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今世
二度目の人生
しおりを挟む…彼方…。
―おにいさん。
…ん?
―おにいさん、いきたい?
…俺は死んだから、生きられないよ。
―まだしんでないよ。たましいがいきてるから。
…そうなのか。不思議だな。
―ねえ、いきたい?
……生きたいよ。したいこと、まだあるんだ。
―じゃあ、ぼくのからだ、あげる。
…え?
―ぼくのたましいは、びょうきでしんじゃったの。
―からだはまだいきてるから、たましいがあれば、いきられるよ。
―だから、あげる。
…いや、いいよ。君の身体は、君だけのものだ。俺が貰うわけにはいかない。
…でも、ありがとう。気持ちは受け取っておくよ。
―あのね、ぼくも、いきたいの。おにいさんがぼくのからだでいきてくれたら、ぼくもいきていることになるんじゃないかな。だから、うけとって。
―ちがうせかいのぼく。
…違う世界…?
―ちがうせかいでも、たましいがちがっても、いきているひとはおなじなんだ。おにいさんのかなたさんとあえるかもしれないよ。
……彼方…。
―さあ、おきて。かあさんがぼくをまってるんだ。ぼくがしんだら、かあさんはひとりになる。かあさんをひとりにしないで。
………。
―おにいさん、かあさんのこと、おねがいね。かあさんをたいせつにしてくれるなら、すきなひとといっしょにいてもいいよ。
……分かった。君の分まで、君のお母さんを大切にするよ。だから、安心してくれ。
…チャンスをくれて、ありがとう。
―こちらこそ、ありがとう。
―それとね、もうひとつ、おねがいがあるの。
―かあさんには、ぼくのたましいがしんじゃったこと、ないしょにして。かあさんにかなしんでほしくないんだ。うそをついてもいいから、ずっとないしょにしてね。
……出来る限り頑張るよ。失敗したら、ごめん。
―ちゃんとがんばってくれたら、しっぱいしても、ゆるしてあげるよ。
―がんばってね、おにいさん。
―さようなら。
…さようなら。
「……で、き………い……ん……」
…?
優しい女性の声が聞こえる。
「も…あさ…、…なで」
俺はこの声を知っている。
「奏、起きて」
泣きたくなるほど懐かしくて、大好きだった、声。
「…かあさん」
呟きながら、目を開けると、随分前に亡くなったはずの母親が「奏っ!ああ、良かった…!もう大丈夫よ」と涙ぐみながら微笑みかけてくる。
「……」
…俺は彼方との結婚式当日に、控え室で楓に刺し殺された…はずだ。
どうして、母さんがいるんだろう。
これは夢か?それとも、今までのことが全部夢だった?
……夢?
っ、そうだ。俺はさっき、子供と話して、身体を譲り受けた…。
「?…どうしたの?どこか痛い?」
返事をしなかったからか、涙を拭った母さんが、心配そうに呼び掛けてくる。
「かあさん、おれはだいじょうぶだよ。しんぱいしないで」
「えっ?奏、あなた…」
…え?
母さんが驚いてるけど、俺も驚いた。
何だ、この声と発音は。
幼くて高い声、舌足らずな発音。
まるで幼児じゃないか。
流暢に話してたから、六、七歳くらいだと思ってたけど…もしかして、違うのか。
もう一人の俺は、一体何歳なんだろう。
「いつから俺って言うようになったの?」
「…え?」
「四日前まで、ぼくだったじゃない。急にどうしたの?」
…早速失敗した!ごめん!
そうだった。
一人称が俺に変わったのは、小学一年生の時、クラスメートの男子一人にやたら絡まれたことが原因だった。
[男か女か分かんねー顔してる]だの、[自分のこと僕って言うのかよ。じゃあ、僕ちゃんだな]だの、[言葉も女みてぇ]だの、[奏ちゃん、今日も可愛い~]だの、ウザ絡み(ウザい絡み)されたからだ。
一人称を俺にして、口調も男らしく…というか、口が悪いと言えるくらい変えた。
一人称と口調が変わったら、性別を迷われることも、間違われることも、なくなった。
ムカつくけど、ある意味あいつのお陰ではある。感謝はしないけど。
[前の方が良かった]とか、知るか。何落ち込んでんだ、って余計ムカついた記憶がある。
変わる前、母さんに事情を話すと、[そう。イメージチェンジするのね。いいんじゃない?私はどんな奏も好きよ]笑って、頷いてくれた。
今は、そうじゃない。
四日振りに起きた息子が、急に一人称と口調を変えてたら、驚いて当然だ。
だけど今更、戻せない。
見た目は幼児でも、精神は二十八歳なんだ。
可愛らしい言葉遣いなんてしたら、俺は間違いなく、恥ずかしくて死ぬ。
何とか、イメチェンできるよう、誤魔化さないと…。
「てれびで、おとこのひとがかっこよかったから、まねをするんだ」
我ながら苦しい言い訳だ!
母さんの背後にテレビが見えたから、出任せを言ってしまった。
「あら、そうなの。いいんじゃない?私はどんな奏も好きよ」
…あっさり騙されてくれた。
そうだよ、母さん、結構おっとりしてた。今思えば、育ちの良いお嬢様だから、のほほんとしているタイプだったな。
「格好良くなりたいなんて。奏はまだ三歳だけど、やっぱり男の子なのね」
勝手に納得してくれて、助かったけど。
…騙されやすそうだ。俺が気を付けないといけないな。
「……」
というより。
ちょっと待て。
目を疑う光景が飛び込んできて、若干混乱する。
説明してほしい。
その耳と尻尾、何?
母さんにそんな趣味あったっけ?
…いや、本当に、どういうことだ。どっちも動いてるぞ。
……仕方ない。嘘をつくのは申し訳ないけど、病気のせいで、記憶の一部が抜け落ちたことにしよう。
この世界は、六つの王国が同列の立場で集まり、その全ての国を統治する帝国、計七つの国で構成されている。
複数の王国を支配下に置く帝国は、王国よりも強大で、君主(皇帝)の支配力が強い。
帝国の政体は、帝王が絶対的な権力を持つ「絶対君主制」で、王国の政体は、憲法に基づいて国王が権力を行使できる「立憲君主制」。
絶対君主制は「帝王が全ての権力を握り、法律や議会の決定に縛られずに政治を行える国」
立憲君主制は「国王が議会に政治を任せ、自らは憲法が定めた国王としての仕事(外交など)を行う国」
国としての詳細は、それぞれの分野に特化した、王国。
学術都市、学問王国。
医術都市、医療王国。
機械都市、文明王国。
芸術都市、文化王国。
武術都市、武力王国。
娯楽都市、自由王国。
この順番で、王国が円形になるよう隣接し、その中心地で、六つの王国を合わせたよりも大きな地域が、帝国。
英知と栄華、防衛と襲来、最先端技術、全てを極めた、重要な帝都、神楽帝国。
そして最後に。
この世界に住まう全ての人間が、獣人である。
母さんは、三歳の俺でも理解できるように、もっと分かりやすく、長めに説明してくれたけど、簡潔にすると、こういうことだ。
異世界だな。
でも、もう一人の俺が言うには、この世界は並行世界(パラレルワールド)らしい。
魂が違っても、生きている人は同じ。
…もし、前世と同じ行動をしたら、今世も同じになる可能性が高い。
それなら、過去を変えれば、未来も変わるんじゃないか?
俺が普通の子供と同じように生活したら、母さんは死なない。
母さんが死ななければ、後々父さんに引き取られることもない。
父さんに引き取られなければ、お義母さんが死ぬことも、楓が狂うことも、ない。
折角のチャンスだ。人生をやり直して、二度と同じ失敗はしない!
…彼方には会いたいから、何とかしよう。それと、楓には絶対会わないようにしないと。
―二度目の人生が、今、始まる。
異世界の奏くん(三歳)は、本来なら、もう少し辿々しい話し方でしたが、精神世界で話し合ったので、流暢に話せていました。
魂は死んだけど、身体が生きている奏くん。
身体は死んだけど、魂が生きている奏。
需要と供給が一致し、奏は生き返りました。
偶然、いや必然ですが、二人は同時に死んだので、成り代わり(憑依?)が可能でした。
魂交換といった方が正しいですね。
どちらも現世に未練があったので、奇跡が起きました。
前世でウザ絡みしてきた男の子は、奏が初恋でした。
好きな子に意地悪しちゃう系の男子です。
ちなみに、奏は性別を超越した美貌の持ち主です。
超絶美人ですね。
母親似の華奢な体つきで、身長は173cm。色白で、肌がきめ細やかで、触り心地抜群。外見だけなら、顔以外は母に似た部分が多い(母は儚げで可憐な顔立ち)
…美人薄命。
楓は絶世の美男子。神々しい、超絶美形。
顔も体格も父親似で、181cmの細マッチョ。芸術の彫刻みたいな、均整のとれた体型。
奏と楓が歩いてたら、通行人は立ち止まったり、振り向いたり、写真や動画撮ったりします。
奏は声を掛けられる。無表情でも、まだ話しかけやすい。
楓はない。美し過ぎて、恐れ多く、近寄り難い。あと、超人気芸能人より有名な人(神楽家次期当主)なので、みんな声を掛ける勇気がない。畏敬の対象。
彼方は人畜無害そうな綺麗な優男。長身痩躯(痩躯に見えるだけ)
虫も殺したことがなさそうな顔をしてるけど、着痩せするタイプで、脱いだら凄い。細マッチョだけど、実用的な感じ。必要なところに必要な筋肉がある。
身長は183cm。
獣人大好きだけど、彼方と楓(特に楓)の動物に悩みました。
今はやっと決まったので、続きを頑張ります。
…内容も色んなパターンを考えたんですが、ちょっと「え?」という展開の方にしたいと思います。
彼方と楓以外にも、社を出したいです。
…本当は湊も出したかった…!でも、あの子、「武力王国」出身だから。
奏は「武力王国」には絶対行かないんだよ…。武術には興味がないから、行く必要も用事もない。
残念だけど、仕方ない。諦めます。
…ネーミングセンスがないことも諦めます。
題名も、人や動物、国の名前も、考えるの、全部苦手です。
ダサくても仕方がない…。
ちっちゃいことは、気にしなぁ~い☆(某芸人さん風)
あれ。小さいだっけ?小さなだっけ?
うろ覚えで忘れてしまった…。
まあいいや。気にしなぁ~い☆
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