上 下
27 / 201
水の庭『アクアガーデン』

条件

しおりを挟む
「うむ! 貴様が『ゆうづきりん』とやらか! 余は待っていたのだぞ!」

 連れられた先の王の玉座に座っていたのは、まだ年端もいかないであろう少女だ。とても満足そうな顔をして座っている。

「悪いな 俺はこの国を治めてる人に会いに来たんだ おままごとは後でな」

「バッバカ!! 此の方がそのお方だぞ!」

「え?」

 何を言っているのだろう、シオンは冗談が好きだったのか。流石にそれはないだろう。

「冗談が言いたいならもっとマシなのを頼むぞシオン」

「うむ斬首か? お主は斬首がお望みか?」

「この子は随分と口が悪いようだが……ここのお姫様か何かか?」

「だからここの王妃だと言っているだろ!」

「……本当に?」

 無言でシオンが頷く、恐る恐る玉座の方向に目をやるとだいぶお怒りのお子様がいらっしゃった。

 謝らなければ首が飛びそうだった。

「とんだご無礼を王妃様」

「遅いわたわけぇ!」

 遅かった、怒りは頂点に達していた。

 怒ってる姿はどう見ても子供なのだが、これでこの国の王だと言うのだから未だに信じられない。

「なんじゃなんじゃ! せっかく余がカッコよく決めたのに台無しにしおって! 斬首じゃぞ!? この国の民なら問答無用で斬首にしておったところだぞ!」

「流石は王妃! 余所者への寛大な態度には感服致しました!」

「むぅ……? そうか?」

「はい! 流石は我らがアクアガーデンの王妃『ピヴワ』様であられる!」

「そうじゃろそうじゃろ! もっと余を褒めることを許すぞ!」

「ありがたき幸せ」

「チョロいなあの王妃」

 シオンの咄嗟の機転でこの窮地を脱することができた。理由はわからないが、あの少女が王妃だと言うのならそれを前提に話を進めるしかない。

「それで王妃 我々が聖剣使いだというのは信じてくださったのですか?」

「うむ信じるぞ その顔は紛れもなく『あの男』の顔じゃな そっくりであるぞ?」

「へ~アンタ最初の聖剣使いに会ったことがあるんだな」

「口を慎め赤髪!」

「もうよいシオン この者たちが無礼であるのは既にわかっておる」

「しかし……」

「このバカはお構いなく進めてやってください王妃 後でしっかり教えときますんで」

「おいなんでチビルに保護者面されなきゃなんねえんだよ!」

「黙ってろレイ」

「わかりました!」

「こっちもチョロいなおい」

「話を続けてよいかお主ら?」

 なかなか話の進まないせいで少しお怒り気味の王妃を再び宥めるシオン、王妃の見た目のせいもあってその姿はまるで保護者そのものだった。

 流石にこちらも話を進めたい、早くここにある賢者の石を貰わなくてはならない。

「それで? おぬしらここの賢者の石『アクアシュバリエ』がお目当てなのじゃろ?」

「はい その通りです」

「じゃがあの石はこのアクアガーデンにとって大切な秘宝じゃ……おいそれと簡単に渡せる代物ではないぞ」

「ではそれに見合う何かがあれば渡せると?」

「そうは言うがそんな代物おぬしら持っておらぬのだろう?」

 その通りだった。少し前まで文無しだと気付いたばかりだ、逆立ちしたって無理な話だ。

「そこでじゃ おぬしらに折り入って頼みごとをしようと思ってな」

「頼みごと?」

「そうじゃ なにぶんこの国にはほとんど女子おなごばかりでのう 労働力を欲しておる」

「つまり働けと」

「ぶっちゃけそうじゃ!」

 ぶっちゃけられた。

 この国は女尊男卑というより男女比率が違うのだろう、だから男が出稼ぎするしかないのだ。

「おぬしの持っておる賢者の石があれば難しくはないぞ!」

「内容にもよりますよ どんな内容なんです?」

「簡単じゃ この辺りを騒がせておる『電気泥棒』を捕まえて欲しいのだ」

「電気泥棒? 発電所でも襲われたんですか?」

「電気泥棒じゃ 『電気そのもの』を盗む奴じゃ」

 なんだかややこしくなってきた、物ではなく電気を盗む泥棒。そんなことは普通ならできないがこの世界ならありなのだろう。

「何か情報はないんですか? 闇雲に探しても見つけられませんよ」

「それについてならさっきよいことを思いついたぞ! 連れて行けシオン」

「わかりました では案内しよう」

 言われて連れられた場所は『牢屋』だったのだ。

「まだ現れないか?」

 ここまでが牢屋に入れられた経緯。

 別に引っ捕らえられたわけではないのだが、おそらく気分を害した腹いせも多分含まれている。

 牢屋の中で待機しているとシオンが現れた。妙に笑顔なのがなんだか腹ただしい。

「どうもシオンさん 囚人にご用で?」

「まあそう言わないで お前達は街中での発砲という罪をここで一日大人しくしてもらう 牢に電流を流しておけば電気泥棒は現れる まさに一石二鳥じゃない」

「とか言ってリンが子供扱いしたことの腹いせもあるんじゃねえのか?」

「まあ十中八九そうでしょうけど」

「俺のせいかよ……」

「今国中の電力のほとんどを城にまわしてる なら一番電力の強い城の中に入ってくるはず」

「そう簡単に城に入れるもんかなあ ねえ兄貴?」

「それは同感だな 城の警備をかいくぐって入れるとはとてもじゃないが思えん」

「ただの泥棒ならね」

「なに?」

「電気泥棒を別の警備団が見つけたの でも逃げられた」

「どんくせえな そんなにすばしっこい奴なのか?」

「いいえ 警備団は全員病院送りにされたの 今でも目を覚ましてない人もいるわ」

「マジかよ!?」

「それでアニキに!?」

「……」

 聞く限りでその強さは間違いなく只者ではないのだろう。今まで出会った奴ら以上の実力か。

「それじゃ何かあったら呼んで ご飯のおかわりとか持ってきてあげるから」

「そりゃどうも 牢屋の中の食事は格別でしたよ」

「捕まえたらもっといいもの食べられるんだから頑張ってねえ」

 シオンが出ていくためにドアへと向かう。

 が、それより先にドアは勢いよく吹き飛ばされた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

『収納』は異世界最強です 正直すまんかったと思ってる

農民ヤズ―
ファンタジー
「ようこそおいでくださいました。勇者さま」 そんな言葉から始まった異世界召喚。 呼び出された他の勇者は複数の<スキル>を持っているはずなのに俺は収納スキル一つだけ!? そんなふざけた事になったうえ俺たちを呼び出した国はなんだか色々とヤバそう! このままじゃ俺は殺されてしまう。そうなる前にこの国から逃げ出さないといけない。 勇者なら全員が使える収納スキルのみしか使うことのできない勇者の出来損ないと呼ばれた男が収納スキルで無双して世界を旅する物語(予定 私のメンタルは金魚掬いのポイと同じ脆さなので感想を送っていただける際は語調が強くないと嬉しく思います。 ただそれでも初心者故、度々間違えることがあるとは思いますので感想にて教えていただけるとありがたいです。 他にも今後の進展や投稿済みの箇所でこうしたほうがいいと思われた方がいらっしゃったら感想にて待ってます。 なお、書籍化に伴い内容の齟齬がありますがご了承ください。

最強の職業は解体屋です! ゴミだと思っていたエクストラスキル『解体』が実は超有能でした

服田 晃和
ファンタジー
旧題:最強の職業は『解体屋』です!〜ゴミスキルだと思ってたエクストラスキル『解体』が実は最強のスキルでした〜 大学を卒業後建築会社に就職した普通の男。しかし待っていたのは設計や現場監督なんてカッコいい職業ではなく「解体作業」だった。来る日も来る日も使わなくなった廃ビルや、人が居なくなった廃屋を解体する日々。そんなある日いつものように廃屋を解体していた男は、大量のゴミに押しつぶされてしまい突然の死を迎える。  目が覚めるとそこには自称神様の金髪美少女が立っていた。その神様からは自分の世界に戻り輪廻転生を繰り返すか、できれば剣と魔法の世界に転生して欲しいとお願いされた俺。だったら、せめてサービスしてくれないとな。それと『魔法』は絶対に使えるようにしてくれよ!なんたってファンタジーの世界なんだから!  そうして俺が転生した世界は『職業』が全ての世界。それなのに俺の職業はよく分からない『解体屋』だって?貴族の子に生まれたのに、『魔導士』じゃなきゃ追放らしい。優秀な兄は勿論『魔導士』だってさ。  まぁでもそんな俺にだって、魔法が使えるんだ!えっ?神様の不手際で魔法が使えない?嘘だろ?家族に見放され悲しい人生が待っていると思った矢先。まさかの魔法も剣も極められる最強のチート職業でした!!  魔法を使えると思って転生したのに魔法を使う為にはモンスター討伐が必須!まずはスライムから行ってみよう!そんな男の楽しい冒険ファンタジー!

異世界転生雑学無双譚 〜転生したのにスキルとか貰えなかったのですが〜

芍薬甘草湯
ファンタジー
エドガーはマルディア王国王都の五爵家の三男坊。幼い頃から神童天才と評されていたが七歳で前世の知識に目覚め、図書館に引き篭もる事に。 そして時は流れて十二歳になったエドガー。祝福の儀にてスキルを得られなかったエドガーは流刑者の村へ追放となるのだった。 【カクヨムにも投稿してます】

アイテムボックス無双 ~何でも収納! 奥義・首狩りアイテムボックス!~

明治サブ🍆スニーカー大賞【金賞】受賞作家
ファンタジー
※大・大・大どんでん返し回まで投稿済です!! 『第1回 次世代ファンタジーカップ ~最強「進化系ざまぁ」決定戦!』投稿作品。  無限収納機能を持つ『マジックバッグ』が巷にあふれる街で、収納魔法【アイテムボックス】しか使えない主人公・クリスは冒険者たちから無能扱いされ続け、ついに100パーティー目から追放されてしまう。  破れかぶれになって単騎で魔物討伐に向かい、あわや死にかけたところに謎の美しき旅の魔女が現れ、クリスに告げる。 「【アイテムボックス】は最強の魔法なんだよ。儂が使い方を教えてやろう」 【アイテムボックス】で魔物の首を、家屋を、オークの集落を丸ごと収納!? 【アイテムボックス】で道を作り、川を作り、街を作る!? ただの収納魔法と侮るなかれ。知覚できるものなら疫病だろうが敵の軍勢だろうが何だって除去する超能力! 主人公・クリスの成り上がりと「進化系ざまぁ」展開、そして最後に待ち受ける極上のどんでん返しを、とくとご覧あれ! 随所に散りばめられた大小さまざまな伏線を、あなたは見抜けるか!?

転生したら脳筋魔法使い男爵の子供だった。見渡す限り荒野の領地でスローライフを目指します。

克全
ファンタジー
「第3回次世代ファンタジーカップ」参加作。面白いと感じましたらお気に入り登録と感想をくださると作者の励みになります! 辺境も辺境、水一滴手に入れるのも大変なマクネイア男爵家生まれた待望の男子には、誰にも言えない秘密があった。それは前世の記憶がある事だった。姉四人に続いてようやく生まれた嫡男フェルディナンドは、この世界の常識だった『魔法の才能は遺伝しない』を覆す存在だった。だが、五〇年戦争で大活躍したマクネイア男爵インマヌエルは、敵対していた旧教徒から怨敵扱いされ、味方だった新教徒達からも畏れられ、炎竜が砂漠にしてしまったと言う伝説がある地に押し込められたいた。そんな父親達を救うべく、前世の知識と魔法を駆使するのだった。

【完結】ご都合主義で生きてます。-商売の力で世界を変える。カスタマイズ可能なストレージで世の中を変えていく-

ジェルミ
ファンタジー
28歳でこの世を去った佐藤は、異世界の女神により転移を誘われる。 その条件として女神に『面白楽しく生活でき、苦労をせずお金を稼いで生きていくスキルがほしい』と無理難題を言うのだった。 困った女神が授けたのは、想像した事を実現できる創生魔法だった。 この味気ない世界を、創生魔法とカスタマイズ可能なストレージを使い、美味しくなる調味料や料理を作り世界を変えて行く。 はい、ご注文は? 調味料、それとも武器ですか? カスタマイズ可能なストレージで世の中を変えていく。 村を開拓し仲間を集め国を巻き込む産業を起こす。 いずれは世界へ通じる道を繋げるために。 ※本作はカクヨム様にも掲載しております。

勇者召喚に巻き込まれ、異世界転移・貰えたスキルも鑑定だけ・・・・だけど、何かあるはず!

よっしぃ
ファンタジー
9月11日、12日、ファンタジー部門2位達成中です! 僕はもうすぐ25歳になる常山 順平 24歳。 つねやま  じゅんぺいと読む。 何処にでもいる普通のサラリーマン。 仕事帰りの電車で、吊革に捕まりうつらうつらしていると・・・・ 突然気分が悪くなり、倒れそうになる。 周りを見ると、周りの人々もどんどん倒れている。明らかな異常事態。 何が起こったか分からないまま、気を失う。 気が付けば電車ではなく、どこかの建物。 周りにも人が倒れている。 僕と同じようなリーマンから、数人の女子高生や男子学生、仕事帰りの若い女性や、定年近いおっさんとか。 気が付けば誰かがしゃべってる。 どうやらよくある勇者召喚とやらが行われ、たまたま僕は異世界転移に巻き込まれたようだ。 そして・・・・帰るには、魔王を倒してもらう必要がある・・・・と。 想定外の人数がやって来たらしく、渡すギフト・・・・スキルらしいけど、それも数が限られていて、勇者として召喚した人以外、つまり巻き込まれて転移したその他大勢は、1人1つのギフト?スキルを。あとは支度金と装備一式を渡されるらしい。 どうしても無理な人は、戻ってきたら面倒を見ると。 一方的だが、日本に戻るには、勇者が魔王を倒すしかなく、それを待つのもよし、自ら勇者に協力するもよし・・・・ ですが、ここで問題が。 スキルやギフトにはそれぞれランク、格、強さがバラバラで・・・・ より良いスキルは早い者勝ち。 我も我もと群がる人々。 そんな中突き飛ばされて倒れる1人の女性が。 僕はその女性を助け・・・同じように突き飛ばされ、またもや気を失う。 気が付けば2人だけになっていて・・・・ スキルも2つしか残っていない。 一つは鑑定。 もう一つは家事全般。 両方とも微妙だ・・・・ 彼女の名は才村 友郁 さいむら ゆか。 23歳。 今年社会人になりたて。 取り残された2人が、すったもんだで生き残り、最終的には成り上がるお話。

公爵家次男はちょっと変わりモノ? ~ここは乙女ゲームの世界だから、デブなら婚約破棄されると思っていました~

松原 透
ファンタジー
異世界に転生した俺は、婚約破棄をされるため誰も成し得なかったデブに進化する。 なぜそんな事になったのか……目が覚めると、ローバン公爵家次男のアレスという少年の姿に変わっていた。 生まれ変わったことで、異世界を満喫していた俺は冒険者に憧れる。訓練中に、魔獣に襲われていたミーアを助けることになったが……。 しかし俺は、失敗をしてしまう。責任を取らされる形で、ミーアを婚約者として迎え入れることになった。その婚約者に奇妙な違和感を感じていた。 二人である場所へと行ったことで、この異世界が乙女ゲームだったことを理解した。 婚約破棄されるためのデブとなり、陰ながらミーアを守るため奮闘する日々が始まる……はずだった。 カクヨム様 小説家になろう様でも掲載してます。

処理中です...