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Chapetr2
102 レティシアとラストミステリー
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日の光で目を覚ます。
覚醒していく意識。
そして、やってしまった……、この感覚。
そう、私は去年に引き続き、冬前の寒い時期に屋外で寝落ちするという恐ろしいことをしてしまったのだ。
「朝だ……」
目の前の畑はなくなっちゃったけど、見下ろす景色は変わらない。薄明かりに包まれていた星都の街並みが、海の方から順番に白く輝いていく。
牛達のお世話をしながら毎日見ていた景色。変わらないんだけど変わってしまった。
私はあくびをして、涙をシャツで拭いた。
バスにはシャワー室が付いていたから、使わせてもらう。一晩で驚くほど冷えた身体に、熱いお湯が痛い。
やっぱり変な体勢でいたから、よく眠れなかったんだろう。シャワー中にとてつもない眠気が襲ってきた。体を適当に拭いて、毛布にくるまって……。
「レティシア~!」
「うぇ!?」
ソフィアの大声で飛び起きた。
「何であんた……男ども!入ってくるな~!」
「ソフィア、うるさいよ……」
「何で裸で寝てるのよ!床で!」
ん?
「シャワー中にめちゃくちゃ眠くなって、なんとか毛布は手に入れたんだけど、そのあとの記憶がない。つまりベッドまでたどり着けずに寝たってわけだよ」
ソフィアが引っ張り起こしてくれる。
「うわ~身体めっちゃ冷えてるよ。もういっぺん暖まっておいで」
「面倒……」
「皆で朝ご飯行くんだから、整えなきゃだめだよ」
めんどう……。結局何時間眠れたのやら。
朝食はレーナの宿だ。
「どうだった?」
「いや~泣いたね!」
「そうか」
優しいな。偽物のマリーに違いない。
「戻ってきたら切り替えられるかと思ってたけど、簡単じゃないね」
「そうだね」
色々聞かれるかと思ってたけど、こういうのが今は楽だ。
「今日はどうすんの?私と一緒にウジウジする?」
「レティシア、そういう言い方しなくていいよ?色々考えちゃうのは当たり前」
まだまだ私は落ち込みたいけど、皆は別に付き合ってくれなくてもいいんだよね。天気もいいし、どこか遊びに行っても……。
「ありがとう。でもこの町、観光名所があんまりないからね?」
「レティシア、まだ町なんて言ってるの?もう間違いなく村を通り越して集落規模よ?結構出て行っちゃったから。観光地だった牧場も閉めちゃったし」
幼なじみの裏切り!というか、そうなの!?村でもない……?
「レーナ。今日時間あるなら、二人の行ってた学校とか見せてもらえないかな?」
「案内は構わないけど、学校もう無いし」
「大丈夫なの?この村。星都のワインは?」
「まあ、何とかね。……そうだなぁ、牛が落ちる池とか?丘の上に湧く謎の池とか?あと池と言えば……」
「池?」
村ランク外ショックから立ち直り、気がつくと池巡りの途中だった。確かにもう池ぐらいしかない。
「水無し池……」
「レティシア、気がついた?そうだよ、水無し池だよ」
「それって池かなぁ……」
懐疑的な都会っ子達のために、私達は池の伝説を語る。
「この池はね、数年に一度、特別な満月の夜にだけ水が溜まるの」
「その時に願いをかけると、成就する」
「「と言われておる……」」
「何故長老風……」
長老がそう言ってたから、再現。
私達、長老が大好きだから?
そんなことやってるから、昼間なのに池が光り出した。まるで池に水が満たされているかのようだ。
そりゃそうだ、あいつがこのシチュエーションを逃すはずがない。
「レティシア!ペンダントも光ってるよ!」
「そうですよね~」
「あ、水が……」
池に満ちた光が集まり、上に昇っていく。大きな光の塊がまるで水みたいにポワンポワンして、その姿を変えていく。やがて光の玉は中華の龍に似た形になると、やはり私のペンダントに吸い込まれていった。
「あっ」
忘れてた、力をかなり持って行かれるんだった。私が打たれて崩れ落ちたように見えたのだろう。女の子たちは青ざめた顔をしてる。
「あ~大丈夫だから……どこもやられてない」
これから説明すると頭をやられたと思われるんだろうな。まだちょっと立てないからしゃがみ込んだままだけど。
「このペンダントは月から貰ったもので、この周りの四つの石に今みたいにドラゴンを封じ込めていくの。これには、炎龍が入ってて、今入ったのは……これか」
「皆が言ってたのはこのことか……」
「ちなみに私以外が付けるといやな気分になるらしい。ジャーヴィ」
「俺?」
そりゃあんたかソフィアに決まってる。
こんな怪しいものでも、私から渡されたら嬉しいでしょう?
「……なんだこれ?俺の全てを否定しようとしてくる?」
さすが軍人さん。精神力は乙女達より遙かにあるみたいだったけど、気分はよくないみたい。
ジャーヴィからペンダントを返して貰う。この瞬間はとても嬉しそうな感情がペンダントから返ってくるんだけどね。
「よいしょ……アレ?だめだ」
いつまでも地べたに座っていても仕方ないから、立ち上がろうと思ったけど力が入らない。私が手を伸ばすとジャーヴィはすぐに理解して引っ張ってくれた。
「よくわかったね」
「いつでもチャンスを狙ってるからな!」
そこはさり気なくだろう?
「さ、不思議体験もしたし、次いこうか」
「次って言っても……あ?レティシア」
次はとっておきの隠れ池だ。皆を引き連れて進もうとしたけれど、私の右足は次の一歩を踏み出してくれなかった。暗くなる視界。
こんなのばっかりだ。
目を覚ますと、バスの中。動いているみたいだから、もう帰りなんだろう。クリスやレーナとはきっちりお別れできなかった。
「起きた?」
「ソフィア」
「まだ疲れてるんだよ。横になっておきなよ」
「……そうさせてもらう」
「朝も裸でバスの通路に倒れてるしさ、もう無理しないのよ?」
「ナニソレ、聞いてない」
「マリーが騒ぐから、言ってないし」
「そんな大事なこと……!」
「ほら。そうそう、クリスとレーナ。二人にはまた来るよって言っておいたから」
「ああ、ありがとう」
また、か。
そうだねまた来れたら良いと思う。
「レティシア、また来るよね?もっと暖かいときとか」
「そうだね……春過ぎると花が咲くんだよ。その時期がまた大変で……」
「皆で行くよ?約束だからね?」
「そうだね……」
覚醒していく意識。
そして、やってしまった……、この感覚。
そう、私は去年に引き続き、冬前の寒い時期に屋外で寝落ちするという恐ろしいことをしてしまったのだ。
「朝だ……」
目の前の畑はなくなっちゃったけど、見下ろす景色は変わらない。薄明かりに包まれていた星都の街並みが、海の方から順番に白く輝いていく。
牛達のお世話をしながら毎日見ていた景色。変わらないんだけど変わってしまった。
私はあくびをして、涙をシャツで拭いた。
バスにはシャワー室が付いていたから、使わせてもらう。一晩で驚くほど冷えた身体に、熱いお湯が痛い。
やっぱり変な体勢でいたから、よく眠れなかったんだろう。シャワー中にとてつもない眠気が襲ってきた。体を適当に拭いて、毛布にくるまって……。
「レティシア~!」
「うぇ!?」
ソフィアの大声で飛び起きた。
「何であんた……男ども!入ってくるな~!」
「ソフィア、うるさいよ……」
「何で裸で寝てるのよ!床で!」
ん?
「シャワー中にめちゃくちゃ眠くなって、なんとか毛布は手に入れたんだけど、そのあとの記憶がない。つまりベッドまでたどり着けずに寝たってわけだよ」
ソフィアが引っ張り起こしてくれる。
「うわ~身体めっちゃ冷えてるよ。もういっぺん暖まっておいで」
「面倒……」
「皆で朝ご飯行くんだから、整えなきゃだめだよ」
めんどう……。結局何時間眠れたのやら。
朝食はレーナの宿だ。
「どうだった?」
「いや~泣いたね!」
「そうか」
優しいな。偽物のマリーに違いない。
「戻ってきたら切り替えられるかと思ってたけど、簡単じゃないね」
「そうだね」
色々聞かれるかと思ってたけど、こういうのが今は楽だ。
「今日はどうすんの?私と一緒にウジウジする?」
「レティシア、そういう言い方しなくていいよ?色々考えちゃうのは当たり前」
まだまだ私は落ち込みたいけど、皆は別に付き合ってくれなくてもいいんだよね。天気もいいし、どこか遊びに行っても……。
「ありがとう。でもこの町、観光名所があんまりないからね?」
「レティシア、まだ町なんて言ってるの?もう間違いなく村を通り越して集落規模よ?結構出て行っちゃったから。観光地だった牧場も閉めちゃったし」
幼なじみの裏切り!というか、そうなの!?村でもない……?
「レーナ。今日時間あるなら、二人の行ってた学校とか見せてもらえないかな?」
「案内は構わないけど、学校もう無いし」
「大丈夫なの?この村。星都のワインは?」
「まあ、何とかね。……そうだなぁ、牛が落ちる池とか?丘の上に湧く謎の池とか?あと池と言えば……」
「池?」
村ランク外ショックから立ち直り、気がつくと池巡りの途中だった。確かにもう池ぐらいしかない。
「水無し池……」
「レティシア、気がついた?そうだよ、水無し池だよ」
「それって池かなぁ……」
懐疑的な都会っ子達のために、私達は池の伝説を語る。
「この池はね、数年に一度、特別な満月の夜にだけ水が溜まるの」
「その時に願いをかけると、成就する」
「「と言われておる……」」
「何故長老風……」
長老がそう言ってたから、再現。
私達、長老が大好きだから?
そんなことやってるから、昼間なのに池が光り出した。まるで池に水が満たされているかのようだ。
そりゃそうだ、あいつがこのシチュエーションを逃すはずがない。
「レティシア!ペンダントも光ってるよ!」
「そうですよね~」
「あ、水が……」
池に満ちた光が集まり、上に昇っていく。大きな光の塊がまるで水みたいにポワンポワンして、その姿を変えていく。やがて光の玉は中華の龍に似た形になると、やはり私のペンダントに吸い込まれていった。
「あっ」
忘れてた、力をかなり持って行かれるんだった。私が打たれて崩れ落ちたように見えたのだろう。女の子たちは青ざめた顔をしてる。
「あ~大丈夫だから……どこもやられてない」
これから説明すると頭をやられたと思われるんだろうな。まだちょっと立てないからしゃがみ込んだままだけど。
「このペンダントは月から貰ったもので、この周りの四つの石に今みたいにドラゴンを封じ込めていくの。これには、炎龍が入ってて、今入ったのは……これか」
「皆が言ってたのはこのことか……」
「ちなみに私以外が付けるといやな気分になるらしい。ジャーヴィ」
「俺?」
そりゃあんたかソフィアに決まってる。
こんな怪しいものでも、私から渡されたら嬉しいでしょう?
「……なんだこれ?俺の全てを否定しようとしてくる?」
さすが軍人さん。精神力は乙女達より遙かにあるみたいだったけど、気分はよくないみたい。
ジャーヴィからペンダントを返して貰う。この瞬間はとても嬉しそうな感情がペンダントから返ってくるんだけどね。
「よいしょ……アレ?だめだ」
いつまでも地べたに座っていても仕方ないから、立ち上がろうと思ったけど力が入らない。私が手を伸ばすとジャーヴィはすぐに理解して引っ張ってくれた。
「よくわかったね」
「いつでもチャンスを狙ってるからな!」
そこはさり気なくだろう?
「さ、不思議体験もしたし、次いこうか」
「次って言っても……あ?レティシア」
次はとっておきの隠れ池だ。皆を引き連れて進もうとしたけれど、私の右足は次の一歩を踏み出してくれなかった。暗くなる視界。
こんなのばっかりだ。
目を覚ますと、バスの中。動いているみたいだから、もう帰りなんだろう。クリスやレーナとはきっちりお別れできなかった。
「起きた?」
「ソフィア」
「まだ疲れてるんだよ。横になっておきなよ」
「……そうさせてもらう」
「朝も裸でバスの通路に倒れてるしさ、もう無理しないのよ?」
「ナニソレ、聞いてない」
「マリーが騒ぐから、言ってないし」
「そんな大事なこと……!」
「ほら。そうそう、クリスとレーナ。二人にはまた来るよって言っておいたから」
「ああ、ありがとう」
また、か。
そうだねまた来れたら良いと思う。
「レティシア、また来るよね?もっと暖かいときとか」
「そうだね……春過ぎると花が咲くんだよ。その時期がまた大変で……」
「皆で行くよ?約束だからね?」
「そうだね……」
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