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第6話 綴る世界③「気づけば知らない世界・前編」

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「ジーク様、探しましたよ」
「こんな所におられたんですかぁ」

 今の僕と同じようなスタイルの青年がニコニコ笑い、胸元が大きく開いたドレスの派手な美女が鼻にかかった声ですり寄ってきた。

「そうですよぉ」
「せっかくジーク様のお誕生日のお祝いに来たのにぃ」

 他も似たり寄ったりの格好の女の子たちが僕のことをジーク様と呼びながら後に続く。みんなキレイだけど香水臭い。

(やっぱ書院さんの方が良い匂いだ)

 踏台から落ちそうになった書院さんを抱き支えたことがあった。彼女と密着した時に鼻腔をくすぐったふわりと甘い香りと華奢で柔らかい体の感触を思い出すと顔が緩む。

 すると群がる美女たちがキャッキャと笑い出した。

「さっきからラーラの胸ばっかり見てぇ」
「もぉ、やぁらしぃ」
「ジーク様ったらぁ、鼻の下伸ばしちゃってぇ」

 お前らに伸ばしてんじゃねぇよ!

 それにしても、こいつら僕のことをジーク、ジークって……僕は完全な日本人顔だぞ。どうやったらそんな人違いできるんだ?

「あのさ、僕はジークじゃな……」

 バァン!!!

 僕が失礼な勘違い女どもに間違いを指摘しようとした時、扉が再び勢いよく開かれた。

「ジーク様、大変です!」

 そして、僕よりもずっと小さな男が乱入してきた。

「だから僕はジークじゃないって!」
「そんな冗談を言っている場合ではありません!」

 どう見たって部屋にいる人間はみんな西洋風の顔立ち、明らかな日本人顔の僕をどうやったらジークって奴と人違いできるんだ?

 ジークなんて名前が日本人のわけないし……いや、最近のキラキラネームならワンチャンあり得るか?

「お、王妃様がこちらに向かっておられます!」
「王妃様?」

 ここってどっかの王国なの!?

 やばい!
 僕がジークじゃないって知られたら逮捕されちゃうんじゃない?

「早く町娘たちを隠さないと!」

 僕の焦りとはよそに小男は慌てて女の子たちの背を押し物陰に隠そうとしている。ぜんぜん隠せてないけど。

 カーテンの後ろに隠した子は胸が大きすぎて不自然に膨らんでいるし、ベッドの下に隠した子は大きなお尻を突き出しているのはギャグですか?

「ああ、せっかくジーク様の成人祝いにと綺麗どころを集めたのに……」
「ほぅ、べノン、お前がその女どもを連れ込んだのですか」

 嘆く小男は凛とした女性の声にギギギと首を回して振り返る。

 それに釣られて僕も振り返れば、扉のところに金髪を盛大に結い上げた品の良い美女が冷たい視線を向けていた。

「ヒィィィッ!」

 おいおいべノンとやら、女の子を自分の背に隠そうとしたって君の身長じゃ無理だろう。ぜんぜん隠せてないから。

「本来なら城への侵入者として処断するところですが今日はジークの成人の日。不問にするのでその者たちをさっさと追い出しなさい」
「は、は、はい、王妃様!」

 どうやら、この美女が王妃様らしい。
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