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龍王と狐の来訪者
28話目 レイトショーの夜に
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俺は現在情報収集の為に目を閉じて魔力を用いて感覚を拡げていた。目的は昨日感じた強い気配が誰だったかを探るためにだ。しらみ潰しだがやるしかない
『最近ばあちゃんが腰悪くしてよー』
(これは関係ないな)
『闇市で昨日凄い買い込んでる女の人の連れ両手両足がさ』
(多分これも関係ない)
『この間あの貴族御用達のデカい妓楼初めて行ったんだけどバカ高くてよー。2日で半年貯めた持ち金全部消えちまった』
(……)
『しかしあそこの妓女たちみんなすげえ美人だったぜ。特に"大倫"って呼ばれる妓女たちは中でも別格だった。夜も負け無しで有名だがありゃ芸だけでも食っていけるな』
(ほうほう……っていかんいかん)
『聞いたか?夜に9番街の裏で男が3人殺されたらしい』
(9番街、9番街……俺が気配を感じた辺りか。)
『頭を銃でズドンだとよ。』
(犯人は銃を持ってる。怪しそうな奴は)
『なんか探られてる感じがするな。』
感覚にノイズが走る。何らかの方法で妨害をされたらしい。探知が突然上手く作用しなくなる。まるで煙に巻かれるように位置が欺瞞する。
「《探り方は次からもっと慎重にやらないとな》」
「偉大なる龍王様!大丈夫ですか?」
「《平気。》」
こうなっては仕方ない。切り替えよう。
姫が教えてくれたがバルドラ王都であるフリューゲルは巨大都市であるが故に五層の壁によって大きく区切られているそうな。
大まかに整理すると、先ず一層目と二層目は誰でも立ち入りが可能な市民区で人口の7割が此処に住んでいるそうだ。この世界でも大手冒険者ギルド『百手の巨人』本部もあるらしい。落ち着いたら俺も冒険者になりたい。やっぱ王道よね。ファンタジーだと。
具体的なプランを述べて良いのなら、妖精の尻尾辺りに入って、そしてゴブリン共を皆殺しにする予定だ。奴らの存在を許してはいけないってどこぞの銀等級冒険者も言ってた。
続いて第三層目は主に貴族を中心とした上流階級が住んでいるそうで、この第三層目のみ特別区域として貴族たちによって管理することが許されているそうだ。で、貴族御用達の妓楼はどこにあるの?"大倫"って子たちに俺も酌してもらいたいんだが。
第四層目は兵舎や軍需物資の備蓄などといった軍事関連施設が多くあるために軍関係者以外の立ち入りは原則禁止されている場所が多いそうだ。
最後の五層目はSFから引っ張り出したきたヴルカーンという巨大建造物のみとなっていて、項遠王の居住区であり、かぐやなる存在が管理しているらしい。
一度に情報が幾つも出てきているが、正直覚えていられる気がしない。俺の記憶力はお世辞にも良いと言えないので、まず間違いなく1時間後には忘れているだろう。テストに出ないことを祈っておくぜ。
さて何度もしつこい様に述べさせて頂くが、項遠王の護衛として玉藻ちゃんに頼まれて俺と姫はこの国に来ている。俺は兎も角として姫は上級魔導師らしいし、タラワだろうとアラモだろうと敵から守ってやる自信はあるのだろう。
だけど、守られている対象にもそれなりの行動が求められると思うのよね。これがな
「今宵よくぞ我ら白魏家の集まりにおいで下さいました。項遠様」
「ヌハハ!なんだ堅苦しいではないか魏良伯爵。いつも通りに真名の方で呼ばんか」
「……公私混同はいけませんな。項遠王」
「少し見ぬ間にお堅くなりおってからに」
死にたがりはどうしたって守れないだろう。 流石にさ
今俺たちは第三層にいる。今夜は三大貴族と呼ばれる偉い人たちとの晩餐会が催されるからだそうだ。貴族管理の特別区域の為に王軍も大挙して連れてこれない為、項遠王の警護は連れ添っている俺と姫と清正さんと玉藻ちゃんのみとなっている。当たり前だが屋敷の警護は貴族の私兵がやっているらしいが、暗殺の件はそもそも極秘事項のため、知ってるのは極々一部。いざという時にアテにするのは酷だろう。
姫はそもそも晩餐会などに参加するべきではないと項遠王に具申したが、晩餐会自体以前より予定されてたもので聞き入れてもらえなかった。そんなわけで姫はかなりご立腹である。
王としての体裁もあるのだろう。大国の王様が一介の暗殺者を怖がって小さく縮こまっているという噂が広まりでもしたら、威信を損ないかねないからだと思う。
昔の日本人も大和魂やら大日本帝国の誇りやらで自殺まがいの玉砕をしていたので、その末裔の俺が項遠王の行動をとやかく言うつもりはない。
一国の王の面目がどれだけ重いのか俺には分からないけれど、それでも優先すべきものを間違えちゃいけないと思うのよ。
そして他人の体型に一々文句を付ける気はないが、魏良さんというこの貴族は手遅れになる前に今からでも自分の体型に気をつけるべきではないだろうか?
些か以上にふくよかで肉付きが大変宜しく、お腹の出っ張り具合も相まって項遠王より巨体に見えるぞ‥‥‥因みに女子のよく言う熊さんみたいでカワイイは、別にデブオッケーという意味ではないそうだぜ。そこんとこお分かり?
「しかし、少し見ない間に‥‥また貴様、太ったか?腹の中にはいったい何が詰まっておるのやら」
「これでも頑張って痩せる努力はしているのですよ。食べる回数も1日3食に減らしてますが、その分1回の量が増えましてな。はっはっは」
「ヌハハ。食ってばかりいるからそうなるのだ。どれ、近々戦場に駆り出してやろう」
「ご冗談を。ですが後方支援の補給担当でしたら、この魏・セオドア・タッド・良がいつでも引き受けましょうぞ」
「ヌハハハ。バカを申すな。主に兵站を任せると必敗するわい」
肥満なら早急に人間ドックを受けて至急ダイエットしろ。手遅れになる前にな。このまま放っておくと動脈硬化や大動脈乖離や心筋梗塞待った無しではなかろうか。
屋敷に招かれて皆が足を踏み入れて行く中、姫だけが足を止めている
「《どうした姫。お腹でも痛いの?》」
「偉大なる龍王様は空から眼になってもらって良いですか?」
姫がそうしろと言うなら例え火の中水の中森の中あの子のスカートの中さ。了解という意味で首を縦に振る
「ありがとうございます」
ニコリと微笑む姫が、陶器のように綺麗な白い手で俺の頭を優しく撫でてくすぐったい。
「言い忘れていました。今貴方は特殊な魔法丸薬で魔力消費を極限まで抑えられています。そのせいだと思いますが、それに見合ったサイズまで存在が縮小しているので、普段通りに戦うことは難しいです。」
「龍王様に限って万が一はないと思いますが、くれぐれも無茶だけはしないで下さいね。」
言われなくてもしない。戦わなくて済むならそれが一番だ。ピンフ!ピンフ!平和主義者ぞ、俺。
「常に万全でいさせて上げたいのですが、契約による魔力消費の方が私の魔力回復を上回っているみたいです。情けない話ですがよろしくお願いしますね」
出来ないことを無理してやる必要はないさ。大切なのは今出来る範囲でベストを尽くすことなんでね。
「《お任せあれ》」
『最近ばあちゃんが腰悪くしてよー』
(これは関係ないな)
『闇市で昨日凄い買い込んでる女の人の連れ両手両足がさ』
(多分これも関係ない)
『この間あの貴族御用達のデカい妓楼初めて行ったんだけどバカ高くてよー。2日で半年貯めた持ち金全部消えちまった』
(……)
『しかしあそこの妓女たちみんなすげえ美人だったぜ。特に"大倫"って呼ばれる妓女たちは中でも別格だった。夜も負け無しで有名だがありゃ芸だけでも食っていけるな』
(ほうほう……っていかんいかん)
『聞いたか?夜に9番街の裏で男が3人殺されたらしい』
(9番街、9番街……俺が気配を感じた辺りか。)
『頭を銃でズドンだとよ。』
(犯人は銃を持ってる。怪しそうな奴は)
『なんか探られてる感じがするな。』
感覚にノイズが走る。何らかの方法で妨害をされたらしい。探知が突然上手く作用しなくなる。まるで煙に巻かれるように位置が欺瞞する。
「《探り方は次からもっと慎重にやらないとな》」
「偉大なる龍王様!大丈夫ですか?」
「《平気。》」
こうなっては仕方ない。切り替えよう。
姫が教えてくれたがバルドラ王都であるフリューゲルは巨大都市であるが故に五層の壁によって大きく区切られているそうな。
大まかに整理すると、先ず一層目と二層目は誰でも立ち入りが可能な市民区で人口の7割が此処に住んでいるそうだ。この世界でも大手冒険者ギルド『百手の巨人』本部もあるらしい。落ち着いたら俺も冒険者になりたい。やっぱ王道よね。ファンタジーだと。
具体的なプランを述べて良いのなら、妖精の尻尾辺りに入って、そしてゴブリン共を皆殺しにする予定だ。奴らの存在を許してはいけないってどこぞの銀等級冒険者も言ってた。
続いて第三層目は主に貴族を中心とした上流階級が住んでいるそうで、この第三層目のみ特別区域として貴族たちによって管理することが許されているそうだ。で、貴族御用達の妓楼はどこにあるの?"大倫"って子たちに俺も酌してもらいたいんだが。
第四層目は兵舎や軍需物資の備蓄などといった軍事関連施設が多くあるために軍関係者以外の立ち入りは原則禁止されている場所が多いそうだ。
最後の五層目はSFから引っ張り出したきたヴルカーンという巨大建造物のみとなっていて、項遠王の居住区であり、かぐやなる存在が管理しているらしい。
一度に情報が幾つも出てきているが、正直覚えていられる気がしない。俺の記憶力はお世辞にも良いと言えないので、まず間違いなく1時間後には忘れているだろう。テストに出ないことを祈っておくぜ。
さて何度もしつこい様に述べさせて頂くが、項遠王の護衛として玉藻ちゃんに頼まれて俺と姫はこの国に来ている。俺は兎も角として姫は上級魔導師らしいし、タラワだろうとアラモだろうと敵から守ってやる自信はあるのだろう。
だけど、守られている対象にもそれなりの行動が求められると思うのよね。これがな
「今宵よくぞ我ら白魏家の集まりにおいで下さいました。項遠様」
「ヌハハ!なんだ堅苦しいではないか魏良伯爵。いつも通りに真名の方で呼ばんか」
「……公私混同はいけませんな。項遠王」
「少し見ぬ間にお堅くなりおってからに」
死にたがりはどうしたって守れないだろう。 流石にさ
今俺たちは第三層にいる。今夜は三大貴族と呼ばれる偉い人たちとの晩餐会が催されるからだそうだ。貴族管理の特別区域の為に王軍も大挙して連れてこれない為、項遠王の警護は連れ添っている俺と姫と清正さんと玉藻ちゃんのみとなっている。当たり前だが屋敷の警護は貴族の私兵がやっているらしいが、暗殺の件はそもそも極秘事項のため、知ってるのは極々一部。いざという時にアテにするのは酷だろう。
姫はそもそも晩餐会などに参加するべきではないと項遠王に具申したが、晩餐会自体以前より予定されてたもので聞き入れてもらえなかった。そんなわけで姫はかなりご立腹である。
王としての体裁もあるのだろう。大国の王様が一介の暗殺者を怖がって小さく縮こまっているという噂が広まりでもしたら、威信を損ないかねないからだと思う。
昔の日本人も大和魂やら大日本帝国の誇りやらで自殺まがいの玉砕をしていたので、その末裔の俺が項遠王の行動をとやかく言うつもりはない。
一国の王の面目がどれだけ重いのか俺には分からないけれど、それでも優先すべきものを間違えちゃいけないと思うのよ。
そして他人の体型に一々文句を付ける気はないが、魏良さんというこの貴族は手遅れになる前に今からでも自分の体型に気をつけるべきではないだろうか?
些か以上にふくよかで肉付きが大変宜しく、お腹の出っ張り具合も相まって項遠王より巨体に見えるぞ‥‥‥因みに女子のよく言う熊さんみたいでカワイイは、別にデブオッケーという意味ではないそうだぜ。そこんとこお分かり?
「しかし、少し見ない間に‥‥また貴様、太ったか?腹の中にはいったい何が詰まっておるのやら」
「これでも頑張って痩せる努力はしているのですよ。食べる回数も1日3食に減らしてますが、その分1回の量が増えましてな。はっはっは」
「ヌハハ。食ってばかりいるからそうなるのだ。どれ、近々戦場に駆り出してやろう」
「ご冗談を。ですが後方支援の補給担当でしたら、この魏・セオドア・タッド・良がいつでも引き受けましょうぞ」
「ヌハハハ。バカを申すな。主に兵站を任せると必敗するわい」
肥満なら早急に人間ドックを受けて至急ダイエットしろ。手遅れになる前にな。このまま放っておくと動脈硬化や大動脈乖離や心筋梗塞待った無しではなかろうか。
屋敷に招かれて皆が足を踏み入れて行く中、姫だけが足を止めている
「《どうした姫。お腹でも痛いの?》」
「偉大なる龍王様は空から眼になってもらって良いですか?」
姫がそうしろと言うなら例え火の中水の中森の中あの子のスカートの中さ。了解という意味で首を縦に振る
「ありがとうございます」
ニコリと微笑む姫が、陶器のように綺麗な白い手で俺の頭を優しく撫でてくすぐったい。
「言い忘れていました。今貴方は特殊な魔法丸薬で魔力消費を極限まで抑えられています。そのせいだと思いますが、それに見合ったサイズまで存在が縮小しているので、普段通りに戦うことは難しいです。」
「龍王様に限って万が一はないと思いますが、くれぐれも無茶だけはしないで下さいね。」
言われなくてもしない。戦わなくて済むならそれが一番だ。ピンフ!ピンフ!平和主義者ぞ、俺。
「常に万全でいさせて上げたいのですが、契約による魔力消費の方が私の魔力回復を上回っているみたいです。情けない話ですがよろしくお願いしますね」
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