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Chapetr2
056 レティシアと魔境グリーンヒルズ!(4/20)
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「アカリさん、叫ぶと近所迷惑ですよ?」
アカリさんが空に向かって叫んでいるのを見かけた。
今日は別にドラゴンチャレンジをしていたわけではない。なんとなくグリーンヒルズをぶらぶらしていただけ。
服装も、散歩の延長みたいにラフな感じで。何着ても可愛いんだけどね。でも日射対策に帽子はかぶっている。
スパークリングの白のレモン割りを飲みながら徘徊しているのです。
まあ、住民からしたら迷惑だよね。
で、私よりももっと迷惑な人を見つけた。
「そんなこと言ったって……」
よっぽど余裕がないのか、誰が声をかけたなんて気にせず、答えてから振り返る。
「レティシア……さん?」
そんな嬉しそうな顔しないでよ。
出逢えてうれしいこと、向こうもそう思ってくれていること。
「そうですよ。レティシアですよ、アカリさん」
名前を呼ばれて呼んで、少し照れて、手に持ったレモネードを飲む。……酸っぱい。
「……アカリさんはお仕事ですか?」
そりゃそうだ。我ながら間抜けな質問だけど、昼間からぶらぶらしている人もいないわけではないのだし。
「うん、ちょっと配達にね」
「なる程、理解しました」
簡単な推理だ。住人でも3日間迷うというこの魔境、宇宙の人らしいアカリさんが初見で攻略できるほど甘くはない。
「グリーンヒルズは初めてですね!アカリさん」
「ん?そうなんだ。区画番号がわかりにくくてね、つい叫んじゃった」
「ふふ……貴方は運が良いよ、アカリさん。サントルの徘徊グルメと言われる、レティシアに会えたのですから!……アカリさん」
「徘徊グルメ?それって誉められてないんじゃない?でなんか、名前入れ過ぎじゃない?」
「栄誉ある二つ名だよ!……名前は……呼びたいから呼んでるの、アカリさん……」
再びストローでチューと飲む。
「ああ、なんだその、いくらでも呼んでくれて良いけどさ、徘徊グルメのレティシアさん」
「今その二つ名要らない!」
なんてこと言うの、この人は!レモネードが気管に入った。
「難しいな……」
ごめんなさい、自分でも思います。
「それで?僕の運が良いとは?」
「私、このあたり分かるから、案内してあげるよ」
実は、今日この辺りで彼が困っているんじゃないかという、恐ろしくピンポイントな予感がしてやってきたのが本当のところ。だから、ラフな服装に見えてもしっかりおしゃれ着なのだ。彼がそれに気づくかは重要ではない、ことはない。
「それじゃ、素敵な自由人に仕事を手伝ってもらおうかな」
「えっ、す、素敵ですか!」
私の評価は美人か可愛いか。素敵って、これはお世辞も入っての評価なんだろうけど。
「やっぱり大人は余裕で返してくるな……素敵だって」
「君も十分大人な女性でしょ?」
「少女です!」
なんということを言うの、この人は!乙女の独り言は聞き流すものよ?
アカリさんは二輪車だ。私に合わせて押して歩いてくれる。
私は地図も見ずに、五六区画へのルートを脳裏に思い描く。ドラゴンチャレンジの練習で、この町の地図は完璧に覚えているのだ。曲がる目印の区画番号も完璧だ。なのにチャレンジには失敗し続けている、なぜだ?
アカリさんと逢うのはこれで4回目。なのに昔から知っているような気がしてならない。でないとこんなに自然にお話しすることなんてできないはずなんだ。
積極的過ぎやしないか?この服だって、無防備過ぎないだろうか?レモネードは実は白ワインベースだってバレてるんじゃないだろうか?そう考えると、とんでもなく恥ずかしくなってくる。
「ホントだ、五六に着いた」
「じゃあ、お仕事がんばって下さいね。アカリさん」
「お礼に何か……」
「ふふ、それはまた今度お願いします」
もうだめ、これが精いっぱい。
一刻も早くアカリさんの前から消えなきゃ。
アカリさんが空に向かって叫んでいるのを見かけた。
今日は別にドラゴンチャレンジをしていたわけではない。なんとなくグリーンヒルズをぶらぶらしていただけ。
服装も、散歩の延長みたいにラフな感じで。何着ても可愛いんだけどね。でも日射対策に帽子はかぶっている。
スパークリングの白のレモン割りを飲みながら徘徊しているのです。
まあ、住民からしたら迷惑だよね。
で、私よりももっと迷惑な人を見つけた。
「そんなこと言ったって……」
よっぽど余裕がないのか、誰が声をかけたなんて気にせず、答えてから振り返る。
「レティシア……さん?」
そんな嬉しそうな顔しないでよ。
出逢えてうれしいこと、向こうもそう思ってくれていること。
「そうですよ。レティシアですよ、アカリさん」
名前を呼ばれて呼んで、少し照れて、手に持ったレモネードを飲む。……酸っぱい。
「……アカリさんはお仕事ですか?」
そりゃそうだ。我ながら間抜けな質問だけど、昼間からぶらぶらしている人もいないわけではないのだし。
「うん、ちょっと配達にね」
「なる程、理解しました」
簡単な推理だ。住人でも3日間迷うというこの魔境、宇宙の人らしいアカリさんが初見で攻略できるほど甘くはない。
「グリーンヒルズは初めてですね!アカリさん」
「ん?そうなんだ。区画番号がわかりにくくてね、つい叫んじゃった」
「ふふ……貴方は運が良いよ、アカリさん。サントルの徘徊グルメと言われる、レティシアに会えたのですから!……アカリさん」
「徘徊グルメ?それって誉められてないんじゃない?でなんか、名前入れ過ぎじゃない?」
「栄誉ある二つ名だよ!……名前は……呼びたいから呼んでるの、アカリさん……」
再びストローでチューと飲む。
「ああ、なんだその、いくらでも呼んでくれて良いけどさ、徘徊グルメのレティシアさん」
「今その二つ名要らない!」
なんてこと言うの、この人は!レモネードが気管に入った。
「難しいな……」
ごめんなさい、自分でも思います。
「それで?僕の運が良いとは?」
「私、このあたり分かるから、案内してあげるよ」
実は、今日この辺りで彼が困っているんじゃないかという、恐ろしくピンポイントな予感がしてやってきたのが本当のところ。だから、ラフな服装に見えてもしっかりおしゃれ着なのだ。彼がそれに気づくかは重要ではない、ことはない。
「それじゃ、素敵な自由人に仕事を手伝ってもらおうかな」
「えっ、す、素敵ですか!」
私の評価は美人か可愛いか。素敵って、これはお世辞も入っての評価なんだろうけど。
「やっぱり大人は余裕で返してくるな……素敵だって」
「君も十分大人な女性でしょ?」
「少女です!」
なんということを言うの、この人は!乙女の独り言は聞き流すものよ?
アカリさんは二輪車だ。私に合わせて押して歩いてくれる。
私は地図も見ずに、五六区画へのルートを脳裏に思い描く。ドラゴンチャレンジの練習で、この町の地図は完璧に覚えているのだ。曲がる目印の区画番号も完璧だ。なのにチャレンジには失敗し続けている、なぜだ?
アカリさんと逢うのはこれで4回目。なのに昔から知っているような気がしてならない。でないとこんなに自然にお話しすることなんてできないはずなんだ。
積極的過ぎやしないか?この服だって、無防備過ぎないだろうか?レモネードは実は白ワインベースだってバレてるんじゃないだろうか?そう考えると、とんでもなく恥ずかしくなってくる。
「ホントだ、五六に着いた」
「じゃあ、お仕事がんばって下さいね。アカリさん」
「お礼に何か……」
「ふふ、それはまた今度お願いします」
もうだめ、これが精いっぱい。
一刻も早くアカリさんの前から消えなきゃ。
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