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さあ、始めよう!
実家のリク ★
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「ただいまー!リク!リクーぅ!
元気だった?私はね、さっき大変だったんだよぉ。タイヤがね、パンクしちゃったんだよっ!
帰ってこられたから、良かったよぉ。
ねえ、リク、私が帰って来た時くらい、もう少し喜んでくれてもいいと思うけど?
もっと、喜びを表現してよね!」
くんくんくん……。
「匂いを嗅いでいるの?
柚花だよ。わかるでしょう?
随分と老けたなぁ。
もう、お爺さんだものね……。
あっ、リクの好きな ジャーキーを買ってきたからね。待ってて」
柚花が袋をゴソゴソとすると、リクが飛びついてきた。
「えっ?私よりも おやつに興味があるの?酷くない?
今、開けるから、待て!」
リクというのは、実家で飼っている犬なのだが、勝手気ままで 私には滅多に尻尾を振らない!
「お昼過ぎたから、もうすぐ お母さんが帰ってくるよ。
それまで、私と遊んでよ。
ねっ、リク?リクってば、あ、欠伸をするなっ!
馬鹿にしているの?まったく」
結局、シラっとしている態度で遊んでくれなかった。
可愛げはなくても憎めない奴。
このリクに会うのも実家へ帰ってくる楽しみの ひとつなのだ。
…………………
「ただいま。柚花、おかえり!」
母がパートから帰って来た。
「おっかえりー、お母さん。
ただいまぁ、お母さん!
ご飯を食べずに待っていたよぉ。
なんか作ってぇ」
久しぶりに帰ってきたから、柚花は甘えて言っている。
「えー、今日から29歳の人は、逆に母親にお昼を作って待っているくらいが当たり前なんだけどね……。
いつまでも お子様では困りますねっ。
しょうがない子ね、何が食べたいの?」
渋々と でも嬉しそうに母が聞いた。
「じゃあ、凛ちゃん特製親子丼がいい」
父が母をりんちゃんと呼んでいるから、柚花もたまに そう呼ぶことがある。
母は、父をマル君と今でも呼んでいる。
柚花は、この両親の関係性がとても好きで、いつかは お手本にしたいと密かに思っていた。
私が、もしも結婚できたら、旦那さんから 柚ちゃんとか呼ばれたら嬉しいと思っていたが、実現は難しいかも。
……………………
「柚、洗濯物を取り入れて畳んで置いて」
柚花は、洗濯物をリビングに運んで畳始め、リビングに続いているキッチンで母親が料理をしている。
「お母さん、お兄ちゃんは彼女ができた?」
「うーん、いないみたいだよ。
今のところ、縁がないのかもしれないね。仕方がない……」
母が言った。
「そっか……お兄ちゃんもなのか……。
お母さん、私、結婚できないかもしれないよ……。ごめんね」
柚花が母親に謝ると、牛蒡を切りながら話す。
「そっか。孫を見てみたいとかって気持ちは、少しあるけど……。
焦って誰でもいいって思ったら、ろくな事にならない!
だけど、選り好みし過ぎてはダメよ。
前から言っている通りだけど、男は顔で選んではダメだよ!」
「わかってる。顔のいい男に引っかかると苦労するんだよね?
ちゃんとに心得ています」
「そうだよ。顔なんかよりも、価値観が同じで、相手を思いやれる度量の広い人の方がよっぽど良いんだから。
そんな人と縁があったら、自分からプロポーズをしなさい!」
「えっ?自分から?わかったよ、そんな人がいたらね。多分、逢えないと思うけど……」
「自然に任せていればいい。
結婚に年齢制限は無いから、いつになってもいい。
ひとりで生きて行く術をもっているのなら、しなくてもいいし。
いつでも自然体でいれば、運命は勝手に動いていくからね」
「はい、了解しました!」
柚花は、元気に返事をした。
結婚をしていない負い目があった私は、少し気持ちが楽になった。
そして、夜になり父親と兄も帰ってきて、ささやかに柚花のお祝いをしたのだった。
「29歳、おめでとう!」
うわっ!嬉しくないけど嬉しいよ。
皆んな、ありがとうございます。
柚花は、家族の温かさに心からホッとしたのだった。
…………………
翌朝、出勤のため早く実家を出る柚花は、寝ていたリクを起こす。
「リク、リク!起きて、おはよう。
まだ、眠いの?私、帰るから、また、暫く帰って来ないから。
ちゃんとにお見送りしてよ。ねぇ?
もう、起きてよーぉ」
リクは、渋々、目を開けた。
(うるさいなぁ、何時だと思っているんだ?こっちは、眠いんだよ!)
……とリクは、思っているだろう。
「じゃあ、またね。バイバイ」
私は、横になっている太めのリクを撫でて、思う。
お腹があったかいね。
長生きをするんだよ……。約束だから。
…………………
「みなさーん、おはようございます」
柚花は、とびきり元気に出勤した。
「あら、丸山さん、元気でいいわね。
そのテンションで、本日も契約ゲットして下さいね!」
倉田チーフが柚花に発破をかけた。
「はい、仕事をバリバリ頑張ります!
お任せ下さい!」
今の柚花は、やる気の塊なのだった。
元気だった?私はね、さっき大変だったんだよぉ。タイヤがね、パンクしちゃったんだよっ!
帰ってこられたから、良かったよぉ。
ねえ、リク、私が帰って来た時くらい、もう少し喜んでくれてもいいと思うけど?
もっと、喜びを表現してよね!」
くんくんくん……。
「匂いを嗅いでいるの?
柚花だよ。わかるでしょう?
随分と老けたなぁ。
もう、お爺さんだものね……。
あっ、リクの好きな ジャーキーを買ってきたからね。待ってて」
柚花が袋をゴソゴソとすると、リクが飛びついてきた。
「えっ?私よりも おやつに興味があるの?酷くない?
今、開けるから、待て!」
リクというのは、実家で飼っている犬なのだが、勝手気ままで 私には滅多に尻尾を振らない!
「お昼過ぎたから、もうすぐ お母さんが帰ってくるよ。
それまで、私と遊んでよ。
ねっ、リク?リクってば、あ、欠伸をするなっ!
馬鹿にしているの?まったく」
結局、シラっとしている態度で遊んでくれなかった。
可愛げはなくても憎めない奴。
このリクに会うのも実家へ帰ってくる楽しみの ひとつなのだ。
…………………
「ただいま。柚花、おかえり!」
母がパートから帰って来た。
「おっかえりー、お母さん。
ただいまぁ、お母さん!
ご飯を食べずに待っていたよぉ。
なんか作ってぇ」
久しぶりに帰ってきたから、柚花は甘えて言っている。
「えー、今日から29歳の人は、逆に母親にお昼を作って待っているくらいが当たり前なんだけどね……。
いつまでも お子様では困りますねっ。
しょうがない子ね、何が食べたいの?」
渋々と でも嬉しそうに母が聞いた。
「じゃあ、凛ちゃん特製親子丼がいい」
父が母をりんちゃんと呼んでいるから、柚花もたまに そう呼ぶことがある。
母は、父をマル君と今でも呼んでいる。
柚花は、この両親の関係性がとても好きで、いつかは お手本にしたいと密かに思っていた。
私が、もしも結婚できたら、旦那さんから 柚ちゃんとか呼ばれたら嬉しいと思っていたが、実現は難しいかも。
……………………
「柚、洗濯物を取り入れて畳んで置いて」
柚花は、洗濯物をリビングに運んで畳始め、リビングに続いているキッチンで母親が料理をしている。
「お母さん、お兄ちゃんは彼女ができた?」
「うーん、いないみたいだよ。
今のところ、縁がないのかもしれないね。仕方がない……」
母が言った。
「そっか……お兄ちゃんもなのか……。
お母さん、私、結婚できないかもしれないよ……。ごめんね」
柚花が母親に謝ると、牛蒡を切りながら話す。
「そっか。孫を見てみたいとかって気持ちは、少しあるけど……。
焦って誰でもいいって思ったら、ろくな事にならない!
だけど、選り好みし過ぎてはダメよ。
前から言っている通りだけど、男は顔で選んではダメだよ!」
「わかってる。顔のいい男に引っかかると苦労するんだよね?
ちゃんとに心得ています」
「そうだよ。顔なんかよりも、価値観が同じで、相手を思いやれる度量の広い人の方がよっぽど良いんだから。
そんな人と縁があったら、自分からプロポーズをしなさい!」
「えっ?自分から?わかったよ、そんな人がいたらね。多分、逢えないと思うけど……」
「自然に任せていればいい。
結婚に年齢制限は無いから、いつになってもいい。
ひとりで生きて行く術をもっているのなら、しなくてもいいし。
いつでも自然体でいれば、運命は勝手に動いていくからね」
「はい、了解しました!」
柚花は、元気に返事をした。
結婚をしていない負い目があった私は、少し気持ちが楽になった。
そして、夜になり父親と兄も帰ってきて、ささやかに柚花のお祝いをしたのだった。
「29歳、おめでとう!」
うわっ!嬉しくないけど嬉しいよ。
皆んな、ありがとうございます。
柚花は、家族の温かさに心からホッとしたのだった。
…………………
翌朝、出勤のため早く実家を出る柚花は、寝ていたリクを起こす。
「リク、リク!起きて、おはよう。
まだ、眠いの?私、帰るから、また、暫く帰って来ないから。
ちゃんとにお見送りしてよ。ねぇ?
もう、起きてよーぉ」
リクは、渋々、目を開けた。
(うるさいなぁ、何時だと思っているんだ?こっちは、眠いんだよ!)
……とリクは、思っているだろう。
「じゃあ、またね。バイバイ」
私は、横になっている太めのリクを撫でて、思う。
お腹があったかいね。
長生きをするんだよ……。約束だから。
…………………
「みなさーん、おはようございます」
柚花は、とびきり元気に出勤した。
「あら、丸山さん、元気でいいわね。
そのテンションで、本日も契約ゲットして下さいね!」
倉田チーフが柚花に発破をかけた。
「はい、仕事をバリバリ頑張ります!
お任せ下さい!」
今の柚花は、やる気の塊なのだった。
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