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第8章 そのザマァ、本当に必要ですか?

第94話 その先は破滅の道

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「すまない……俺のせいでお前達も婚約者を失ってしまった。」

 この騒動でオーウェンの王位継承権だけではなく、側近達も婚約者との婚約が解消されてしまった――とオーウェン達は勘違いしていた。

 実際には、彼らが婚約者をないがしろにしてアイリスをちやほやしていたのが問題となって婚約者の実家から責任を取らされただけである。

「ふっ、あんな分からず屋など婚約解消できて清々しましたよ」
「まったくだ。だいたいアイリスに酷いいじめをしていた連中だ」
「そうさ。ボクらとあいつらのどっちに正義があるかなんて、いつか明るみに出るんだから」

 だが、彼らは自分達の元婚約者達に非があり、自分達は不当に婚約を解消されたのだと信じて疑っていない。

「それに殿下がアイリスを諦める必要はありません」

 ふっと笑いサイモンが眼鏡のブリッジを中指でクイッと持ち上げた。

「イーリヤ嬢の悪事を世に知らしめ、我らの正当性を示せば良いのです」
「ああ、そうすれば殿下が王位継承権を失わずにイケ好かないイーリヤと結婚を回避できるってもんだ」
義姉上あねうえは王妃に、殿下の妃には相応しくないよ」
「お前達……くっ、俺は本当に素晴らしい忠臣に恵まれた」

 自分を支えて背中を押してくれる頼もしい本当に仲間達である。彼らと巡り合わせてくれたアイリスには感謝しかない。

「殿下、今はまだ動く時ではありません」
「だが、必ず悪事はボロが出る」
「その時にボクらで義姉上に正義の鉄槌を下すんです」

 自分達が正義、それ以外は悪……彼らの中ではそうなっていた。

 人とは大なり小なり自分が正しく他者が間違っている、自分が優れていて他者は劣っている、と思う傾向がある。

 だから、ジョウジやレーキの諫言がオーウェンには讒言ざんげんとしか思えず、彼には甘言ばかりのサイモン達が真の理解者だと思い込んでいた。

「みんな、ありがとう……そうだな、きっとイーリヤ達は自分達の非道を後悔するだろう。その時はさすがに母上にもご理解いただけよう」

 この心得違いが近い将来オーウェン達の不幸へと繋がっていく――

「だが、今は俺よりもケヴィンが心配だ」
「そうですね。愛する者と引き裂かれた彼の心中を察するに余りがあります」
「俺達で励ましてやろうぜ」
「じゃあ今からケヴィン先輩のお見舞いへ行こうよ」
「そうだな。俺達だけでもケヴィンとウェルシェの愛を応援してやろう」

 ――だけど、それはまた別のお話……
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