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Chapetr2
059 レティシアとシンデレラまであと5分(6/20)
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この街にもかなり慣れた。
最近は知り合いが増えたこともあって、誰かと食事をとることが多くなった。でも私の、徘徊者としての矜持は一人でいることだろう。まあ、今日は誰も捕まらなかったということなの。
一昨年まではよく来ていた裏路地のワインバーで、夕方からいい感じで飲んでいた。
店の外のテーブルに座って、裏路地でもそこそこいる酔っぱらいのナンパを「乾杯!」でかわして、マスターの作るオリーブオイル煮込みをつまむ。
常連さんに挨拶をすると、「久しぶり!」とグラス一杯もらえたりね。
赤と白の瓶はどっちもあとグラス一杯ずつかな?結構追加でもらったから、3本くらいか。
ちょっとやりすぎた。さすがにこれを干したら帰ろう。
やけ酒というわけではないのだけど、色々納得いかないこともある。
昨日はアカリさんの運送屋さん以外の姿を見たわけだ。今は違うけど軍人さんで、あんな格好してるってことはいつ戻ってもおかしくないってことで、レベッカは可愛くて、アカリさんは現役の頃はかなりモテていたらしいじゃない?結局どうなったかは、彼女はいたかとかはレベッカが移動になったからわからないとか。
そんなことより、昨日は二人、2メートル以内にいたのに、一言もお話ししていないということが!納得いかないの!
やけ酒なんて、一番もったいない飲み方なんだけど仕方ないじゃない?
「おじさま、新しいの持ってきて!赤ね、赤いの。それとハムとチーズ、分厚くして!え?瓶だよ」
マリーたちが好きそうな、無口で渋いマスターのおじさまは、にこりともせずオーダーした品を持ってきてくれた。……いい飲み方じゃないのは判ってるよぅ。
もう夜もいい時間。夕方は少し寂しかった裏路地も、バーやレストランのお客でずいぶん賑やかになった。私はそういうのをぼんやり眺めているのが好きだ。お話も振られれば付き合うが、基本は静かに飲みたい。
飲みすぎたかな?視界が滲んでくるのが止められない。
一人でぐすぐす泣いていると、目の前に水が入ったグラスが差し出された。
「なに……?」
「レティシアさん?どうしたの?」
「ちょっとね、自分が情けなくてね、たまには泣いておこうかと思って」
「あるよね、そういう日って。何とかするのは簡単だったのにって、あとで思うとすごく悔しいんだよ」
「あるよね~」
「でも今夜は少し飲みすぎだ。帰ろう?」
「うん」
グラスのお水を飲み干して、立ち上がる。おっと、足に来てる。差し出された腕にしがみつくと、マスターに礼を言う。
気が付くと家の玄関前。
「ほら~、着いたよレティシアさん」
「あ、ありがと……アカリさん!?」
どうなってるんだ?
アカリさんは玄関に入るまで肩を貸してくれた。
「しっかり目を覚まして、それから寝るんだよ……って、おかしいけど」
「あの……」
私は何を言おうとした?引き留める?引き留めてどうする。
「……お休み」
アカリさんはそういって、やっぱりあっさりと帰ってしまった。
時計はあと5分で日が変わる時刻を指していた。
最近は知り合いが増えたこともあって、誰かと食事をとることが多くなった。でも私の、徘徊者としての矜持は一人でいることだろう。まあ、今日は誰も捕まらなかったということなの。
一昨年まではよく来ていた裏路地のワインバーで、夕方からいい感じで飲んでいた。
店の外のテーブルに座って、裏路地でもそこそこいる酔っぱらいのナンパを「乾杯!」でかわして、マスターの作るオリーブオイル煮込みをつまむ。
常連さんに挨拶をすると、「久しぶり!」とグラス一杯もらえたりね。
赤と白の瓶はどっちもあとグラス一杯ずつかな?結構追加でもらったから、3本くらいか。
ちょっとやりすぎた。さすがにこれを干したら帰ろう。
やけ酒というわけではないのだけど、色々納得いかないこともある。
昨日はアカリさんの運送屋さん以外の姿を見たわけだ。今は違うけど軍人さんで、あんな格好してるってことはいつ戻ってもおかしくないってことで、レベッカは可愛くて、アカリさんは現役の頃はかなりモテていたらしいじゃない?結局どうなったかは、彼女はいたかとかはレベッカが移動になったからわからないとか。
そんなことより、昨日は二人、2メートル以内にいたのに、一言もお話ししていないということが!納得いかないの!
やけ酒なんて、一番もったいない飲み方なんだけど仕方ないじゃない?
「おじさま、新しいの持ってきて!赤ね、赤いの。それとハムとチーズ、分厚くして!え?瓶だよ」
マリーたちが好きそうな、無口で渋いマスターのおじさまは、にこりともせずオーダーした品を持ってきてくれた。……いい飲み方じゃないのは判ってるよぅ。
もう夜もいい時間。夕方は少し寂しかった裏路地も、バーやレストランのお客でずいぶん賑やかになった。私はそういうのをぼんやり眺めているのが好きだ。お話も振られれば付き合うが、基本は静かに飲みたい。
飲みすぎたかな?視界が滲んでくるのが止められない。
一人でぐすぐす泣いていると、目の前に水が入ったグラスが差し出された。
「なに……?」
「レティシアさん?どうしたの?」
「ちょっとね、自分が情けなくてね、たまには泣いておこうかと思って」
「あるよね、そういう日って。何とかするのは簡単だったのにって、あとで思うとすごく悔しいんだよ」
「あるよね~」
「でも今夜は少し飲みすぎだ。帰ろう?」
「うん」
グラスのお水を飲み干して、立ち上がる。おっと、足に来てる。差し出された腕にしがみつくと、マスターに礼を言う。
気が付くと家の玄関前。
「ほら~、着いたよレティシアさん」
「あ、ありがと……アカリさん!?」
どうなってるんだ?
アカリさんは玄関に入るまで肩を貸してくれた。
「しっかり目を覚まして、それから寝るんだよ……って、おかしいけど」
「あの……」
私は何を言おうとした?引き留める?引き留めてどうする。
「……お休み」
アカリさんはそういって、やっぱりあっさりと帰ってしまった。
時計はあと5分で日が変わる時刻を指していた。
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