ある日、突然 花嫁に!!

ひろろ

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さあ、始めよう!

告白

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 柚花は、休憩時間に軽米にメッセージを送った。

“今夜、前沢さんの所に食材を持って行っても平気かな?聞いてみて”


“聞いてみます、連絡がついたらメッセージを入れておきますね”


 と、すぐに軽米からの返信がきた。


 あんなに勝手に食材を使ってしまったから、すぐに補充しておかないと、前沢さんに悪いものね。

…………………

 休憩を終えて、ブライダルサロンに戻ってみると、野村さんがお客様と話していた。


  私の両親と同じくらいの年代に見える。

 ご夫婦なのかしら?

 もしかしたら、“初心婚式”を希望される方かしら?

 そうだったら、嬉しいけれど。


 今回の企画は、訳あって挙式が出来なかったカップルのためのものだから。


 子どもの頃、花嫁衣装に憧れた事がある人は、多いと思う。


 それでも、現実は夢で終わる方も多くいるのではないか。


 花嫁衣装を着ることを諦めた方、新婚旅行に行けなかった方へ、今なら、今がチャンスです!と声を大にして言いたい。

 
 少なくとも当ホテルは、目一杯の御奉仕をしますから!


 宣伝を兼ねて、超格安にしています。

 
 時を作って、恥じらいを捨て、思い切って、カレンダホテルにお越し下さい。

 
 野村さんと話していたカップルが帰った後、確認してみる。


「今、帰られた方々は、もしかして初心婚式をご希望なの?」


「はい、そうです。今度の合同説明会にご招待しました」

 野村がそう答えたから、柚花はとても嬉しかった。


 式は10月で旅行は11月からで、もうすぐ募集の締め切り間近だ。

 
 希望されるお客様がいるのか心配だったけれど、反響があってホッとしている。


 先日、軽米さんに担当してもらった、元彼夫妻も希望してくれている。


 合同説明会に来てくれた時は、私は平常心でいられるようにしよう。


 さあ、もうすぐ打ち合わせのお客様がいらっしゃるわ。


 通常の婚礼式の方も、しっかりと進めないとね。

…………………

  定時で仕事が終わった。


 軽米さんから連絡はきているかな?


“仕事が終わったら電話を下さい”


  柚花は、早速 電話を掛けた。


「軽米さん、仕事が終わったけど?」


「丸山さん、お疲れ様でした。

和希さんに言ったら、食材はいらないと言っていましたよ」


「あ、それはダメ。私が勝手に使ってしまったから。

 あとで、買って持って行こうと思うけど、いるのかしら?」


「ふふふ、丸山さんなら そう言うと思いました!

 私は、和希さんとデートなので……。

 あー、じゃあ、西崎さんと食材を買って、持って来て下さい」


「えっ?何で西崎さんと?」

 柚花は、1人で買い物ができるのに、不思議に思って聞いた。


「丸山さん、和希さんのアパートまでの道を覚えていますか?

乗せてもらっていたから、分からないと思いますが?」


「あ、そういえば、家までの道がよく分からないわ。

 そっか、それで西崎さんと一緒においでってことなのね」


「和希さんの家までの道順は、少し複雑ですからね。

実は、西崎さんに話してあるので連絡をしてみて下さい。

 和希さんの家で、待ってまーす。

 じゃあ、失礼します」
 

 軽米は、そう言って電話を切った。


「ちょ、ちょっと、軽米さん?あー、切れたか……」


 これから、私が智也さんに会うの?

 昨夜、私が何をしたのか覚えていないのに?はあー。


 今朝のこともあるから、会うのは恥ずかしいけど、逢いたいという気持ちもある。

 
 柚花は、早速、智也に電話をしてみた。


「柚花のアパートに迎えに行くから、帰ったら連絡をして」


 智也から言われて、急ぎ帰り、さっとシャワーを浴びてから着替え、素早くメイクをしてから、連絡をしたのだった。
 
 
 それから、数分で智也が迎えに来たのだった。


 自宅のカーポートで柚花からの連絡を待っいたのだ。

 
「智也さん、お買い物に付き合ってもらうなんて、昨日からご迷惑をかけてしまって、すみません……」

 あー、私はキス魔になったのでしょうか?

 きっと、やらかしたのでしょうね?


「気にしなくていいよ。

柚花の作ってくれた朝食が嬉しかったから、全然、平気!」


 智也さんがそう言って、否定はしないから、相当な事をしてしまったのかしら?

 聞きたいけど、恐ろしいから聞けないよ。


「どこのお店に寄って行こうか?

 和希の家の近くにスーパーがあるから、行ってみる?」


 智也に言われて、柚花は頷いた。
  

 2人きりの空間には、カーステレオから流れる曲のみで、沈黙が続いている。

 
 何か話題がないかと柚花は考えていた。

そして、CM撮影をしたことを思い出し、柚花が突然 話す。


「あっ、そうだ、先日のCM撮影の御礼をしないといけなかったわ。

 智也さんと、たっ君と前沢さんに」


 智也は、たっ君という言葉に引っかかっていた。


「たっ君?ああ匠海のことか。

 匠海と仲がいいんだね……」

 
「え、まあ、偽嫁をしていたからね。
たっ君って、つい呼んでしまうの。

あっ、たっく、折原さんは元気かしら?」


「このところ、連絡していないけど元気だと思うよ」


 そう言って、智也はスーパーの駐車場へ入って行き、車を止めた。


「あいつ、新しい出会いがあったっぽいね。上手くいくといいな」


(俺、最低だ。柚花に匠海のことを諦めさせようとしている!

 匠海、ごめん。お前も本当は好きなんだろう?

 でも、譲ることが出来ない!ごめん)


「そっか……そっか、上手くいくといいね。良かった」


 たっ君、今度こそ幸せを掴んでね。


「あれ?匠海に彼女が出来るかもしれないのに、平気なの?」


(はっ、しまった!核心をついた質問をしてしまった!

 これは、墓穴を掘ってしまったかもしれない……。

 これで、匠海への気持ちを再確認されたら、完全に失恋決定になってしまう)


「あ、うん、ちょっと前なら、先を越されてズルイとか変な事を思ったと思うけど……。

今は……何て言ったらいいのかな?

智也さんが告白をしてくれて、少し心にユトリが出来たみたいな……。

いや、恥ずかしいな。

 あのね、智也さん……

あのね、まだ告白してくれた時の気持ちが有効なのかな……?」


「えっ?ゆうこう?有効?って聞いているの?

もちろん俺は、今も、これからも 柚花 、一筋だよ」


「あ、良かった。嬉しい……。
 じゃあ、交際をお受けします……」


 柚花は、照れながら言った。


「へっ?」
 
  
智也は、そう言ったきりで黙ってしまった……。


 突然の予期せぬ展開に、一瞬 思考回路が停止したようだ。

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