ある日、突然 花嫁に!!

ひろろ

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想いはどこへ

真夜中の秘密 ★

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「う……ん……んご、んがあ、んがぁ……」


 イビキを心配していた柚花だったが、眠気には勝てずに眠ってしまっていた。


 柚花が寝た隙に、智也は熱を下げるというツボを軽く押しマッサージをしてあげていた。

 だが、柚花が起きそうな素振りをみせたからやめて、様子をみている。


(あ、寝た。起きなくて良かった。
ぐっすりと眠って早く元気になって!)


 それから、少し経った頃。


「うーん、寒い……」


 突然、目を閉じたままの柚花が呟いた。


「えっ、寒いの?」


 明らかに寝ていると思われる柚花が言うから、智也は聞き返した。


 寝言かもしれないが、智也はクローゼットを開けて、布団や毛布を探してみる。


(あった!お客さん用かな?掛け布団も毛布もある。良かった)


 智也は、柚花の掛け布団の上に、もう一枚の掛け布団を掛けてあげた。


(これで、あったかいだろう)


 柚花は、ニヤッとしていた。


 あったかいと感じたようだ。


 智也は、部屋の明かりを暗くする。


 更に、テーブルの所から座椅子を運んできて、ベッドが見える向きに置いて座った。


 柚花が眠ったら帰ると約束をしていたが、何となく帰り難くて、智也は座っている。


 常夜灯の薄暗い明りの中、柚花の寝顔を見つめていた。


 時折、掛布団が重そうに寝返りを打つが、直ぐに智也のいる側を向くのだった。


 柚花の顔に髪がかかると、表情が見えなくなるから、髪をかき上げたくなる衝動にかられる。


 手を伸ばしたくなる気持ちが、ムクムクと現れた時……。


「……んご、んがっ、んがぁー」と柚花のイビキが聞こえてきた。


「くっ、くっくっくっ!」

 智也は、笑いを必死に堪えている。


(イビキも可愛いと思えるから、不思議だ)


「はあぁ、あついー、あつーい」


 柚花は、暑いという寝言と共に、布団を退かそうと手と足を使い剥ぎだした。


(今度は、暑いのか。この掛布団はいらないんだね。じゃあ、退かすよ!

げっ、毛布も蹴飛ばした!わっ、ダメだよ!

 トレーナーをまくり上げちゃダメだ!

 おへそが見えてるぞ!冷えるから!)


 智也は、毛布を掛け直してやった。


 それから、新たな熱冷ましのシートを貼り、足を出すように掛布団を掛けた。


ふーう。


 智也は、ひと息ついて座椅子に座ると、さっきのヘソ出し姿を思い出し、ドキドキとしてきたのだった。


 ぼんやりとした明るさの中に浮かび上がる裸体(お腹)が妙に色っぽく、智也にはウエストのくびれがある様に見えていたのだった。


……というか、妄想している。


 はーあ。


 智也は、溜息をつき考える。


(もう、帰ろうかな……)


 柚花は、熟睡しているようで、イビキはかいていない。


(俺は、明日、休みだから 寝なくても大丈夫だけど、理性を保つのが大変だ。

もう、帰ろう。じゃあ、お大事に)


 智也が立ち上がった、その時。


「……んご、んがっ、んがっ、うーん、うーん」


 柚花のイビキが始まった。


 ただ、今度は苦しそうにしているから、智也は話しかけた。


「柚花、どうしたの?苦しいの?大丈夫?」


「野菜室だよ」
 
 柚花が、いきなり言い出した。

 智也は、困惑する。

「 ? ……何が?」


「はあ?ハンコがいるでしょう?」
 
 目を閉じたままの柚花が答えた。


「 ? ? ? 」


 「こんな夜中にハンコがいるの?」

 智也としては、もしかして、寝ぼけているのかもと思いながら、一応、聞いてみた。

 すると、柚花から返事が返ってきた。

「……こん、大根には、ハンコだよ……」

 そう答えたきり、また、イビキをかき始め、眠ったようだ。


「…………」


(ぶはっ、ぶぶぅ、意味不明だぁ!けど、面白過ぎ!君は、どんな夢を見ているんだ?

知りたいな!君をもっと知りたい!)


 智也は、柚花の髪を直し、頬に手を当て体温を確かめ、寝顔を見つめていた。

 そして、ホッとした表情を浮かべ、テーブルがある方へ移動する。


 薄暗い部屋でも、テーブルの上にメモとペンがあるのが わかった。


“早く元気になって下さい。

元気になったら、どこかへ遊びに行きましょう。

お大事に!                       西崎 ”


 智也は、メモを残して帰って行ったのだった。

…………………

 朝、スッキリとした気分で目覚めた柚花は、キョロキョロと見回した。

 
 部屋には、智也の姿はない。


 ああ、夢を見ていたのね……。


 イビキがバレたら嫌だもの。


 夢で良かった……。


 起きると、テーブルにメモがある事に気がついた。


「えー!夢じゃなかった!うわっ、ヤバい!

……えっ?遊びに行こうだって……。

 柚花ちゃん、あっそびましょっ!っていうノリなのかな?

 他の人も一緒だよね!でも、誘われて嬉しい」

 
 智也からのメモを何度も読み返し、ウキウキするのだった。


 さて、今日は仕事の日だけど、特に打ち合わせの予定も入っていないから、休みを頂きましょう。


 ……………………

 再び眠り、充分に睡眠を取って目覚めた柚花は、空気を入れ替えようと窓を開ける。


 柚花の携帯には、智也からのメッセージが入っていたが、携帯電話はバックの中に入れっぱなし状態だった。


「あっ、智也さんだ!路上駐車して、こっちに来る気だ!」


 急いで窓を閉めて見なかった事にする。


 大変、髪をかさないと!


 そうだ、可愛いピンクのウサギちゃんパジャマがなかったっけ?

 急いで着替えよう。

 何で、こんなスウェット着ちゃったのかしら。

 急げ、急げ!


 はあ、疲れたー!


「ふぅ、着替えたけど、しんどくなった。
私って、バカだよね……でもさ、恥じらいって物があるんだもん」


 ピンポーン!


「あ、来た!」


 ふーっと、息を整え髪の広がりを押さえて、ドアを開けた。


「具合はどうかな?熱は下がった?

さっき、メッセージを送ったけど、返信がないから心配したよ。

 あー出てきてくれて、良かったよ」


「あっ!携帯電話はバックの中だ!ごめんなさい。

そうだ、昨夜は色々とありがとうございました。

 迷惑をかけてしまって、すみませんでした。

 あのぉー、あ、いえ、何でもありません」


 柚花は、イビキの確認をしたかったのだが、恥ずかしいから聞くのはやめた。


「はい、これ借りた鍵。

それと、栄養ドリンクだよ。飲んでね!

あと、うちの庭に咲いていた赤い薔薇。

売り物みたいに真っ直ぐじゃなくて、ひと枝で ごめん。

じゃあ、帰るから!お大事にね」


 智也は、栄養ドリンクの入った袋と花柄包装紙で包んだ薔薇を柚花に渡し、さっさと帰ってしまったのだった。


 そうだ、智也さんからのメッセージを見てみないとね。


“柚花、具合はどう?これから行く。
もしも玄関に出て来なかったら、勝手に入って、君を救うから!”



 救うって、大袈裟だわっ!


 でも、寝ていて気がつかなかったら、どんな事になっていたのかしら?


 起きていて、少し残念だったのかも……。

 なんてことをチラッと思っちゃったりして。


 それでは、元気になるためにドリンクを頂きましょう。


 智也さんってお花屋さんだから、花言葉とか知っていたりするのかな?


 この花に意味はあるのかしら?

 なんてね、変な深読みは良くないよね?

…………………

 智也は、車を走らせながら考えている。

 
(真夜中、寝ぼけた君との会話は、俺だけの秘密にするからね。

これで、暫く笑って過ごせるよ)



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