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番外編(小ネタ、小話、小説)

彼方とゼロ『楓』※題名のみ変更

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今回は、ずっと前に書きたいと言っていた話です

『楓から見た彼方(ゼロ)のこと』です

裏社会に属する、全ての人間を恐怖に陥れた存在である、ゼロ

殺されることではなく、依頼された復讐の任務を遂行されることが恐ろしい

直接的にも間接的にもグロ描写はないですが、少しだけエグい(というほどでもないのかな?)ので、苦手な方は閲覧注意です(迷わずバックしてください)


奏は彼方を『(過保護過ぎて)モンペ(モンスターペアレント)かよ』そう呆れて、『(忠犬かつ)狂犬』と言ってますが、実際は『奏が思っている以上の猛獣(狂犬なんて可愛いものじゃない)』

懐いてる人間(奏)には従順なだけで、一部を除いて、他の人間は肉塊(物体)でしかない…そういう、野生の猛獣

『(不必要に)人を殺してはいけない』と理解している為、普段は大人しいですが、『奏に危害が及ぶなら、躊躇いなく牙を向く』


彼方のイメージが(良くも悪くも)大分変わる話で、『彼方は忠犬』『彼方は可愛い』『彼方はちょっと情けないのがいい』という人も、閲覧注意です

奏への態度は、嘘でも演技でもありませんが、人は多面的なので、奏が見ている(知っている)彼方と、敵に接する彼方と、彼方の過去であるゼロは、別なんです

彼方は、奏には忠犬であり、敵には猛獣であり、ゼロは、生き地獄、そういう存在です





三年振りに帰国して、本宅へ向かう。

上空から見ても、時の流れを感じられた。

(…兄さん…)

会いたい。

話したい。

触れたい。

幼い頃と違って、純粋な気持ちだけではないけれど、根本は変わらない。

(僕は兄さんを愛している)

寝ても覚めても、何処にいても、何をしていても、兄さんのことばかり、考えて、思っている…。

(…我ながら、狂気染みているな)

苦笑を禁じ得ない。

…でも、まだだ。

まだ、会えない。

約束の日まで、あと三年ある。

それに。

雪見家を出て以降、兄さんの居場所が掴めない。

恐らく、父さんとゼロ…いや、彼方が、情報操作と隠蔽工作をしているのだろう。

(…彼方、か)

あんな人殺しを、兄さんの護衛にだなんて、正気を疑うよ、父さん。


兄さんは知らない。

ゼロは、ただの殺し屋じゃないんだ。

復讐の依頼を受けて、依頼主の指示を完璧に熟(こな)した結果、筆舌に尽くし難い、凄惨な殺し方もしていたことを、兄さんは知らない…。

標的が、息をする価値もない、ゴミだったことは、確かだ。

因果応報だと言える。

でも、それとこれとは別だ。

自らの所業を後悔するどころか、生まれてきたことを呪う殺し方を、子供のゼロはした。出来てしまった。十歳、十二歳、一四歳、計三回。

きっと、今でも出来る。

これは憶測ではなく、事実だ。

だって、兄さんのお陰で心を得た後、一度だけとはいえ、出来たのだから。

心の有無は関係ないんだ。


僕が狂っているとしたら、彼方は壊れている。

…一度壊れたものは、元には戻らない。

綺麗になったとしても、必ず歪な部分がある。

隠れている、もしくは見えていないだけ。

人間も同じだ。

一度壊された彼方は、壊れたままだよ。

変わったように、見えても、感じても、思っても、それは変わらない。

本人が、ましてや周りが、変えられることではないから。


(…兄さんは、知らないんだよ)

兄さんにとって、愚直で忠実な彼方が、真実だ。

僕やゼロを知る人間にとって、冷酷で冷徹なゼロが、真実だ。

そして、復讐の依頼とはいえ、人を無惨な方法で嬲り殺したことが、嘘偽りなき事実だ。

(そんな人間が、兄さんの護衛だなんて、父さんは一体何を考えているんだろう)

いや、父さんの考え自体は正しい。

心情的には納得できないけれど。

…殺しのプロだから、経験が活かせる。

簡単なことだ。

敵を自分に置き換えるだけで済む。

相手の思考、行動パターン、手段、方法、位置、逃走ルート…その全てを予測し、阻むことができる彼方は、護衛として逸材だろう。

狙撃も可能だから、長距離の敵は、一人でも速やかに対応できる。

敵は生け捕りが基本だが、スナイパーの場合、被害が及ぶ前に始末することを、父さんは許可している。

可愛い兄さんに傷一つ付けたくないからね。

父さんは嫌いだけど、それには同意する。


(あいつらは愚かだった。…この世界では、馬鹿な奴は、すぐに死ぬ)

挑む相手を間違えたら、力を過信したら、死に直結すると、理解していない。

だから、『彼方』に惨殺された。

―猛獣が飼い慣らされて、牙を抜かれたらしい。子供の犬に成り下がっているそうだ。

裏社会でそんな噂が広がり、半信半疑な人間が多い中、分を弁えない愚か者が、兄さんに手を伸ばそうとした。

結果、彼方の逆鱗に触れ、凄絶な死を迎えた。

―猛獣は牙を抜かれたのではなく、愛しの飼い主には従順だった、という話だ。


ゼロは、裏社会で有名だった。

殺しの才能。何より、復讐の任務を遂行した後、ゼロが所属していた組織から、裏社会に生きる全ての組織へ届けられた、その映像。

死に慣れた人間が、いや、慣れている人間だからこそ、その、異常性に、残虐性に、恐れ、戦(おのの)いた。

特に、自らの所業に心当たりがある人間ほど、戦慄しただろう。

同じ目に遭わされるかもしれない、と。

ゼロの組織は、神楽に抗争を仕掛ける予定だった、らしい。

当時のことは解決済みで、僕が直接見たのは報告書と映像だから、らしい。

けれど、報告書も映像も、捏造ではなく、事実だ。

当時、裏社会中が震撼した。

それまでも、ターゲットを必ず殺すことから、死神、と呼ばれていたが、その日を境に、地獄や生き地獄に変わった。

『地獄が人の形をしたら、ゼロになる』とまで評されたくらいだ。

その彼方を、初めて怒らせた愚者は…原型を留めなかった、とだけ言っておこう。

惨(むご)たらしいよ。

流石の僕も、あの死に方は嫌だな。

まあ、そのお陰で、(色んな意味で)兄さんを狙う人間は皆無になったから、彼方としては計画通りなんだろう。

これに関しては、良い仕事をしたと思う。惨いけど。


(世界一危険な男の隣が、世界一安全なんて、矛盾しているな…)

実力を考えれば当然だけど、素直に頷けない。

(兄さんだけだよ。ゼロと一緒にいて、安心できる人間は)

知らないって、危険なことだ。

ただ、世の中には知らなくていいことや知ってはいけないことが、沢山ある。

兄さんにとって、『ゼロ』は、父さんが彼方に口止めしている以上、知らなくていいことに分類される。

兄さんには、何も知らないまま、健やかに生きていてほしい。

僕も、父さんも、多分彼方も、そう思っている。

(…だけど、兄さんが彼方を特別に思うなら)

いっそ、見せてしまいたい。

…失くなってしまえばいいんだ。

彼方への親愛も信頼も、彼方との未来も。

全部、滅茶苦茶になってしまえばいい。

そうなるほどのことを、ゼロも彼方もしたんだ。

(でも…。彼方を失ったら、兄さんは悲しむだろうな…)

…悲しむ兄さんは、もう見たくない。

(彼方も、父さんも、嫌いだ)

けど、今は、大人しくしよう。

何の道、どちらも始末する為には、足りないものが多過ぎる。

(…兄さんに早く会いたいな)

そうしたら、もっと我慢できるのに。





う、うーん(;´д`)

これは、折角書いたけど、消した方がいいかな…?

それとも、見たい人向けに、もう少し詳しく(ややグロ)掘り下げた方がいいだろうか…

いや、うーん…悩む…


書き足りない(補足したい)部分は幾つかありますが、それはまた今度にします

個人的には、『「思い」が「心」になる』の伏線(というほどでもないけど)回収ができて、ちょっと嬉しいです


でも、今回の話は、本当に、更新するのが怖かったです

今までも「これは更新しない方がいいかな…」と思う内容はありましたが、今日は断トツでした

悩み過ぎて、一日中考えました(なんて不毛な休日なんだ)


彼方(ゼロ)関連は、毎回ビクビクしてます

小説を更新するだけなのに、戦戦恐恐としている私は、小心者です

お気に入りが一気に減ったら泣くかもしれない…(自業自得)


お気に入り登録が、折角200超えしたので(現在206人)、何かしたいなぁ、とは思ってます

リクエストの受け付け…は、誰も望んでないですね(遠い目)

どうしようかな…


とりあえず、今は、楓と彼方の話を、さくっと書きたいです

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