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第11話 紡ぐ物語④「白鳥と黒鳥の物語」

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「どうして佐倉さんが?」

 どう見ても彼だけど、服装は『黒鳥の湖』のイラストにあるジークのもの。王妃から贈られた弓を手にしているから間違いない。

「彼がジークなの?」

 私が呆然としていると白鳥は物語と同じように聖堂廃墟へと降り立ち、光り輝き始めた。それを見た佐倉さんジーク?が後を追って聖堂内へと入っていった。

「ストーリーに沿って動いている……やっぱり彼がジーク?」

 だとすると佐倉さんの顔なのは何故なの?
 まさか私の異能に巻き込まれてしまった?

 いいえ、今まで私の異能で近くにいた人が一緒に物語の中に転移した例はないわ。

「それじゃあ……もしかして……私の願望が反映された?」

 私の望みでジークが佐倉さん顔で登場してるとか?

「ちょっと待って待って!」

 えっ、それじゃ私は彼のことを?
 す、す、す、す、すき……なの?

「いやいやいやいや、ないないないない!」

 だって二つも年下の男の子よ?
 恋愛よりも読書が好きな私よ?

「あり得ないわ!」

 ああ、もう、恥ずかしい。

 頬に手を当てれば凄く熱くなっていて真っ赤になってる。こんなの誰かに見られたら絶対に勘違いされるわ。

「なに動揺してるのよ……って、いない!?」

 気づけば佐倉さんジークの姿が見えなくなっていた。代わりに聖堂が小説通りに光を放っている。

「たぶん聖堂あそこよね」

 私はそろりそろりと聖堂に近づくと壊れた壁の影に隠れて中を覗き込んだ。

 中には思った通りジーク姿の佐倉さんと数人の侍女に囲まれたドレス姿のコデット……って、あれって私じゃない!?

「どうして私がコデットに……コニールが私になってしまったからコデットの姿も私に変わってしまったのかしら?」

 何を話し合っているのか私の位置からでは内容までは聞こえない。

「……を忘れる……」
「……はジーク……」

 ただ、断片的に聞こえる会話と笑い声から佐倉さんとコデットが仲睦まじくしているのがわかった。

 まあ、原作通りなんだけど……なんか私の胸がつきりと痛んだ。

「でも、ジークとコデットが結ばれないと物語は終わらないし……」

 だけど胸の中がモヤモヤしてしまう。コデットが私と同じ顔というのがまた私の頭を悩ませる。

「まさかこれも私の願望じゃないわよね?」

 私そっくりのコデットは果たして物語のコデットなのか私の望みが具現化したのか。佐倉さんに似たジークは本当に『黒鳥の湖』のジークなんだろうか?

 小説通りならジークはここでコデットに恋をして明日の舞踏会に誘うのだけど……

 ここからでは二人の会話がわからない。

 どうしようか迷ったけれど、ジークが去った後に私は聖堂へと足を踏み入れた。

「コデット」

 呼びかけに振り向いたコデットの顔はやっぱり私の顔にそっくり。

「今日はお客様が多いわね」

 コデットは私を見るとにこりと笑った。
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