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第6章 その第一王子、本当に必要ですか?

第71話 妖精の皮を破れば魔王

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「殿下はまだお若いのですから無理もありません」

 ジャンヌの指摘するように今回の件は自分自身を大きく見積もり過ぎた若気の至りと言えなくもない。

「そうね、オーウェンはまだ未熟でこれからです。確かに迂闊でしたが廃嫡するほどではありませんでした。だから、あの場で私はあなたを切る選択をするより他になかった」
「……賢明な判断かと」

 このままではオーウェンは暴君になりかねない。だからと言って罪を犯したわけでもないのだから廃嫡はできないし、王位継承を剥奪する理由にも乏しい。

「この程度で殿下から継承権を奪っては、それこそ横暴と言うものです」
「そうね」

 温室の中にある花壇へと顔を向けた。

「あの子もエーリックも、そして学園の子供達にもまだまだ可能性が眠っているのですから」

 彼女の視線の先にあるのは薔薇の蕾。

「はい、それこそ私達が見出せていない才能が眠っているかもしれません」

 頷いたジャンヌも釣られて蕾へ目を向けた。

「オーウェン殿下が見出した人材もまだ若い息吹なのです」
「本当にそうね。もしかしたら化ける子がいるかもしれない」

 オルメリアはくすりと笑った。

「あなたはウェルシェを試したのですね」
「……」

 ジャンヌは答えなかったが、それが肯定の沈黙だとオルメリアは判断した。

 オーウェンは確かにやらかしたが、それは王位継承権を剥奪する程ではない。この段階での直諫など無意味である。それが分からぬジャンヌでもない。

「大した娘ですね……ウェルシェは」
私の息子ジョウジやレーキさんなどオーウェン殿下の不興を買って学園で孤立していた子達をあっという間に掌握してしまったようです」

 ウェルシェがオーウェンの元側近達を使って画策したお茶会での一連の策謀を包み隠さず説明した。

「途中から薄々は気付いていたけれど……末恐ろしい子ね」
「はい、とても15歳の娘とは思えません」
「ですが、ウェルシェの才能を測ろうとあなたも無茶をしましたね」

 下手をすればジャンヌはこの国に居られなくなるところだった。

「何処までが彼女の演技なのかを見極めなければなりませんでしたので」
「おっとりした妖精のような令嬢の擬態は見事よね」

 くつくつとオルメリアが声を出して笑うと、エレオノーラが不思議そうな顔をした。。

「メリー様、ウェルシェは妖精のように可憐な優しい娘ですよ?」
「エレン、あれはそんな可愛げのある娘ではないわ」

 事実、今回のオーウェンの件でウェルシェから多くの要求をされるだろうとオルメリアは覚悟している。

「彼女には夫人達もたばかられてしまいました」
「ふふふ、学園の未熟な子達では彼女の本性は見破れないでしょうね」
「えっ? えっ? えっ?」

 オルメリアとジャンヌの話についていけずエレオノーラは目をぱちくりとさせるものだからオルメリアはいよいよ声を上げて笑った。

「エレン、気をつけておきなさい」

 侍女が新たに用意してくれたお茶でオルメリアは喉を潤すと、ティーカップをソーサーへ戻してくすりと笑った。

「社交界では愛らしい妖精と思って迂闊に近づいたら、とんでもなく恐ろしい魔王だったなんてザラにあるのよ」
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