてやるんだから!」

 ぐっと拳を握り締めてケイトは復讐に燃える。

 だが、ケイトは気がついていない。怯える侍女達の前で愚かにも自分の計画を暴露している事に。

「ウェルシェもケヴィンの嫁になったらきちんと再教育してあげないとね」

 それでも自分の計画がもう成功したものとしか考えられないケイトの想像は飛躍していったのだった……
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