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探検気分の男

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 下りていった先でガーゴイルの群れにトンカチを軽く振ると、トンカチ型の巨大な薄黄色の霊気の塊が上空から出現して、ギィギィ鳴いていたガーゴイルに直撃。一瞬で押しつぶれた。

すると雑木林の向こうからガーゴイルを飼っていた原住民のパーチャ族(人型だが鼻と頭が奇形で、手足の爪が鋭利)がよだれを垂らしながら怒り狂って飛び出してきた。

「ギェエエ!」

結構早い。俺はすかさず援護した。

「【セッティング・ショット】!」

 帯剣していたのが幸いして、この高速術式が使えた。鞘から聖剣をわずかに引き出して、そのかすかな隙間から霊気の弾丸を飛ばし、パーチャ族の頭を的確に打ち抜いた。これはオリビア直伝の技で、個人指導してもらっているときに練習していたものだった。

「おーっ、そんなのあるんだ、ほえー」
「上々の滑り出しと言ってくれ」

 俺たちの任務はゲリラ戦にて平地および森林地帯の敵を殲滅したのちに島の古代遺跡内部に潜入して、魔法結晶「フライングストーン」を回収すること。

「さぁ、行こうか」
「おう」

 平原から森林へ向かう道中、小さなゴブリンやら名称不明の怪鳥に遭遇し、珍しい生き物がいればカイは捕獲用キット(内部に巨大空間を有する虫かごのようなもの)にぶち込んで、完全に戦闘任務のことを忘れていた。

「空島ってのは、やっぱり良いもんだなぁ。生態系が変ちくりんだ」
「森に探検気分だな、カイは」

 そのままてってけてってけ突き進んでいると、古代遺跡の入り口が見えてきた。ああ嫌だ、おっさんの脳裏にはデジャブが、茶色の背の高いロボットが見える……っ。

「……あー、これたぶんめっちゃトラップあるパターンだなぁ」
「そうなのか」
「うん、ちょっとニンフ飛ばして試してみよう。えい」

 光のニンフがふわふわと宙を舞いながら入り口の暗い奥へと進んでいった。俺たちは入り口の手前で待っていた。すると、しばらくして、

《――バゴーンっ! カランカランっ、きゅいいいんんっ、ドンガラガッシャーン!》

 物が落下したり、金属音がしたり、内部でどえらい騒ぎになっていた。

「ほら、言わんこっちゃない」
「確かに」

 俺たちがあとから入り口に入っていくと、お決まりの骸骨が定期的に見つかり、つい最近発射されたであろう毒矢の残骸がたくさん散らばっていて、男の子的にはどきどきわくわくの様相を呈していた。

「うおおっ、……空の宝箱だ。はっ、なんだこのバカでかいカッターはっ」
「さっき、きゅいいいんんとかほざいてたのこれだな。刃が荒っぽくて、そうとう古いぞ。これで何人も殺されているなぁ、血痕がたくさんついてる」
「えっ、どこ」
「ほら、上の方に、べっとりと」
「うっ、……見なければ良かった」
「空島はうちの領土がフライングストーンで空に浮いちゃっただけだから、魔法王国の土地なんだよな。だったら動力はたぶん魔力なんだけどさ、なんでエネルギーが枯渇しないんだろうな」
「あ、それはこの前学科で教わったぞ、フライングストーンは別名、永久浮遊物質だ。魔法結晶には違いないけど、浮力に関しては自然の意思が宿っているとか言って教官が口ごもってたな。たぶん研究段階で詳しいことは言えないんだろう」
「霊力かな?」
「さぁ? でも自然エネルギーが絡んでるのは納得できる。空島にしかない物質は、やはり土地に由来する部分がある。エネルギーが枯渇しないのは、雲に覆われると雨がたくさん降るし、魔獣が食っちゃ寝できるくらい土地に栄養素の循環機構があるからだと思う」
「うーん、自然エネルギーかぁ、特殊鉱物はややこしいなぁ」
「海にも火山にもあったからな、空にもあるよ」
「ふーん、あ、帰ってきた」

 ニンフがカイの元に帰還して、索敵報告をする。言語ではなくイメージで伝えるため、俺にはどのような意思疎通が図られているのか分からない。カイはふむふむと言いながらうなずいた。

「あのな、この先に動かないロボットがたくさんあるらしい」

 俺は開いた口がふさがらなくなった。顎が外れるかと思うくらい驚いて、カイは笑った。

「おいっ、急に変顔はやめろって、アハハハハっ、イケメンが台無しじゃないかっ!」
「そ、そそそ、それって茶色かった?」
「あー、どうかな、ほこりかぶっててよく分かんないや」

 カイの頭の中にニンフから送られてきたスクリーンショットのごとき数枚の写真にはしっかりロボットが映り込んでいるらしい。もうダメ、絶対ム○カいるって、バ○スか? 最後はやっぱりバ○スなのか? どうなんだ、え?
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