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第八章 文化祭
第83話 それは最初の一枚となった
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雪愛も春陽と同じ気持ちだった。
春陽との写真を撮りたいという美優の願いを叶えたい。
それはとても素敵なことだと思うから。
この教室で撮れたら一番いいのだが、身内だからとやってしまえば他の客に示しがつかない。
どこかちゃんと記念になるようなところで撮れないだろうか。
春陽と雪愛がそれぞれ考えていると、雪愛が何かを思いつき、室内にある時計を確認した。
「……ねえ、春陽くん。昨日私達が行ったフォトスポットはどう?」
「っ!?……ああ、そうか。そこなら……、でも――—」
春陽は今撮ろうとばかり考えていたためその発想がなかった。
けれど、それだと今から撮ることができない、そう春陽は思ったのだが。
「でしょ?もう少しすれば私達の休憩時間だし」
雪愛が視線を時計に遣る。
これは美優が事前に雪愛から春陽達の時間割を聞いていて、それに合わせて来てくれたからこそ可能なアイデアだった。
「確かに」
春陽も雪愛の視線を追い時計に目を向け、完全に納得した。
この店で客が過ごすおおよその滞在時間が経過すれば自分達は休憩時間に入る。
「何?どこかいいところがあるの?」
春陽と雪愛のやり取りを聞いていた美優から質問がされる。
見に来てほしいと伝言を貰ってもいたのでちょうどいいと考え、春陽は美優達に説明する。
美優達もそんなところがあるならぜひ、と同意してくれた。
こうして、春陽と雪愛の休憩時間までコスプレ喫茶を満喫した美優達と一緒に五人で教室を後にし、一同は春陽達が昨日行ったフォトスポットへと向かうのだった。
五人が出て行った後の店内では、クラスメイト達が春陽と雪愛が家族ぐるみの付き合いをしていることに驚き、一時ざわついていた。
フォトスポットは大人気のようで列ができていたが、一組当たりそれほど時間はかからないのか人の流れはスムーズだった。
これならそれほど待たずに中に入れそうだ。
待っている間のこと、沙織が春陽に話を振った。
「ねえ、春陽君。今度家に遊びに来てくれるんでしょう?私今から楽しみで楽しみで」
「ちょっと母さん、春陽くんにそんな絡まないで」
「……はい。お邪魔させていただきたいと思います」
沙織の言葉にすかさず雪愛が言葉を返すのが少し可笑しくて春陽の口元に笑みが浮かぶが、しっかりと沙織に返事をした。
「邪魔だなんてとんでもない。雪愛はもちろん、私も大歓迎だから。ね?雪愛」
「っ、それはもちろんそうだけど……」
「ありがとうございます……」
お家デートの帰り、雪愛に提案されてから中々予定が合わなかったが、先日、雪愛の家に遊びに行く日がようやく決まったのだ。
その日はもう間もなくだ。
そんな風に雑談をしていたらあっという間に自分達が入室する番が来た。
室内に入ると、一同はすぐに目についた。
昨日撮られた春陽と雪愛のツーショット写真。
写真の中で二人は寄り添い幸せそうに笑っている
それが大きく拡大されて、見本として飾られていた。
春陽と雪愛が揃って恥ずかしそうにしている。
まさかこんなに目立つように飾られているなんて。
そんな二人を美優達は微笑ましそうに見ている。
「二人は本当にお似合いだね」
「ハルも雪愛ちゃんも素敵よ」
「本当に。雪愛も春陽君もいい顔してるわ」
そしてすごくいい写真だと二人に感想を言うのだった。
美優達の言葉に春陽と雪愛は余計恥ずかしくなってしまい頭が下がってしまった。
すると、昨日の女子の先輩が近寄ってきた。
「二人とも!来てくれたんだね。昨日はモデルを引き受けてくれて本当にありがとう。どう?素敵な写真でしょう?」
「……はい。そうですね」
「……ありがとうございます」
春陽と雪愛は羞恥からそれ以上言葉が出てこなかった。
二人の写真のおかげでいい場所があると噂が広がり、今日はすごい人が来てくれているとあらためてお礼を言われたりした後、春陽がもう一度撮らせてもらおうと思って来たことを伝えるとその先輩はとても嬉しそうだった。
「ゆっくり撮っていって。撮影係が必要ならいつでも声かけてね」
フォトスポットというだけあって、この教室内には六つのセットが用意されている。
昨日春陽達が撮ったのはその中の一つだ。
今日は他の五つで写真を撮ることになった。
撮影したものはスマホのアプリで五人全員が共有するつもりだ。
それぞれのセットで次のように写真を撮っていった。
まずは、美優と春陽。
撮影後、美優はスマホの写真を眺めながら頬が緩んでいた。
春陽との写真が本当に嬉しいのだろう。
次に、沙織と雪愛の母娘が撮り、その後、春陽を真ん中にして、美優と麻理の三人が撮った。
この二枚はそれぞれの家族写真と言っていいだろう。
さらには、美優と春陽と雪愛。
春陽と雪愛が並んで座り、美優がその後ろに立ち、二人の肩を抱き寄せている。
美優は春陽ともう一度話す機会をくれた雪愛に本当に感謝しているのだ。
話を聞けば聞くほど今の自分と春陽の関係があるのは雪愛のおかげだと思えて仕方がなかった。
そして春陽と雪愛のことを心から祝福している。
そんな想いが表情に溢れていた。
最後に、麻理と沙織を含めた五人全員での写真を撮ることにした。
撮影係にお願いして、皆でセットに向かう。
美優、春陽、雪愛の順に座り、その後ろに麻理、沙織が立つ。
過去にどのようなことがあったとしても、この時ばかりは誰もが一点の曇りもない笑みを浮かべていた。
春陽、雪愛、美優、麻理、沙織、この五人が揃った写真。
このときのものがその最初の一枚となるのだが、これから先、五人で写る写真は数えきれないほど増えていくことになるのだった。
撮影を終えた五人は教室を後にする。
「ありがとう。今日の写真大切にする」
美優はスマホを胸に抱き、嬉しさを噛みしめるように言う。
「喜んでもらえたならよかった。俺も大切にする」
春陽は口元に笑みを浮かべて言葉を返すのだった。
そんな二人のやり取りを三人は優しく見守っていた。
「この後はどうしますか?どこか行きたいところとか見たいところとかありますか?」
あれば案内するつもりで雪愛が全体に向けて訊く。
春陽も同じ思いなのか、三人に目を向ける。
「私はもう大満足かな。麻理さんと沙織さんはどこかありますか?」
「私も満足よ。ハルと雪愛ちゃんのクラスに遊びに行けたし、記念写真も撮れたしね」
「ええ、私も。すごく楽しかったわ。来ることにして本当によかった」
「ふふっ、皆こう言ってることだし、雪愛ちゃん達の折角の休憩時間を全部使っちゃうのも悪いからね。私達のことはもういいから二人で文化祭を楽しんでいらっしゃい」
麻理の言葉に美優と沙織も頷く。
こうして、春陽と雪愛は美優、麻理、沙織の三人と別れ、二人で文化祭を回ることになり、屋台をいくつか巡った後、休憩時間の終わりまで体育館に行ってライブを楽しんだ。
一方、春陽達と別れた三人は、このまま解散というのも寂しいと学校を出て、麻理の提案でフェリーチェへと向かい、貸し切り状態の店内で麻理の作ってくれた飲み物や食べ物をいただきながらお喋りを楽しんだ。
ちなみに、話題の大半は春陽と雪愛に関することだった。
内容的に時々しんみりしてしまうことはあったが、三人の仲が深まったのは間違いなかった。
その後もコスプレ喫茶は盛況で、準備していたものがすべて売り切れてしまったため、終了時刻よりも少し早く閉店となった。
「コスプレ喫茶は大盛況のうちに終わりました!この後は片付け、そして後夜祭とありますが、文化祭終了までは自由に過ごしてください!みんなお疲れさまでしたー!」
葵が皆に告げると教室内はやり切った高揚感で、クラスメイト達の大歓声が上がったのだった。
それからは互いにこの二日間のことを労ったり、ジュースを買って飲みながら、文化祭そしてこれからある後夜祭の話に花を咲かせたり、写真を撮ったりと皆好きなように文化祭終了までの時間を楽しんだ。
それは春陽や雪愛も例外ではない。
悠介達と瑞穂達を交えて皆で写真を撮ったり、文化祭の話をしたりして盛り上がった。
その中で、文化祭の話をする上でこれは外せないと、春陽は皆から改めてこの文化祭で変わったその姿について次々に感想を言われたり理由を聞かれたりして狼狽えていたが、そんな春陽の様子に皆は笑うのだった。
文化祭の終わりが校内放送で宣言され、皆で教室内の片付けを終えると、生徒達はグラウンドへと向かった。
グラウンドにはすでに多くの生徒が集まっていた。
中心には井桁型に何段も薪が組まれている。
文化祭終了後、文化祭実行委員と教員によって組まれたものだ。
全校生徒が揃い、全校集会のときのようにクラス単位で集まるように指示が出され、いつもクラスが並ぶ場所の辺りに生徒達が移動する。
ただし綺麗に整列をする訳ではない。
クラス単位で一纏まりになってもらうためだ。
後夜祭を始める前に、文化祭実行委員から各学年の優秀賞と全学年合わせた最優秀賞が発表される。
盛況だったクラスはどこも自分達が選ばれるのではないかとざわざわしている。
春陽達のクラスもそれは同じだった。
あれだけ人気だったのだからもしかしたら最優秀賞かもしれないと話している者もいる。
まず、一年の優秀賞が発表され、大きな拍手が起こり、そのクラスの生徒達が歓声を上げる。
以降も拍手は発表の度に沸き起こった。
そして二年の優秀賞の発表。
ここで春陽達のクラスが呼ばれた。
最優秀賞ではなかったことを残念がる者もいたが、皆優秀賞を取れて手を取り合ったり、肩を組んだりして喜び合っている。
三年は春陽達も行ったフォトスポットが優秀賞、そして最優秀賞は同じく三年で、田島のクラスのお化け屋敷だった。
一般公開の今日、一番行列ができており、大人気だったそうだ。
これには春陽と雪愛も思わず顔を見合わせ笑みを浮かべてしまう。
あれだけ凝っていたし、雪愛にとっては本当に怖かったから最優秀賞というのも納得だ。
各賞が発表された後、いよいよ文化祭実行委員から後夜祭の始まりが宣言され、キャンプファイヤーに火が付けられた。
春陽との写真を撮りたいという美優の願いを叶えたい。
それはとても素敵なことだと思うから。
この教室で撮れたら一番いいのだが、身内だからとやってしまえば他の客に示しがつかない。
どこかちゃんと記念になるようなところで撮れないだろうか。
春陽と雪愛がそれぞれ考えていると、雪愛が何かを思いつき、室内にある時計を確認した。
「……ねえ、春陽くん。昨日私達が行ったフォトスポットはどう?」
「っ!?……ああ、そうか。そこなら……、でも――—」
春陽は今撮ろうとばかり考えていたためその発想がなかった。
けれど、それだと今から撮ることができない、そう春陽は思ったのだが。
「でしょ?もう少しすれば私達の休憩時間だし」
雪愛が視線を時計に遣る。
これは美優が事前に雪愛から春陽達の時間割を聞いていて、それに合わせて来てくれたからこそ可能なアイデアだった。
「確かに」
春陽も雪愛の視線を追い時計に目を向け、完全に納得した。
この店で客が過ごすおおよその滞在時間が経過すれば自分達は休憩時間に入る。
「何?どこかいいところがあるの?」
春陽と雪愛のやり取りを聞いていた美優から質問がされる。
見に来てほしいと伝言を貰ってもいたのでちょうどいいと考え、春陽は美優達に説明する。
美優達もそんなところがあるならぜひ、と同意してくれた。
こうして、春陽と雪愛の休憩時間までコスプレ喫茶を満喫した美優達と一緒に五人で教室を後にし、一同は春陽達が昨日行ったフォトスポットへと向かうのだった。
五人が出て行った後の店内では、クラスメイト達が春陽と雪愛が家族ぐるみの付き合いをしていることに驚き、一時ざわついていた。
フォトスポットは大人気のようで列ができていたが、一組当たりそれほど時間はかからないのか人の流れはスムーズだった。
これならそれほど待たずに中に入れそうだ。
待っている間のこと、沙織が春陽に話を振った。
「ねえ、春陽君。今度家に遊びに来てくれるんでしょう?私今から楽しみで楽しみで」
「ちょっと母さん、春陽くんにそんな絡まないで」
「……はい。お邪魔させていただきたいと思います」
沙織の言葉にすかさず雪愛が言葉を返すのが少し可笑しくて春陽の口元に笑みが浮かぶが、しっかりと沙織に返事をした。
「邪魔だなんてとんでもない。雪愛はもちろん、私も大歓迎だから。ね?雪愛」
「っ、それはもちろんそうだけど……」
「ありがとうございます……」
お家デートの帰り、雪愛に提案されてから中々予定が合わなかったが、先日、雪愛の家に遊びに行く日がようやく決まったのだ。
その日はもう間もなくだ。
そんな風に雑談をしていたらあっという間に自分達が入室する番が来た。
室内に入ると、一同はすぐに目についた。
昨日撮られた春陽と雪愛のツーショット写真。
写真の中で二人は寄り添い幸せそうに笑っている
それが大きく拡大されて、見本として飾られていた。
春陽と雪愛が揃って恥ずかしそうにしている。
まさかこんなに目立つように飾られているなんて。
そんな二人を美優達は微笑ましそうに見ている。
「二人は本当にお似合いだね」
「ハルも雪愛ちゃんも素敵よ」
「本当に。雪愛も春陽君もいい顔してるわ」
そしてすごくいい写真だと二人に感想を言うのだった。
美優達の言葉に春陽と雪愛は余計恥ずかしくなってしまい頭が下がってしまった。
すると、昨日の女子の先輩が近寄ってきた。
「二人とも!来てくれたんだね。昨日はモデルを引き受けてくれて本当にありがとう。どう?素敵な写真でしょう?」
「……はい。そうですね」
「……ありがとうございます」
春陽と雪愛は羞恥からそれ以上言葉が出てこなかった。
二人の写真のおかげでいい場所があると噂が広がり、今日はすごい人が来てくれているとあらためてお礼を言われたりした後、春陽がもう一度撮らせてもらおうと思って来たことを伝えるとその先輩はとても嬉しそうだった。
「ゆっくり撮っていって。撮影係が必要ならいつでも声かけてね」
フォトスポットというだけあって、この教室内には六つのセットが用意されている。
昨日春陽達が撮ったのはその中の一つだ。
今日は他の五つで写真を撮ることになった。
撮影したものはスマホのアプリで五人全員が共有するつもりだ。
それぞれのセットで次のように写真を撮っていった。
まずは、美優と春陽。
撮影後、美優はスマホの写真を眺めながら頬が緩んでいた。
春陽との写真が本当に嬉しいのだろう。
次に、沙織と雪愛の母娘が撮り、その後、春陽を真ん中にして、美優と麻理の三人が撮った。
この二枚はそれぞれの家族写真と言っていいだろう。
さらには、美優と春陽と雪愛。
春陽と雪愛が並んで座り、美優がその後ろに立ち、二人の肩を抱き寄せている。
美優は春陽ともう一度話す機会をくれた雪愛に本当に感謝しているのだ。
話を聞けば聞くほど今の自分と春陽の関係があるのは雪愛のおかげだと思えて仕方がなかった。
そして春陽と雪愛のことを心から祝福している。
そんな想いが表情に溢れていた。
最後に、麻理と沙織を含めた五人全員での写真を撮ることにした。
撮影係にお願いして、皆でセットに向かう。
美優、春陽、雪愛の順に座り、その後ろに麻理、沙織が立つ。
過去にどのようなことがあったとしても、この時ばかりは誰もが一点の曇りもない笑みを浮かべていた。
春陽、雪愛、美優、麻理、沙織、この五人が揃った写真。
このときのものがその最初の一枚となるのだが、これから先、五人で写る写真は数えきれないほど増えていくことになるのだった。
撮影を終えた五人は教室を後にする。
「ありがとう。今日の写真大切にする」
美優はスマホを胸に抱き、嬉しさを噛みしめるように言う。
「喜んでもらえたならよかった。俺も大切にする」
春陽は口元に笑みを浮かべて言葉を返すのだった。
そんな二人のやり取りを三人は優しく見守っていた。
「この後はどうしますか?どこか行きたいところとか見たいところとかありますか?」
あれば案内するつもりで雪愛が全体に向けて訊く。
春陽も同じ思いなのか、三人に目を向ける。
「私はもう大満足かな。麻理さんと沙織さんはどこかありますか?」
「私も満足よ。ハルと雪愛ちゃんのクラスに遊びに行けたし、記念写真も撮れたしね」
「ええ、私も。すごく楽しかったわ。来ることにして本当によかった」
「ふふっ、皆こう言ってることだし、雪愛ちゃん達の折角の休憩時間を全部使っちゃうのも悪いからね。私達のことはもういいから二人で文化祭を楽しんでいらっしゃい」
麻理の言葉に美優と沙織も頷く。
こうして、春陽と雪愛は美優、麻理、沙織の三人と別れ、二人で文化祭を回ることになり、屋台をいくつか巡った後、休憩時間の終わりまで体育館に行ってライブを楽しんだ。
一方、春陽達と別れた三人は、このまま解散というのも寂しいと学校を出て、麻理の提案でフェリーチェへと向かい、貸し切り状態の店内で麻理の作ってくれた飲み物や食べ物をいただきながらお喋りを楽しんだ。
ちなみに、話題の大半は春陽と雪愛に関することだった。
内容的に時々しんみりしてしまうことはあったが、三人の仲が深まったのは間違いなかった。
その後もコスプレ喫茶は盛況で、準備していたものがすべて売り切れてしまったため、終了時刻よりも少し早く閉店となった。
「コスプレ喫茶は大盛況のうちに終わりました!この後は片付け、そして後夜祭とありますが、文化祭終了までは自由に過ごしてください!みんなお疲れさまでしたー!」
葵が皆に告げると教室内はやり切った高揚感で、クラスメイト達の大歓声が上がったのだった。
それからは互いにこの二日間のことを労ったり、ジュースを買って飲みながら、文化祭そしてこれからある後夜祭の話に花を咲かせたり、写真を撮ったりと皆好きなように文化祭終了までの時間を楽しんだ。
それは春陽や雪愛も例外ではない。
悠介達と瑞穂達を交えて皆で写真を撮ったり、文化祭の話をしたりして盛り上がった。
その中で、文化祭の話をする上でこれは外せないと、春陽は皆から改めてこの文化祭で変わったその姿について次々に感想を言われたり理由を聞かれたりして狼狽えていたが、そんな春陽の様子に皆は笑うのだった。
文化祭の終わりが校内放送で宣言され、皆で教室内の片付けを終えると、生徒達はグラウンドへと向かった。
グラウンドにはすでに多くの生徒が集まっていた。
中心には井桁型に何段も薪が組まれている。
文化祭終了後、文化祭実行委員と教員によって組まれたものだ。
全校生徒が揃い、全校集会のときのようにクラス単位で集まるように指示が出され、いつもクラスが並ぶ場所の辺りに生徒達が移動する。
ただし綺麗に整列をする訳ではない。
クラス単位で一纏まりになってもらうためだ。
後夜祭を始める前に、文化祭実行委員から各学年の優秀賞と全学年合わせた最優秀賞が発表される。
盛況だったクラスはどこも自分達が選ばれるのではないかとざわざわしている。
春陽達のクラスもそれは同じだった。
あれだけ人気だったのだからもしかしたら最優秀賞かもしれないと話している者もいる。
まず、一年の優秀賞が発表され、大きな拍手が起こり、そのクラスの生徒達が歓声を上げる。
以降も拍手は発表の度に沸き起こった。
そして二年の優秀賞の発表。
ここで春陽達のクラスが呼ばれた。
最優秀賞ではなかったことを残念がる者もいたが、皆優秀賞を取れて手を取り合ったり、肩を組んだりして喜び合っている。
三年は春陽達も行ったフォトスポットが優秀賞、そして最優秀賞は同じく三年で、田島のクラスのお化け屋敷だった。
一般公開の今日、一番行列ができており、大人気だったそうだ。
これには春陽と雪愛も思わず顔を見合わせ笑みを浮かべてしまう。
あれだけ凝っていたし、雪愛にとっては本当に怖かったから最優秀賞というのも納得だ。
各賞が発表された後、いよいよ文化祭実行委員から後夜祭の始まりが宣言され、キャンプファイヤーに火が付けられた。
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