68 / 141
龍王と冒険者ギルド
64話目
しおりを挟む
キプロウの町長であるドムックさん宅に招かれて、姫たちは家の中へと入っていくが、我は龍なので普通の家より身体が大きく入ることが出来ない。
毎度こんなんだと不便である。どうにか解決策を見つけなければと考えを巡らせる。
働けブレイン!弾けろシナプス!クリエーション・ディス・ワールド!!
ピコーン!そういえばこの身体は2度程小さくなったことがあるぞ。
1度目は姫が作った魔法丸薬……?を飲んだ時。
2度目があの毒魂アナムに魔力を奪われた時だ。
この点と点を繋げると線になり、そして辺になるのだが……っ!辺を求める為に今こそ異世界の三平方の定理を使う!
sinθをこうしてcosθをああすると、炭治郎……間違えたtanθは我の身体の大きさは体内を巡っている魔力の影響を多分に受けているからだと導き出された。
しからば メガラバ サラダバー、これ 魔力を抑えたりすればどうにかならないだろうか。何となく体内外の魔力の存在を知覚できるのだが、今度はどうやったらそれを抑えられるか考えよう。
こう……魔力コントロールを水を出す蛇口に置き換えて、蛇口を捻って少ししか出さないようにすれば……異世界偏差値高学歴スーパーエリートの我を嘗めるなよーーー!
ぐぬぬ、小さく、なれーーー!!!
そんななりふり構わず祈祷を捧げる我に対して変化に気付いた姫たちが驚いた声を漏らす
「あら偉大なる龍王様?
バルドラでは出来なかった身体操作をいつの間にか会得しているなんて……流石ね」
「おいおい マジかよ あのサイズをここまで自在に操れる魔法使えるなんてお前凄えな!人に使役されてる龍ってだけでも珍しいのによ」
「小さくなったアカシャ様も……また良いですね」
「《この褒められ具合、我 もしや何か凄いことやっちゃいました……?》」
やれやれ、能ある龍は爪を隠したいんだけどな。長すぎる爪がどうやっても隠しきれませんわ、やれやれ。
誰か爪切り持ってきてくんなーーい?大きいやつ!我の才能に見合った飛びっきりの特注品のやつをさーー!
《なんてばっちい笑顔なんでしょう》
皆の反応を見る限りはどうやら縮小は問題なく成功したらしい。思った以上に簡単に出来た。
どこまで小さくなれるかは知らないが、これなら小さくなって相手の体に入り込んで、元の大きさに戻り、相手の身体を破裂させて勝てそうだな。いや、グロいんで絶対やらないけどね。手段と勝ち方を選べない奴は三流。いや三龍以下なのであしからず
我の定位置である姫の頭頂部にのしかかる。
「うっ……」
それにしても凄い気分が良い、これには流石に気分が高揚します。前世の我が恩師 酢桃木先生が口酸っぱく言っていたことを思い返す。自尊心の低いバカとブスこそ異世界に行け、と。その言葉の意味が漸く分かった気がする。なんだろう、自己肯定感が凄い高まる。これからは何かできるようになる度に見せびらかして褒めてもらおう、そうしよう
「重い……」
「《重くない》」
姫は少しだけ鬱陶しそうに表情筋を歪めるものの退かそうとはしなかった。
「おかけください冒険者様方。見ての通り満足におもてなしも出来ず大変恐縮ですが」
町長ならばこの町でも比較的裕福な生活を送っている部類に入るだろう。しかし来客をもてなす為に通された応接間は、ガタガタの窓枠から部屋に隙間風が入ってきているし、歩けば床がギシギシと音を立てて軋んでいる。壁にはヒビが入っており、腰かけるソファーも勿論ボロボロである。これだけでドムックさん家の経済状況も察せられるというものだ。
全員が腰掛けてから、ドムックさんが不安そうにおずおずと話し始める
「では改めまして挨拶を。このキプロウで町長を務めさせて頂いてるドムック・ドルトリンです。再三の確認で恐縮ですが、依頼を受ける冒険者様でよろしいのでしたよね?」
「そうだ。俺たちは"怪物たちの檻"というギルドに所属している冒険者だ。
で、早速依頼を確認させてくれ」
依頼に対する一連の流れを見せるためだろうか、それに真っ先に応えたのはトーチカさんだった。彼の身体が大きい分、圧が凄いのだろう。若干気圧された様子のドムックさん。平身低頭気味の相手に対して、凄むのは我的に良くないと思います
「依頼をしていてなんなのですが、ほ、本当の本当に引き受けてくれるんでしょうか?」
「しつけえな。そのつもりだから来てる。ま 俺は見守りだがな。少なくともこいつら2人は引き受ける気満々の様だぜ」
「《我もいるんだが》」
「悪りぃ んな怒んな。わざとじゃないって。
すまねえ、この2人と1匹がギルドの名に賭けてきちんと依頼をこなすからよ、安心して話してくれ」
「ありがとうございます。ありがとうございます。
で、では、先ずこれをご覧ください」
ドムックさんが目に僅かばかりの涙を浮かべながら、テーブルに何やら紙を広げる。見てみると、どうやら中身はこの辺りの詳細な地図のようであった
「此処キプロウは、東方の交易拠点で商業系ギルドや聖国より派遣されたキケ司教という方に栽培している幾つかの魔草を買い取って貰い、辛うじて成り立っていた小さな町です。
しかしその為には魔草を育てるための用品を定期的に行商人等から買う必要がありまして、人が此処を訪れるために用いる四つの通商路、その中でよりにもよってメインに使っていた二つの道が2ヶ月以上前の土砂崩れにより道が塞がれてしまっていて困っているのです。
残り二つの使える道も、うち一つはガゾ山を経由するのですが、他よりも険路で尚且つ数日はかかる上に山賊まで出るという噂があり……
もう一つが、ラブランという貴族の領地を介しての通行になり、こちらは比較的安全に通行できますが、最近になってここの関所の数が倍に増やされ、以前より通ることが難しくなってしまいました」
「ですから、2つの塞がれた通商路が元に戻れば、少なくとも以前程度の生活には戻れると考えているのですが、あの……塞がれた道を元に戻す依頼は本来ならEではなくB以上の依頼が適切だと承っています。我々の財政事情では……とても払えきれず、厚かましい依頼をしているのはわかっているのですが、皆々様どうか何卒よろしくお願いいたします」
ドムックさんは我々に遂には申し訳なさそうに床に手をついていた。
姫は優しく微笑みかける
「顔をあげてください。依頼はきちんとこなします。所で最後にアドバイスしても良いでしょうか?」
「は、はい」
「これを見てください。外にいた子供が売っていたこの雪花はピナスと言いまして、本来なら、もっと北の大陸の物です。大方鳥型の魔物のフンに種でも混じっていたものだと思いますが、これはそもそも特定の条件下で咲く花です。いつから生えているのですか?」
「フンに種?さ、さあ。少なくとも随分と昔からこの村にはあった様に思いますが、そ それが何か?もしや悪い物だったりするのですか?」
「いえ。ピナスの花弁の数を見てください。この花の花弁は根付いた土に含有した魔素が上質だと花弁を多く咲かせる傾向にあります」
「は はぁ……結構な花弁があるということは、土のマソが上質だということですね……それは何か良いことがあるのでしょうか?」
何となく察しはついたが、ドムックさんはまだイマイチピンと来ていない様子だった
「……因みに毎月どのくらいの魔草を売って、どの程度の利益を得ているのですか」
「私たちが最低限の品質を維持出来るラインが毎月百株程度ですので、それを半々ずつギルドと司教の方に売っています。ギルドからは懇意にさせてもらっているので五十株で大銅貨百枚!司教からはお金ではなく、町全員分の1週間分の食料や衣服、それと聖水を数本と交代させて頂いております!」
嬉しそうに語るドムックさんとは対照的に姫の顔があちゃー。こいつカモにされてるなと言わんばかりに頭を抱えていた
「経済的に不遇な人は、時に物の価値が分からないことをいい事に相手に搾取される場合がある。その典型的な例ね」
「え?」
「何から伝えるべきかしら。
現物を見たわけじゃないから断言はできないけれど、恐らく私の推測通りの品質の魔草なら、一株につき最低大銀貨1枚が相場よ。それに司教の方のは、そのやり取りだと寄贈に近いわ。その半分で町が1ヶ月は飢えないで済むし、聖水も魔草の数だけ貰えるわ」
「ええっ!?」
「分かっていない様だけど、魔素が豊かな大地で育った高品質の魔草が銅貨一枚程度の価値なら、市場で値崩れを起こす所の話ではありません……そもそもとして」
姫は恐らく魔草の事について語ろうとしたのだろう。しかし経験上、姫の話は長い。1時間は余裕で話す。下手したら日が暮れる。背後に控えていた花ちゃんもそれを知ってか慌てて割って入った
「依頼をこなすのが先じゃないですか、玻璃先輩!」
「花……コホン。苺 いえ、この人たちに魔草の知識を与えないと。それが私たちの役割……」
「先輩ったら変なこと言っちゃって。そういうのは魔導師の役割ですよ。あくまで自分たちは駆け出しの冒険者なんですから!」
冒険者。という言葉を花ちゃんが強調すると姫は少しだけ得心がいかない色を浮かべるも、渋々納得した様子で言葉を吐き出す
「そうね そうだったわ。貴女が正しい」
「……私には、魔草。特に薬用植物の専門家の魔導師が知り合いにいるの。良ければ紹介するから、その人と一緒に魔草について学ぶと良いわ」
「ほ、本当ですか!?依頼を引き受けてくれるだけでなく、……そこまで……!なんと偉大な人たちなのか……!」
救いの手を取るかのように、ドムックさんは姫の手を握り咽び泣いていた。それ程までに追い詰められていたということなのだろう
話を詰めた後は、ドムックさん宅を後にして、土砂や瓦礫の撤去をするための依頼場所に向かう
我の背に乗りながら、上から花ちゃんが地図と場所の睨めっこをしている
「にしても、あんた随分と魔草について詳しいんだな。それに魔導師とも知り合いがいるなんて」
「……気になりますか?」
「安心しろ お前らの素性を探るつもりはねえよ。が、ただ駆け出しの冒険者じゃないってのは分かった。頼もしい後輩で嬉しいよ」
暫く空から散策すると、件の場所を漸く見つける。
街道を塞ぐように道に面した切り立った壁がまるで熱されたバターの様に溶けて幾重もの層となって妨げているのだ
「《どうやったら、こうなるんだ?》」
地面に降り立ち、驚いているだけの我以外の3人は違和感を感じ取った様だ
「……」
「先輩。これって」
「そうね。これは魔法を使って、誰かが意図的に塞いでいるわ」
きな臭くなってきたな、後半に続く……のか?
毎度こんなんだと不便である。どうにか解決策を見つけなければと考えを巡らせる。
働けブレイン!弾けろシナプス!クリエーション・ディス・ワールド!!
ピコーン!そういえばこの身体は2度程小さくなったことがあるぞ。
1度目は姫が作った魔法丸薬……?を飲んだ時。
2度目があの毒魂アナムに魔力を奪われた時だ。
この点と点を繋げると線になり、そして辺になるのだが……っ!辺を求める為に今こそ異世界の三平方の定理を使う!
sinθをこうしてcosθをああすると、炭治郎……間違えたtanθは我の身体の大きさは体内を巡っている魔力の影響を多分に受けているからだと導き出された。
しからば メガラバ サラダバー、これ 魔力を抑えたりすればどうにかならないだろうか。何となく体内外の魔力の存在を知覚できるのだが、今度はどうやったらそれを抑えられるか考えよう。
こう……魔力コントロールを水を出す蛇口に置き換えて、蛇口を捻って少ししか出さないようにすれば……異世界偏差値高学歴スーパーエリートの我を嘗めるなよーーー!
ぐぬぬ、小さく、なれーーー!!!
そんななりふり構わず祈祷を捧げる我に対して変化に気付いた姫たちが驚いた声を漏らす
「あら偉大なる龍王様?
バルドラでは出来なかった身体操作をいつの間にか会得しているなんて……流石ね」
「おいおい マジかよ あのサイズをここまで自在に操れる魔法使えるなんてお前凄えな!人に使役されてる龍ってだけでも珍しいのによ」
「小さくなったアカシャ様も……また良いですね」
「《この褒められ具合、我 もしや何か凄いことやっちゃいました……?》」
やれやれ、能ある龍は爪を隠したいんだけどな。長すぎる爪がどうやっても隠しきれませんわ、やれやれ。
誰か爪切り持ってきてくんなーーい?大きいやつ!我の才能に見合った飛びっきりの特注品のやつをさーー!
《なんてばっちい笑顔なんでしょう》
皆の反応を見る限りはどうやら縮小は問題なく成功したらしい。思った以上に簡単に出来た。
どこまで小さくなれるかは知らないが、これなら小さくなって相手の体に入り込んで、元の大きさに戻り、相手の身体を破裂させて勝てそうだな。いや、グロいんで絶対やらないけどね。手段と勝ち方を選べない奴は三流。いや三龍以下なのであしからず
我の定位置である姫の頭頂部にのしかかる。
「うっ……」
それにしても凄い気分が良い、これには流石に気分が高揚します。前世の我が恩師 酢桃木先生が口酸っぱく言っていたことを思い返す。自尊心の低いバカとブスこそ異世界に行け、と。その言葉の意味が漸く分かった気がする。なんだろう、自己肯定感が凄い高まる。これからは何かできるようになる度に見せびらかして褒めてもらおう、そうしよう
「重い……」
「《重くない》」
姫は少しだけ鬱陶しそうに表情筋を歪めるものの退かそうとはしなかった。
「おかけください冒険者様方。見ての通り満足におもてなしも出来ず大変恐縮ですが」
町長ならばこの町でも比較的裕福な生活を送っている部類に入るだろう。しかし来客をもてなす為に通された応接間は、ガタガタの窓枠から部屋に隙間風が入ってきているし、歩けば床がギシギシと音を立てて軋んでいる。壁にはヒビが入っており、腰かけるソファーも勿論ボロボロである。これだけでドムックさん家の経済状況も察せられるというものだ。
全員が腰掛けてから、ドムックさんが不安そうにおずおずと話し始める
「では改めまして挨拶を。このキプロウで町長を務めさせて頂いてるドムック・ドルトリンです。再三の確認で恐縮ですが、依頼を受ける冒険者様でよろしいのでしたよね?」
「そうだ。俺たちは"怪物たちの檻"というギルドに所属している冒険者だ。
で、早速依頼を確認させてくれ」
依頼に対する一連の流れを見せるためだろうか、それに真っ先に応えたのはトーチカさんだった。彼の身体が大きい分、圧が凄いのだろう。若干気圧された様子のドムックさん。平身低頭気味の相手に対して、凄むのは我的に良くないと思います
「依頼をしていてなんなのですが、ほ、本当の本当に引き受けてくれるんでしょうか?」
「しつけえな。そのつもりだから来てる。ま 俺は見守りだがな。少なくともこいつら2人は引き受ける気満々の様だぜ」
「《我もいるんだが》」
「悪りぃ んな怒んな。わざとじゃないって。
すまねえ、この2人と1匹がギルドの名に賭けてきちんと依頼をこなすからよ、安心して話してくれ」
「ありがとうございます。ありがとうございます。
で、では、先ずこれをご覧ください」
ドムックさんが目に僅かばかりの涙を浮かべながら、テーブルに何やら紙を広げる。見てみると、どうやら中身はこの辺りの詳細な地図のようであった
「此処キプロウは、東方の交易拠点で商業系ギルドや聖国より派遣されたキケ司教という方に栽培している幾つかの魔草を買い取って貰い、辛うじて成り立っていた小さな町です。
しかしその為には魔草を育てるための用品を定期的に行商人等から買う必要がありまして、人が此処を訪れるために用いる四つの通商路、その中でよりにもよってメインに使っていた二つの道が2ヶ月以上前の土砂崩れにより道が塞がれてしまっていて困っているのです。
残り二つの使える道も、うち一つはガゾ山を経由するのですが、他よりも険路で尚且つ数日はかかる上に山賊まで出るという噂があり……
もう一つが、ラブランという貴族の領地を介しての通行になり、こちらは比較的安全に通行できますが、最近になってここの関所の数が倍に増やされ、以前より通ることが難しくなってしまいました」
「ですから、2つの塞がれた通商路が元に戻れば、少なくとも以前程度の生活には戻れると考えているのですが、あの……塞がれた道を元に戻す依頼は本来ならEではなくB以上の依頼が適切だと承っています。我々の財政事情では……とても払えきれず、厚かましい依頼をしているのはわかっているのですが、皆々様どうか何卒よろしくお願いいたします」
ドムックさんは我々に遂には申し訳なさそうに床に手をついていた。
姫は優しく微笑みかける
「顔をあげてください。依頼はきちんとこなします。所で最後にアドバイスしても良いでしょうか?」
「は、はい」
「これを見てください。外にいた子供が売っていたこの雪花はピナスと言いまして、本来なら、もっと北の大陸の物です。大方鳥型の魔物のフンに種でも混じっていたものだと思いますが、これはそもそも特定の条件下で咲く花です。いつから生えているのですか?」
「フンに種?さ、さあ。少なくとも随分と昔からこの村にはあった様に思いますが、そ それが何か?もしや悪い物だったりするのですか?」
「いえ。ピナスの花弁の数を見てください。この花の花弁は根付いた土に含有した魔素が上質だと花弁を多く咲かせる傾向にあります」
「は はぁ……結構な花弁があるということは、土のマソが上質だということですね……それは何か良いことがあるのでしょうか?」
何となく察しはついたが、ドムックさんはまだイマイチピンと来ていない様子だった
「……因みに毎月どのくらいの魔草を売って、どの程度の利益を得ているのですか」
「私たちが最低限の品質を維持出来るラインが毎月百株程度ですので、それを半々ずつギルドと司教の方に売っています。ギルドからは懇意にさせてもらっているので五十株で大銅貨百枚!司教からはお金ではなく、町全員分の1週間分の食料や衣服、それと聖水を数本と交代させて頂いております!」
嬉しそうに語るドムックさんとは対照的に姫の顔があちゃー。こいつカモにされてるなと言わんばかりに頭を抱えていた
「経済的に不遇な人は、時に物の価値が分からないことをいい事に相手に搾取される場合がある。その典型的な例ね」
「え?」
「何から伝えるべきかしら。
現物を見たわけじゃないから断言はできないけれど、恐らく私の推測通りの品質の魔草なら、一株につき最低大銀貨1枚が相場よ。それに司教の方のは、そのやり取りだと寄贈に近いわ。その半分で町が1ヶ月は飢えないで済むし、聖水も魔草の数だけ貰えるわ」
「ええっ!?」
「分かっていない様だけど、魔素が豊かな大地で育った高品質の魔草が銅貨一枚程度の価値なら、市場で値崩れを起こす所の話ではありません……そもそもとして」
姫は恐らく魔草の事について語ろうとしたのだろう。しかし経験上、姫の話は長い。1時間は余裕で話す。下手したら日が暮れる。背後に控えていた花ちゃんもそれを知ってか慌てて割って入った
「依頼をこなすのが先じゃないですか、玻璃先輩!」
「花……コホン。苺 いえ、この人たちに魔草の知識を与えないと。それが私たちの役割……」
「先輩ったら変なこと言っちゃって。そういうのは魔導師の役割ですよ。あくまで自分たちは駆け出しの冒険者なんですから!」
冒険者。という言葉を花ちゃんが強調すると姫は少しだけ得心がいかない色を浮かべるも、渋々納得した様子で言葉を吐き出す
「そうね そうだったわ。貴女が正しい」
「……私には、魔草。特に薬用植物の専門家の魔導師が知り合いにいるの。良ければ紹介するから、その人と一緒に魔草について学ぶと良いわ」
「ほ、本当ですか!?依頼を引き受けてくれるだけでなく、……そこまで……!なんと偉大な人たちなのか……!」
救いの手を取るかのように、ドムックさんは姫の手を握り咽び泣いていた。それ程までに追い詰められていたということなのだろう
話を詰めた後は、ドムックさん宅を後にして、土砂や瓦礫の撤去をするための依頼場所に向かう
我の背に乗りながら、上から花ちゃんが地図と場所の睨めっこをしている
「にしても、あんた随分と魔草について詳しいんだな。それに魔導師とも知り合いがいるなんて」
「……気になりますか?」
「安心しろ お前らの素性を探るつもりはねえよ。が、ただ駆け出しの冒険者じゃないってのは分かった。頼もしい後輩で嬉しいよ」
暫く空から散策すると、件の場所を漸く見つける。
街道を塞ぐように道に面した切り立った壁がまるで熱されたバターの様に溶けて幾重もの層となって妨げているのだ
「《どうやったら、こうなるんだ?》」
地面に降り立ち、驚いているだけの我以外の3人は違和感を感じ取った様だ
「……」
「先輩。これって」
「そうね。これは魔法を使って、誰かが意図的に塞いでいるわ」
きな臭くなってきたな、後半に続く……のか?
0
お気に入りに追加
49
あなたにおすすめの小説
魔境に捨てられたけどめげずに生きていきます
ツバキ
ファンタジー
貴族の子供として産まれた主人公、五歳の時の魔力属性検査で魔力属性が無属性だと判明したそれを知った父親は主人公を魔境へ捨ててしまう
どんどん更新していきます。
ちょっと、恨み描写などがあるので、R15にしました。
ヤケになってドレスを脱いだら、なんだかえらい事になりました
杜野秋人
恋愛
「そなたとの婚約、今この場をもって破棄してくれる!」
王族専用の壇上から、立太子間近と言われる第一王子が、声高にそう叫んだ。それを、第一王子の婚約者アレクシアは黙って聞いていた。
第一王子は次々と、アレクシアの不行跡や不品行をあげつらい、容姿をけなし、彼女を責める。傍らに呼び寄せたアレクシアの異母妹が訴えるままに、鵜呑みにして信じ込んだのだろう。
確かに婚約してからの5年間、第一王子とは一度も会わなかったし手紙や贈り物のやり取りもしなかった。だがそれは「させてもらえなかった」が正しい。全ては母が死んだ後に乗り込んできた後妻と、その娘である異母妹の仕組んだことで、父がそれを許可したからこそそんな事がまかり通ったのだということに、第一王子は気付かないらしい。
唯一の味方だと信じていた第一王子までも、アレクシアの味方ではなくなった。
もう味方はいない。
誰への義理もない。
ならば、もうどうにでもなればいい。
アレクシアはスッと背筋を伸ばした。
そうして彼女が次に取った行動に、第一王子は驚愕することになる⸺!
◆虐げられてるドアマットヒロインって、見たら分かるじゃんね?って作品が最近多いので便乗してみました(笑)。
◆虐待を窺わせる描写が少しだけあるのでR15で。
◆ざまぁは二段階。いわゆるおまいう系のざまぁを含みます。
◆全8話、最終話だけ少し長めです。
恋愛は後半で、メインディッシュはざまぁでどうぞ。
◆片手間で書いたんで、主要人物以外の固有名詞はありません。どこの国とも設定してないんで悪しからず。
◆この作品はアルファポリスのほか、小説家になろうでも公開します。
◆過去作のヒロインと本作主人公の名前が丸被りしてたので、名前を変更しています。(2024/09/03)
◆9/2、HOTランキング11→7位!ありがとうございます!
9/3、HOTランキング5位→3位!ありがとうございます!
若返ったおっさん、第2の人生は異世界無双
たまゆら
ファンタジー
事故で死んだネトゲ廃人のおっさん主人公が、ネトゲと酷似した異世界に転移。
ゲームの知識を活かして成り上がります。
圧倒的効率で金を稼ぎ、レベルを上げ、無双します。
婚約破棄されたら魔法が解けました
かな
恋愛
「クロエ・ベネット。お前との婚約は破棄する。」
それは学園の卒業パーティーでの出来事だった。……やっぱり、ダメだったんだ。周りがザワザワと騒ぎ出す中、ただ1人『クロエ・ベネット』だけは冷静に事実を受け止めていた。乙女ゲームの世界に転生してから10年。国外追放を回避する為に、そして后妃となる為に努力し続けて来たその時間が無駄になった瞬間だった。そんな彼女に追い打ちをかけるかのように、王太子であるエドワード・ホワイトは聖女を新たな婚約者とすることを発表した。その後はトントン拍子にことが運び、冤罪をかけられ、ゲームのシナリオ通り国外追放になった。そして、魔物に襲われて死ぬ。……そんな運命を辿るはずだった。
「こんなことなら、転生なんてしたくなかった。元の世界に戻りたい……」
あろうことか、最後の願いとしてそう思った瞬間に、全身が光り出したのだ。そして気がつくと、なんと前世の姿に戻っていた!しかもそれを第二王子であるアルベルトに見られていて……。
「……まさかこんなことになるなんてね。……それでどうする?あの2人復讐でもしちゃう?今の君なら、それができるよ。」
死を覚悟した絶望から転生特典を得た主人公の大逆転溺愛ラブストーリー!
※最初の5話は毎日18時に投稿、それ以降は毎週土曜日の18時に投稿する予定です
貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた
佐藤醤油
ファンタジー
貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。
僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。
魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。
言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。
この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。
小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。
------------------------------------------------------------------
お知らせ
「転生者はめぐりあう」 始めました。
------------------------------------------------------------------
注意
作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。
感想は受け付けていません。
誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。
蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる
フルーツパフェ
大衆娯楽
転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。
一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。
そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!
寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。
――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです
そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。
大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。
相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。
【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?
みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。
ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる
色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く
【完結】【勇者】の称号が無かった美少年は王宮を追放されたのでのんびり異世界を謳歌する
雪雪ノ雪
ファンタジー
ある日、突然学校にいた人全員が【勇者】として召喚された。
その召喚に巻き込まれた少年柊茜は、1人だけ【勇者】の称号がなかった。
代わりにあったのは【ラグナロク】という【固有exスキル】。
それを見た柊茜は
「あー....このスキルのせいで【勇者】の称号がなかったのかー。まぁ、ス・ラ・イ・厶・に【勇者】って称号とか合わないからなぁ…」
【勇者】の称号が無かった柊茜は、王宮を追放されてしまう。
追放されてしまった柊茜は、特に慌てる事もなくのんびり異世界を謳歌する..........たぶん…....
主人公は男の娘です 基本主人公が自分を表す時は「私」と表現します
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる