71 / 171
第6章 その第一王子、本当に必要ですか?
第71話 妖精の皮を破れば魔王
しおりを挟む
「殿下はまだお若いのですから無理もありません」
ジャンヌの指摘するように今回の件は自分自身を大きく見積もり過ぎた若気の至りと言えなくもない。
「そうね、オーウェンはまだ未熟でこれからです。確かに迂闊でしたが廃嫡するほどではありませんでした。だから、あの場で私はあなたを切る選択をするより他になかった」
「……賢明な判断かと」
このままではオーウェンは暴君になりかねない。だからと言って罪を犯したわけでもないのだから廃嫡はできないし、王位継承を剥奪する理由にも乏しい。
「この程度で殿下から継承権を奪っては、それこそ横暴と言うものです」
「そうね」
温室の中にある花壇へと顔を向けた。
「あの子もエーリックも、そして学園の子供達にもまだまだ可能性が眠っているのですから」
彼女の視線の先にあるのは薔薇の蕾。
「はい、それこそ私達が見出せていない才能が眠っているかもしれません」
頷いたジャンヌも釣られて蕾へ目を向けた。
「オーウェン殿下が見出した人材もまだ若い息吹なのです」
「本当にそうね。もしかしたら化ける子がいるかもしれない」
オルメリアはくすりと笑った。
「あなたはウェルシェを試したのですね」
「……」
ジャンヌは答えなかったが、それが肯定の沈黙だとオルメリアは判断した。
オーウェンは確かにやらかしたが、それは王位継承権を剥奪する程ではない。この段階での直諫など無意味である。それが分からぬジャンヌでもない。
「大した娘ですね……ウェルシェは」
「私の息子やレーキさんなどオーウェン殿下の不興を買って学園で孤立していた子達をあっという間に掌握してしまったようです」
ウェルシェがオーウェンの元側近達を使って画策したお茶会での一連の策謀を包み隠さず説明した。
「途中から薄々は気付いていたけれど……末恐ろしい子ね」
「はい、とても15歳の娘とは思えません」
「ですが、ウェルシェの才能を測ろうとあなたも無茶をしましたね」
下手をすればジャンヌはこの国に居られなくなるところだった。
「何処までが彼女の演技なのかを見極めなければなりませんでしたので」
「おっとりした妖精のような令嬢の擬態は見事よね」
くつくつとオルメリアが声を出して笑うと、エレオノーラが不思議そうな顔をした。。
「メリー様、ウェルシェは妖精のように可憐な優しい娘ですよ?」
「エレン、あれはそんな可愛げのある娘ではないわ」
事実、今回のオーウェンの件でウェルシェから多くの要求をされるだろうとオルメリアは覚悟している。
「彼女には夫人達も謀られてしまいました」
「ふふふ、学園の未熟な子達では彼女の本性は見破れないでしょうね」
「えっ? えっ? えっ?」
オルメリアとジャンヌの話についていけずエレオノーラは目をぱちくりとさせるものだからオルメリアはいよいよ声を上げて笑った。
「エレン、気をつけておきなさい」
侍女が新たに用意してくれたお茶でオルメリアは喉を潤すと、ティーカップをソーサーへ戻してくすりと笑った。
「社交界では愛らしい妖精と思って迂闊に近づいたら、とんでもなく恐ろしい魔王だったなんてザラにあるのよ」
ジャンヌの指摘するように今回の件は自分自身を大きく見積もり過ぎた若気の至りと言えなくもない。
「そうね、オーウェンはまだ未熟でこれからです。確かに迂闊でしたが廃嫡するほどではありませんでした。だから、あの場で私はあなたを切る選択をするより他になかった」
「……賢明な判断かと」
このままではオーウェンは暴君になりかねない。だからと言って罪を犯したわけでもないのだから廃嫡はできないし、王位継承を剥奪する理由にも乏しい。
「この程度で殿下から継承権を奪っては、それこそ横暴と言うものです」
「そうね」
温室の中にある花壇へと顔を向けた。
「あの子もエーリックも、そして学園の子供達にもまだまだ可能性が眠っているのですから」
彼女の視線の先にあるのは薔薇の蕾。
「はい、それこそ私達が見出せていない才能が眠っているかもしれません」
頷いたジャンヌも釣られて蕾へ目を向けた。
「オーウェン殿下が見出した人材もまだ若い息吹なのです」
「本当にそうね。もしかしたら化ける子がいるかもしれない」
オルメリアはくすりと笑った。
「あなたはウェルシェを試したのですね」
「……」
ジャンヌは答えなかったが、それが肯定の沈黙だとオルメリアは判断した。
オーウェンは確かにやらかしたが、それは王位継承権を剥奪する程ではない。この段階での直諫など無意味である。それが分からぬジャンヌでもない。
「大した娘ですね……ウェルシェは」
「私の息子やレーキさんなどオーウェン殿下の不興を買って学園で孤立していた子達をあっという間に掌握してしまったようです」
ウェルシェがオーウェンの元側近達を使って画策したお茶会での一連の策謀を包み隠さず説明した。
「途中から薄々は気付いていたけれど……末恐ろしい子ね」
「はい、とても15歳の娘とは思えません」
「ですが、ウェルシェの才能を測ろうとあなたも無茶をしましたね」
下手をすればジャンヌはこの国に居られなくなるところだった。
「何処までが彼女の演技なのかを見極めなければなりませんでしたので」
「おっとりした妖精のような令嬢の擬態は見事よね」
くつくつとオルメリアが声を出して笑うと、エレオノーラが不思議そうな顔をした。。
「メリー様、ウェルシェは妖精のように可憐な優しい娘ですよ?」
「エレン、あれはそんな可愛げのある娘ではないわ」
事実、今回のオーウェンの件でウェルシェから多くの要求をされるだろうとオルメリアは覚悟している。
「彼女には夫人達も謀られてしまいました」
「ふふふ、学園の未熟な子達では彼女の本性は見破れないでしょうね」
「えっ? えっ? えっ?」
オルメリアとジャンヌの話についていけずエレオノーラは目をぱちくりとさせるものだからオルメリアはいよいよ声を上げて笑った。
「エレン、気をつけておきなさい」
侍女が新たに用意してくれたお茶でオルメリアは喉を潤すと、ティーカップをソーサーへ戻してくすりと笑った。
「社交界では愛らしい妖精と思って迂闊に近づいたら、とんでもなく恐ろしい魔王だったなんてザラにあるのよ」
1
お気に入りに追加
698
あなたにおすすめの小説
〖完結〗王女殿下の最愛の人は、私の婚約者のようです。
藍川みいな
恋愛
エリック様とは、五年間婚約をしていた。
学園に入学してから、彼は他の女性に付きっきりで、一緒に過ごす時間が全くなかった。その女性の名は、オリビア様。この国の、王女殿下だ。
入学式の日、目眩を起こして倒れそうになったオリビア様を、エリック様が支えたことが始まりだった。
その日からずっと、エリック様は病弱なオリビア様の側を離れない。まるで恋人同士のような二人を見ながら、学園生活を送っていた。
ある日、オリビア様が私にいじめられていると言い出した。エリック様はそんな話を信じないと、思っていたのだけれど、彼が信じたのはオリビア様だった。
設定ゆるゆるの、架空の世界のお話です。
最凶の悪役令嬢になりますわ 〜処刑される未来を回避するために、敵国に逃げました〜
鬱沢色素
恋愛
伯爵家の令嬢であるエルナは、第一王子のレナルドの婚約者だ。
しかしレナルドはエルナを軽んじ、平民のアイリスと仲睦まじくしていた。
さらにあらぬ疑いをかけられ、エルナは『悪役令嬢』として処刑されてしまう。
だが、エルナが目を覚ますと、レナルドに婚約の一時停止を告げられた翌日に死に戻っていた。
破滅は一年後。
いずれ滅ぶ祖国を見捨て、エルナは敵国の王子殿下の元へ向かうが──
転生した悪役皇女は溺愛される
れみゃあ
恋愛
『薔薇の庭』
それは私がやりこんでいた乙女ゲーム
可憐で強い意志を持つヒロインが攻略対象達と共に悪役であるシャーロット・シンフォニアを撃退し、最後には罪を暴き悪役令嬢に婚約破棄を突きつけヒロインは攻略対象と結ばれる…という典型的な乙女ゲームである。
20代前半だった私は後輩から勧められたこのゲームにどっぷりとハマった。
特に最後、1番好感度の高い攻略対象から告白される王宮の見事な薔薇の庭のシーンが大好きで仕方なかった。
攻略対象は全部で5人
どハマりした私は全てのルートを制覇し満足し眠りについた…はずだった。
「…どうしてこうなったの?」
サラサラの見事な金髪に王族の証である緋色の瞳、絶世の美少女と言っても過言ではない悪役令嬢シャーロット・シンフォニア。
目が覚めたら、悪役皇女シャーロット・シンフォニア(5歳)になっていたのである。
断罪されるはずのわがままな悪役皇女…のはずなのに…
「あれ?私、めちゃくちゃ可愛がられてない?」
これは断罪される悪役皇女に転生した主人公が何故か攻略対象を含める周りに溺愛され戸惑いながらも何とか断罪を回避しようとするお話
悪魔だと呼ばれる強面騎士団長様に勢いで結婚を申し込んでしまった私の結婚生活
束原ミヤコ
恋愛
ラーチェル・クリスタニアは、男運がない。
初恋の幼馴染みは、もう一人の幼馴染みと結婚をしてしまい、傷心のまま婚約をした相手は、結婚間近に浮気が発覚して破談になってしまった。
ある日の舞踏会で、ラーチェルは幼馴染みのナターシャに小馬鹿にされて、酒を飲み、ふらついてぶつかった相手に、勢いで結婚を申し込んだ。
それは悪魔の騎士団長と呼ばれる、オルフェレウス・レノクスだった。
毒花令嬢の逆襲 ~良い子のふりはもうやめました~
りーさん
恋愛
マリエンヌは淑女の鑑と呼ばれるほどの、完璧な令嬢である。
王子の婚約者である彼女は、賢く、美しく、それでいて慈悲深かった。
そんな彼女に、周りは甘い考えを抱いていた。
「マリエンヌさまはお優しいから」
マリエンヌに悪意を向ける者も、好意を向ける者も、皆が同じことを言う。
「わたくしがおとなしくしていれば、ずいぶんと調子に乗ってくれるじゃない……」
彼らは、思い違いをしていた。
決して、マリエンヌは慈悲深くなどなかったということに気づいたころには、すでに手遅れとなっていた。
「わかれよう」そうおっしゃったのはあなたの方だったのに。
友坂 悠
恋愛
侯爵夫人のマリエルは、夫のジュリウスから一年後の離縁を提案される。
あと一年白い結婚を続ければ、世間体を気にせず離婚できるから、と。
ジュリウスにとっては亡き父が進めた政略結婚、侯爵位を継いだ今、それを解消したいと思っていたのだった。
「君にだってきっと本当に好きな人が現れるさ。私は元々こうした政略婚は嫌いだったんだ。父に逆らうことができず君を娶ってしまったことは本当に後悔している。だからさ、一年後には離婚をして、第二の人生をちゃんと歩んでいくべきだと思うんだよ。お互いにね」
「わかりました……」
「私は君を解放してあげたいんだ。君が幸せになるために」
そうおっしゃるジュリウスに、逆らうこともできず受け入れるマリエルだったけれど……。
勘違い、すれ違いな夫婦の恋。
前半はヒロイン、中盤はヒーロー視点でお贈りします。
四万字ほどの中編。お楽しみいただけたらうれしいです。
愛されない花嫁は初夜を一人で過ごす
リオール
恋愛
「俺はお前を妻と思わないし愛する事もない」
夫となったバジルはそう言って部屋を出て行った。妻となったアルビナは、初夜を一人で過ごすこととなる。
後に夫から聞かされた衝撃の事実。
アルビナは夫への復讐に、静かに心を燃やすのだった。
※シリアスです。
※ざまあが行き過ぎ・過剰だといったご意見を頂戴しております。年齢制限は設定しておりませんが、お読みになる場合は自己責任でお願い致します。
ふざけんな!と最後まで読まずに投げ捨てた小説の世界に転生してしまった〜旦那様、あなたは私の夫ではありません
詩海猫
ファンタジー
こちらはリハビリ兼ねた思いつき短編の予定&完結まで書いてから投稿予定でしたがコ⚪︎ナで書ききれませんでした。
苦手なのですが出来るだけ端折って(?)早々に決着というか完結の予定です。
ヒロ回だけだと煮詰まってしまう事もあるので、気軽に突っ込みつつ楽しんでいただけたら嬉しいですm(_ _)m
*・゜゚・*:.。..。.:*・*:.。. .。.:*・゜゚・*
顔をあげると、目の前にラピスラズリの髪の色と瞳をした白人男性がいた。
周囲を見まわせばここは教会のようで、大勢の人間がこちらに注目している。
見たくなかったけど自分の手にはブーケがあるし、着ているものはウエディングドレスっぽい。
脳内??が多過ぎて固まって動かない私に美形が語りかける。
「マリーローズ?」
そう呼ばれた途端、一気に脳内に情報が拡散した。
目の前の男は王女の護衛騎士、基本既婚者でまとめられている護衛騎士に、なぜ彼が入っていたかと言うと以前王女が誘拐された時、救出したのが彼だったから。
だが、外国の王族との縁談の話が上がった時に独身のしかも若い騎士がついているのはまずいと言う話になり、王命で婚約者となったのが伯爵家のマリーローズである___思い出した。
日本で私は社畜だった。
暗黒な日々の中、私の唯一の楽しみだったのは、ロマンス小説。
あらかた読み尽くしたところで、友達から勧められたのがこの『ロゼの幸福』。
「ふざけんな___!!!」
と最後まで読むことなく投げ出した、私が前世の人生最後に読んだ小説の中に、私は転生してしまった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる