裏銀河のレティシア

SHINJIRO_G

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Chapetr1

035 レティシアと食欲の秋、未遂

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 秋は何をするにも良い季節だと言われている。
 他の星や街よりも季節のメリハリが少ない星都でもやっぱりそうだと思う。秋は冷えたビールも温かいラム入りコーヒーもどちらも美味しいのだ。
 たとえ季節感のあまりないと言われるオムライスであっても。
 いつだって美味しいそのお店のオムライスを食べに昨夜からその口になっていたというのに、私は給仕をしていた。
「レティシア、三番テーブルあがったよ」
「はい、おじさま」
 そんな、お手伝いがいるほど殺人的な客入りではない。ただ、おばさまの体調が悪いのだ。明日の分のお手伝いは確保したらしいけど、急な今日のお手伝いがいない。
 朝一で開店を待っていた私を見つけたのだという。
 もちろんなにかとお世話になってるし、断るつもりは全くない。ただ、私のこのオムライス欲の行き場はどうすればいい?
 制服はシンプルな給仕服。濃いベージュのワンピースでスカート丈は膝下やや長め。夏だから袖は肘上、つまり半袖だ。エプロンは腰から下いわゆるギャルソンエプロンだ。キャップタイプの帽子を被ると、完成。

 三番テーブルのお客様は、
「お待たせしました~。ハンバーグセットです!」
 まだ朝なのにフルスロットルで攻めるな!ソースはあれよ、焦げ茶のデミグラス。基本を押さえた欲張りさんだ。めっちゃ美味しそう。

「一番あがったよ」
「お待たせしました~。フレンチトーストです!」
 まあ、朝だもんね。
 好物ではあるけど、オムの口である今、私に訴えかける力は弱い。

「お待たせしました~。チーズインオムライスです!」
 来た!チーズの名前はよくわからないけど、むっちゃ伸びるヤツ。ソースはクリームですと!?
 どうして私のじゃないんだろう。

 まあ、注文も私が取ってるから何頼んだかは分かるんたけど、実物には心が揺さぶられる。
 どうして私のじゃないんだろう!

 お昼に近づくと、ハンバーグ率が高くなってきた。ハンバーグというのは、知っていると思いますが、肉なんです。レティシアは肉食なのです。
 おじさま、給仕とバトルして買った方が食べることが出来るって、どうでしょう?勝負方法?拳ですよ。
 叔父さんにレティシアが変なコトしないように見ていてといわれている?そうなんですね。
 
「お客様、写真撮影は禁止です。データの削除もお願いしますね」
 まあ出てくるよね、勝手に写真撮る人。
 おっとモデル事務所の社長だった。
 駄目に決まっているよ。完全に契約外。新しい契約?いつも嫌だって言ってるよね?
 お客様お一人お帰りですよ!

 昼が過ぎ、客足が途絶えてまさに昼過ぎ。
「レティシア、お疲れさま。お腹すいただろう。遅くなったけどお昼にしよう」
 やっと、やっとオムライス!……?
「疲れた時は肉が一番。実はね、今日も焼きながら、肉と鉄板の調子がすごく良いと感じていてね」
 疲れていないですよ?レティシアはお肉も好きですが。
 思い出しておじさま、私本当はオムライス食べに来たお客だったのよ!
「今度店で出そうと思っているソースも試してみて。自信作なんだ」
 お料理のことを無邪気に語るおじさま。少年のようで可愛いのだけど、オム……。
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