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本編(小話)

昨日の花は今日の夢※加筆修正あり

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昨日の花は今日の夢…世の中の移り変わりが激しいことのたとえ



騒動の始まりは、愛が転校し、取り巻きという名の信者を生み出したこと

そうして、奏を気に入り、巻き込んだことが、事を大きくした

湊(書記)、碧(副会長。ただし碧は演技。三年前から奏に一途。取り巻きになっていたのは、愛や信者・親衛隊から、奏を守りたかっただけ。全員想像以上に暴走したので、失敗したが)、龍(愛の同室者)、会計(チャラ男。本来の性格は、子猫系男子)、会長(会長だけは愛に本気で恋をしていた。ただ、奏と話したことで、盲目状態から、やっと冷静になる。愛の為に色々した…事前に忠告したり、間違いを指摘したり…が、聞き入れられず、少しずつ嫌われてしまう。本人の為にしていることも迷惑がられ、嫌がられるようになり、だんだん疲れていく。しかし、ある日、愛に告白した。自分の心を知ってほしいし、愛を思うからこそ伝えていることに聞く耳を持ってほしかった。…残念ながら、愛にはっきりとフラれてしまう。その時、辛辣な言葉を投げ付けられ、かなり酷い失恋をした。その為、完全に心が離れる)

自分に好意的だった人間(美形)が、次々といなくなり、承認欲求や自己肯定、優越感、多幸感などが得られなくなった愛は、「奏が自分を好きにならないから」「奏が自分の邪魔をしている」「奏が全部悪い」と思い込む

不満と苛立ちが爆発した愛は、逆恨みと八つ当たりで、奏を階段から突き飛ばす

怪我すればいい、くらいの気持ちで(流石に殺そうとは思っていなかった)

しかし、その日は運悪く、響の誕生日だった為、奏は響の遺品である、要から贈られた婚約指輪を、ネックレスにして持ち歩いていた(婚約指輪だと知って、奏は要に返そうとしたが、要が「奏が持っていろ。お前に大事な相手が見付かったら、渡せばいい。…響はそうしてほしいと言っていた」と言われ、特別な日…響と要の誕生日・響の命日にだけ、持ち歩くことにしていた)

咄嗟に奏は指輪を庇った為、自分の防御が出来なかった(ネックレスがなければ、ちゃんと頭を守っていた)

頭から血を流し、意識のない、ぐったりとした奏を見て、怖くなり、慌てて逃げる愛

愛が逃げ去ったのと入れ違いで、見回り中の風紀委員が奏を発見し、連絡(救急車と先生・校医と風紀委員会)


病院で治療を受けた、次の日

…あたたかい…

微睡(まどろ)みながら、安心する温もりに、微笑む

この感じ…知ってる…

昔も、俺が目覚めるまで、こうして、手を握ってくれていたな…

少しずつ、意識が浮上していく

そろそろ起きないと。また、泣いてるかもしれない

もし泣いていたら、あの時みたいに、涙を拭ってあげよう

それから、もう一度言おう。「心配してくれて、ありがとう」と「不安にさせて、ごめん」って

目を覚ます瞬間、奏は相手を確かめるように、名前を呟く

「…かえで?」

瞼を開けると、自分の手を握り、固まる彼方がいた

「…ごめん、間違えた…。彼方、何でいるんだ?というより、ここは…?」

無言でナースコールを押し、端に避ける彼方

「…昨日坊っちゃんは階段から落ちて、病院に運び込まれました。保護者の僕に連絡がきたので、昨夜からお側で控えていました」

「こういう時に、義兄弟で正解だったと思う…って、階段…指輪はっ!?」

「坊っちゃんっ!絶対安静ですよ!動かないでください!」

「そんなことより、指輪は…母さんの遺品の、婚約指輪は、どこだ?!」

「ここにあります。大丈夫です、傷一つありませんよ」

「…そう、か…ああ、よかった…」

「…指輪は無傷で、坊っちゃんが重傷なのは、僕個人としては納得いきませんが」

「…悪い、心配させたな」

「…僕の寿命は確実に縮みました。坊っちゃんが眠っている間、僕は生きた心地がしなかったです」

「(暗に、二度と指輪を優先するな、って言ってるな…)…本当に悪かった。…犯人は?」

「やはり、背後から突き飛ばされたんですか…。未だに見付かっていない、と聞いています」

「そうか…」

「坊っちゃん、心当たりがおありのようですね。どこのどいつですか?僕の坊っちゃんを傷付けた癖に、のうのうと生きているゴミは。悪が蔓延(はびこ)ることは世の常ですが、ゴミはゴミ箱行きが当然ですよね?いえ、ゴミはどう扱っても許されますよね?許されるはずです。まあ、許されなくても構いませんが。坊っちゃん?何て言うゴミかご存知ですか?」

「…彼方、落ち着け(久しぶりに、彼方がブチギレてる…。瞳孔が開いて、早口で饒舌な時は、完全に頭に血が上っている状態だ)」

「落ち着いていますよ?どう処理するか、もう決めていますし、完全犯罪間違いなしです。あはは」

「…うん、本当に落ち着こうか、彼方(あ、これ、殺(や)る気だ。ブチギレても、そういうことに関しては、冷静だよな。知ってる)」

「…僕がするのは害虫退治ですよ?教えてくれませんか…?」

「…俺が売られた喧嘩を、保護者のお前が買っても、意味ないだろう。あいつとのことは、俺が終わらせる。手を出すな」

「……」

「彼方」

「……畏まりました」

「(セーフ!学園内の情報収集は禁止してて、良かった。もし、彼方が全部知ったら、俺が寝てる間に、どうなっていたことか…。ぞっとする)」


一週間後、念の為、精密検査を済ませ、退院した奏は、理事長室に向かう

※渋る彼方を、前日に帰宅させた。場合によっては、引っ越すことになるので、自分の分も含めて、早急に荷物を纏めてもらっている

あえて授業中を狙った。今までの経験上、高確率で愛がその場にいる(サボっている)ことを確信していた(狙い通り、理事長と愛はいた)

自分を正当化し、非を認めない愛を言い負かし、愛を庇う理事長は、既に小細工を弄していたが、汚い大人には論より証拠だと、これまでの様々な証拠を全て突き付け、弁明する理事長と愛を論破し、完全勝利した(愛は退学、理事長は懲戒免職、どちらも確定事項。二人を追放できるので、奏は満足)

一番の味方だった理事長が項垂れ、頭を抱える姿を見て、癇癪を起こした愛が、奏の胸倉を掴もうと、手を伸ばした時ー

「触るな」

凛とした声が響く

入り口から、ゆったりとした足取りで、しかし、愛だけでなく、周囲も威圧しながら、近付いてくる楓

「汚い手で、兄さんに触るな」

成長し、ますます美しくなった、神々しい美形が、無表情で脅かしてくるので、反射的に手を引っ込める愛

「楓…」

「ひっ」

楓の顔を見て、驚く奏と、小さな悲鳴を上げる理事長

「か、神楽様が、何故…っ!?兄さん?!」

「神楽様、違います!これは、何かの間違いで、」

慌てて釈明する理事長を、冷たく見下ろし、「黙れ」と告げる楓

「見苦しい。幾ら釈明したところで無意味なのだから、醜態を晒さないでくれませんか。兄さんが汚れてしまう」

「も、申し訳…」

「ああ、謝らなくていいですよ。謝っても許さないので」

「目障りです。下がらせてください」

楓は自身の護衛たちに、二人を別室…理事長室の奥の部屋に連れて行かせた(理事長は大人しかったが、愛は暴れた為、二人がかりで連行。護衛には、奏との話が終わるまで、二人を監視するよう、その場で待機を命じた)


「楓」

「兄さん」

奏が呼び掛けると、花が綻ぶように笑い、そっと抱き付いてくる楓

「兄さん、会いたかった…」

「俺も、だけど…」

「…父さんが情報操作して邪魔するから、なかなか見付けられなかったよ。兄さんも隠れんぼが上手だね。…彼方って、結構優秀なんだ」

「っ…お前、彼方に何かしたのか?」

「何もしていないよ。兄さんの可愛い犬だもの。…でも、躾がなっていないなら、今後のことは保証できないな」

「…まだ早いだろう。俺との約束を忘れたのか」

「一言一句覚えているよ。…だけど、約束を破ろうとしたのは、兄さんの方でしょう」

「俺は約束を破ってない」

「故意的じゃなくても、危なかったよ。打ち所が悪かったら、兄さんは死んでいた」

「それは…ごめん」

「謝らないで。…兄さんが無事で、本当に良かった。今は、それでいいんだよ」

「…うん」


「じゃあ、帰ろうか」

「え?」

「うん?どうしたの、兄さん」

「…帰る、って…どこに」

「僕と兄さんの家だよ」

「…俺は寮生だし、仮に帰るとしたら、マンションだ」

※現在、奏は雪見家を出て、セキュリティー万全のマンションで、彼方と二人暮らし

「ふふ。兄さん、まだ分からないの?それとも、分からないフリをしているの?」

「まさか…」

「僕は兄さんを迎えに来たんだよ。…あんなことがあったし、もう待ちきれなくて」

「いや、でも、楓…」

「兄さん。ここは通信でも卒業できるよ。兄さんだって知っているでしょう?」

「…そうだな」

「ここに拘(こだわ)る理由があるの?特に面白い授業も行事もない、閉鎖的なだけの場所だけど」

「……」

「それとも、ここにいる人に思い入れがあるの?」

「…思い入れって程じゃないけど…まあ、それなりに」

「…その人のこと、僕より、好き?大切なの?」

「楓以上に好きな人はいないし、大切な人もいない。それは変わらない」

「そうだよね。ここの人に僕が負けたなんて、微塵も思ってないよ。…ただ…彼方がいる」

「彼方?」

「兄さん、彼方のこと、大切だよね?」

「ああ」

「好きだよね?」

「ああ」

「…兄さんが、彼方には頼ったり、甘えたりしてるの、僕は知っているよ」

「…ずっと一緒にいるし。一応俺の保護者だからな」

「…それだけ?」

「ん?」

「…ずっと一緒にいて、心を預けている人…信頼しているから、他の人には絶対しないことを、彼方にはするの?」

「…何が言いたいんだ?」

「…兄さんは、僕より、彼方が大事かもしれないね」

「は…?…いや、別に、そんなこと…」

「…ない、って断言しないんだ。いや、断言できないのかな」

「…楓…?」

「兄さんの帰る場所は、僕がいるところでしょう。どうして、彼方が居場所みたいに言うんだろう。兄さんが好きなのも、大切に思うのも、僕が一番じゃないの?」

「楓が一番だ。でも…」

「でも、彼方も大事?…そんなの嫌だよ。許さない」

「彼方だけが特別に大事なわけじゃない。楓と同じくらい、父さんも大事だ。…俺が誰を大切に思うかも、向ける気持ちも、俺の自由だ。お前が許す許さないは関係ない」

「…それもそうだね。ごめん。兄さんの気持ちは、兄さんだけのものだ。…僕の気持ちを、誰も否定できないように」

「……」

「兄さん、僕と一緒に来てくれるよね?少し早いけれど、約束を果たしてほしい」

「…父さんは何か言っていたか?」

「…兄さんの好きにしろ、とだけ。兄さんが僕を拒絶しても、許容しても、あの人は容認するみたいだ」

「…そうか」





長いので、一旦区切ります

…命拾いしたな、全員(制裁に関わっていた人間も、龍も)

彼方が忠犬で、命令違反しないタイプだったから、良かったものの…(「危ない時は、彼方を頼る」と約束した、奏を信じているので、何とか我慢した)


これで、奏が死んでたら、狂犬どころか、復讐の鬼と化す。確実に、学園内は血祭り(文字通り)

要も楓も参加するので、地獄か、この世の終わりみたいな、惨状になる

…主人公補正があって、良かった!(震え声)


可愛い天使(外見も内面も)が、闇墜ちして、成長した結果が、これ(ヤンデレ)だよ!

神楽の次期当主として、表だけではなく、裏にも若干染まってるから、危険な男になってます(根は優しいんだけど…)


小学生(低学年)の一歳差は大きいですよね(奏は四月二日で、楓は三月三十一日。早生まれと遅生まれ)

昔は、自分より背が低くて、色々可愛かった弟が、とんでもない美形になった(身長も体格も負けて、男として、兄として、少しだけ悔しい)

超絶美人の兄と、超絶美形の弟(と父)

…神楽家は、超絶美形、もしくは超美形しかいないので、当然ですが…(奥方も)

「顔面偏差値高っ!逆に怖い!いや、目の保養だけど!でも、目が潰れそう!」と、凛が騒ぎそうです



これだけは言いたい

奏、他の男の名前を呼ぶなんて、残酷ぅ!

彼方は、ショックだよ!(色んな意味で)

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