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――ルカは夕食を終えた後、自分の部屋に戻って、ベッドに入った。寝転がりながら、自分がすることが全くないことに気づいた。落第し、剣士育成学校から追い出された自分は無職同然の、落ちこぼれでしかなかった。

「これじゃ、穀潰しもいいところだな」

 自分の勉強机の上に飾ってある一枚の写真立てが目に入った。そこに入れられた写真は亡き父と幼き日の自分がキャッチボールをしている風景を写していた。父は自分と違って、優秀な剣士だった。巧みな剣さばきが特徴的な人だったと、ときどき故人を偲ぶために我が家を訪れる父と同期の剣士が言っていた。

《君の未来を切り開く薬だ……》

 シュエンという男の言っていた声が耳の奥で響いた。魔法も使えず、剣士にもなれないことが確定した自分の未来なんて、生産者ぐらいしかない。生産者だって立派な仕事がたくさんあるけれど、そのどれもが国の経済のために捧げられて、けっして戦争と交わることはない。父の敵はとれない……

「……戦争には、剣士と魔導師しか行けないんだ」

《君の天職は魔法使い、つまり魔導師だ》

 耳の奥でずっと、シュエンの声が響いていた。いてもたってもいられなくて、ルカは階段を急いで下りていって、一階でくつろいでいた母に新聞はどこかと聞いた。母はローテーブルの下に置いてあった新聞をルカに渡した。

 ルカは食卓の上に新聞を広げ、そして見つけた。新聞の隅に書かれてある一つの広告には、魔力適性検査の定期検診とあり、再検査の者は有料で20ギルかかるとされている。定期検診は朝と夜にそれぞれ二時間ほどを予定されていて、半年に一回実施されている。

「……っ!」

 半年に一度が、まさに今日だった。夜の七時から九時までの間、隣町の役所の前で一般市民向けに実施されているらしかった。時計に目をやると、七時五十分。ギリギリ間に合うタイミングだった。

「母さんっ! 僕、ちょっと外出てくる!」
「はぁ? こんな時間からどこに行くって……ちょっと、こら、ルカ! 待ちなさい!」

 ルカは財布の入った鞄を手に取ると、すぐに家を出た。そこからは懸命に走った。時刻表通りに来ない怠慢な電車を待つよりは、隣町までなら走った方が早いと思ったからだ。

「はぁっ――はぁっ――はっ」

 二日連続の猛ダッシュだった。普通の人間なら、翌日に筋肉痛などで足の動きが鈍っていまいそうなものだが、これまで中等部から高等部二年のなかばまで剣士育成学校でしごかれていたルカの体力は、連日のダッシュにいちおう耐えられるくらいには鍛えられていた。

「……はぁっ、見えた! すみませlんっっ!」

 役所の前には小さな人だかりがあった。しかしギリギリだったために、検査を受けている者の友人や家族がたむろする程度で、そこまで混んではいない。役所の前の時計台の針は午後八時五十八分を指していた。

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