上 下
125 / 129
侵入者編

クウガ 発明する?

しおりを挟む

 ※エルフやエイリアンの設定に関して人によっては不快感を与えるかと思います。
  ご了承お願い致します。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


 ルレイドに連れられて、俺はまたあの家へと戻った。
 中に入るとエマと名の知らない2人の騎士の姿を見つけた。2人の騎士はルレイドと少し会話をしてから去っていった。

「エイリアン対策で、できる限り単独行動は許されないんさぁ」

 エマがそう騎士の詳細を説明してくれた。
 久しぶりに会ったエマは今までの中の彼女と雰囲気は変わっていない。だがどうしても記憶に新しいのは、エイリアンに操られルレイドによって大火傷を負った姿だった。だが一切暗い素振りを見せないエマに、そのことを尋ねるのは躊躇った。結局は「お久しぶりです」という当たり障りのない会話をするのみだった。

「エルフはクウガくんが寝ていた部屋にいるはずだよ」

 ルレイドがそう教えてくれた。つまりそこに行けってことだ。
 どうしてるんだろうか。俺はそこに行って扉をゆっくりと開け中に入る。
 イスに座る疲れ切ったエルフの姿があった。俺に気づくと目を鋭くする。それに怯んでしまったのは今が精神的に辛かったのと、エルフの瞳がおどろおどろしい雰囲気を纏っていたからだ。前俺につっかかったときはこんなのではなかったはずだ。

「なんデスカ。今更現レテ。ーーああ、今度はあなたがするわけデスカ」

 冷め切った顔でエルフは腕を捲る。俺はギョッとした。腕には傷痕が無数に残っていたからだ。一瞬、後ろにいるルレイドの行為かと思ったがそれならば火傷となっていると思い否定した。だが綺麗だったはずの肌に残った傷は痛々しく見える。

「人間共に話すことなどあるモノカ。蔑み恨み、欲の籠もった目で見つめる愚者に、自分たちがしでかしたことも知らぬままのうのうと生きた間抜けに何を話すことガアル。善意の顔を向けて毒を仕込もうとする悪人に話すことなどアルモノカ」

 呪詛を吐くようにエルフは言う。
 そんなこと言われたって俺たちは何が起きているのか知らない。エルフがどういった存在なのかもわからないのに、エイリアンの臭いとエルフの臭いが同じものってだけで疑うには十分だ。話してくれないのなら警戒されたってしょうがないだろ。

 ・・・・・・・・・・・・あれ?
 エルフの態度にそう思っていたはずなのに、どこか違和感を覚えた。こめかみを押さえながらその違和感の理由を探る。凄く身近に起きた気がするんだ。なんだっけという疑問が湧く。

「敵ダ。人間は皆敵でしかナイ。エルフを危険に陥れる憎き敵。その敵に屈することなどあってたまるモノカ。ボク1人しかいなくとも、周囲に敵しかいなくとも、見下す目で見られようと、人間の言いなりなんてなるモノカ」

 周りは敵。1人のみ。見下す目。
 ああ、そうか。やっと気づいた。

「ごめん」

 思わずつぶやいた。エルフの表情が訝しいものに変わる。俺はルレイドの方を向いて頼んだ。2人きりにさせてほしいと。ルレイドはしばし悩んだようだったが、扉を閉めてくれた。



「どういうつもりデスカ」

 エルフの冷め切った声。

「エルフの、お前の、仲間がそばにいなかったってこと。味方がいなかったってことにやっと気づいて」
「・・・・・・それで、同情デスカ?」
「そう、かもしれない」

 妙に突っかかってくるのだって弱さをさらけ出すわけにいかないから。傷を負おうと屈さなかった。気丈な姿勢を崩さなかった。長とか言ってたからプライドもあるんだろう。でもそれだって正直凄いと思った。

「だって、俺もそうだった」

 気づいたのはそのことだった。
 俺だって召還されたときに周りには嫌われていた。死んだって構わないって扱いをされた。極悪人だって陰口をたたかれた。そのことを忘れていたというより俺の場合は味方がいてくれたっていうのが大きかった。
 でも俺は早めに味方となってくれたサッヴァに酷いことをしたという事実が重くのしかかってくる。

「信頼されるようなことをしなくてごめん。味方になれなくてごめん」

 何で今更になってそのことに気づいたのだろう。頭を下げる俺にエルフの無言が堪える。すると視界になった床に突如植物のツルが生えた。驚く暇もなくツルは急激に成長し俺の首を締め付ける。ツルは俺の体を引っ張り床へと叩きつける。
 大きな音が響いたからか部屋の扉が乱暴に開かれルレイドが姿を見せた。それを見て俺はすぐさま叫ぶ。

「動くな!!」

 能力にかかったルレイドは、表情を固くしながら動きを止めた。おそらくあのままだったら確実にエルフに危害を与えていた。今それをしてはダメだと思ったんだ。
 ツルは首だけでなく腕や足にもまとわりついた。動きを封じられながらもエルフを見上げることはできる。エルフは苦々しい顔で俺の肩に勢いよく足を押しつけた。

「何が味方デスカ。人間と相容れることなど不可能。人間は我々エルフを卑しい道具としてしか見ようとシナイ」
「違う。ちゃんと向き合えば信じてくれる。事実、俺は信じてくれる人が増えた」
「一緒にスルナ!」

 エルフは乗せていた足を動かし、俺のこめかみを蹴り飛ばした。衝撃に脳が揺れる。ちょっと意識が飛びかけた。俺はエルフを再度見上げる。

「信じろ!」

 俺は叫んだ。エルフの体が怯む。まやかしの信頼になったとしても構わなかった。これが原因で一生俺を信頼する対象から外されてもいい。今一時だけでもいいのだ。

「教えてほしいんだ。何で人間がそこまで憎いのか」

 話してくれなきゃわからない。でも話してくれれば、何かが変わるかもしれない。誰かが変わってくれるかもしれない。少なくとも俺のよく知る人たちは、必要もなしに誰かを虐げる人間じゃない。

「俺は味方になるから。もうそれ以上の傷つけることはしないから」

 どの口でそれを言っているのかという自覚はある。だとしても口にしろ。足蹴にされようが蔑まされようが、このタイミングを逃したらダメだ。
 俺は額を床に擦りつける。お願いだ。ルレイドの言うように無理矢理語らせることはしたくないんだ。それはもう関係の修復が不可能になってしまう。
 しばし沈黙のときが続いた。
 そして唸るようにエルフが言う。

「・・・・・・話だけナラバ」

 俺はそれに安堵のため息を吐いたのだった。


+++

 あの後、ルレイドには怒られた。

「あまり無茶はするものじゃない。いいかい、私のそばにいる間は私は君を守る義務があるんだ。エルフが殺意を抱かなかったのは幸いだが、絞め殺されてもおかしくなかった。それを私を制してまで危険を犯す必要はあったのかい?」
「はい・・・・・・すいません」
「私も効率を重視する質ではあるが、あそこで命の危険を晒す必要はなかった。例えエルフに無理を強いてもだ。命を懸けるのならばもっとそのときを見極めるんだ。犬死にほど意味のないものはない」

 そんな戦国武将みたいな。そんなことは言えず俺はただひたすらに謝った。
 確かに俺を守る存在であるルレイドを動けなくしたことは事実なので口答えはしませんでしたよ。反論したら数倍で返ってきそうだしね!!

 とりあえず話してくれる気になってくれたエルフを机に座らせる。俺がその向かいに座ってルレイドが俺のそばに立つ。エマは人間に囲まれたら話せないだろうと席を外してくれた。エルフは未だ苦々しい顔をしていたが、観念したように口を開いた。


「どこから話すベキカ・・・・・・。まずエルフについてはどこまで知っているのデスカ?」
「エルフの容姿についてと植物の魔法が使えることは聞いたけど。あとは・・・・・・わかっていないことのが多いかな」

 俺だってこの世界に来て数年しかいないわけなんですがね。ルレイドは自分が口出すと良くないからできる限りは黙っていると先ほど言っていたため口を閉ざしている。

「では人間たちがエルフを誘拐強姦していたということハ?」
「ご!?」
「知られていないのデスカ。やはり加害者側の歴史はその程度デスネ。こちらは先祖から代々伝えられているのデス。人間は悪逆非道の者共であるト」

 ・・・・・・初っ端から重い話きたあああああああ!! しかも俺にまでグサリと刺さるやつ! タイミング的に今めっちゃ心臓にくる!!

「男女見境なく暴行を受け、男はすぐ死に女は子を孕んで殺されるということが続きマシタ。このままだと絶滅すると悟った先祖は人間たちと関わりを持たないためにドワーフと共に人間たちの住まう世界から遮断する結界を張ることにシマシタ。結果それ以降エルフ・人間・ドワーフはそれぞれ別の世界で生きてきたのデス。
 ですがそれでも問題は起きマシタ。人間の子を孕みながら逃げてきた女のエルフから生まれたのはエルフでも人間でもない気味の悪い生物。その生物によって一時エルフは危機に陥ったため、先祖は他に人間との子を孕んだエルフを谷底に突き落としたのデス。

 そして何千年と時が経ち、エルフはエルフだけの生を歩んでイマシタ。しかしそれがつい最近滅亡の危機になったのデス。谷底に落として殺したと思っていたはずの気味の悪い生物ガ。それは赤子にも満たない大きさでありながら、生物に取り付きボクらエルフに取り付いタ。やつらはひたすらに殺戮を繰り返しマシタ。傍目からすれば同族殺し。真実に気づいたときにはもう取り返しのつかない状態デシタ。
 このままではエルフは皆殺サレル。それを恐れたボクは人間との世界を隔離していた結界を破壊することに決めたのデス。そしてそれを実行し仲間とはぐれ魔の森をさまよったボクは魔物に襲われかけ、気づけば人間の住む場所に飛ばされマシタ」

 エルフはそう説明した。つまり、サッヴァたちに取り付いたあれは・・・・・・。

「俺がエイリアンって名付けたのは、人間とエルフのハーフってこと?」
「そういうことデス。ですがあれをエルフとは思いたくはないので、エイリアンという呼称がついたことはありがたいことデス」

 まったくありがたい様子が見えなかった。
 でもエルフが人間を恨む理由は理解できた。遙か昔の人間の所業が現在のエルフにまで悪影響を与えたとなっては恨まざるをえないだろう。

「ですからエイリアンはエルフと関わりがあると同時に人間とも関わっているのデスヨ。むしろボクらとしては人間が諸悪の根元と思っているくらいデス」
「少しいいだろうか」

 ルレイドが口を挟んできた。

「エイリアンを外に出すために結界を破壊したと言ったが、それによる弊害はないのか」
「まったくないと言えば嘘になりマス。結界も内なる力を集合化させ、それも遙か昔のエルフとドワーフが共に作り出したもの。それが破壊され無に帰るとなれば、世界に住む人たちにも一過性ですが多少影響はあったハズ。人間の場合はわかりませんが、ボクらの場合は植物を操る力が無駄に放出されたことデショウカ」
「・・・・・・いや、人間も同様だ。一度魔法による大量暴発事故が発生した」

 ルレイドがこっちを見た。

「おそらくダイチくんが召還された日のことだ」

 なるほど。そういえばあのときもルレイドが魔法を制御できてなかった。ダイチが召還されたのだって偶発のようなものだったはず。
 ルレイドは続けて問う。

「すべてを信用するわけではないが理由はわかった。それとエイリアンを孕んだエルフの女の数は?」
「・・・・・・さすがにそこまでは」

 伝承でのことだから仕方ないだろう。ルレイドもそれ以上は追求しなかった。むしろエルフから視線をそらし深いため息を吐く。エルフは少し表情を歪ませた。

「クウガくん。少しエマと変わってもらう。ここ最近はエルフの近くに居すぎた。そちらもあまり良い顔をしていないようだし、いいかい?」

 多分エルフの美貌が人間に変な気を起こしているあれか。俺全然なんだけどなあ。美少女顔に興味なさすぎて。せめて老けてくれればよかったんだけど。
 ルレイドと入れ違いになるようにエマが現れた。その手にはトレーがあり、その上にはコップが2つ置かれている。その中身は薄緑色の炭酸飲料風のお茶だ。俺が結構好きなやつ。エマがそれをエルフの前に置くとエルフの表情が固くなった。どうしたと思えばコップを手で弾き落とす。派手な音を立ててコップが割れ、お茶がこぼれていった。

「何が信頼デスカ!? やはり人間など悪でしかナイ!!」

 エルフが立ち上がり激昂する。俺もエマも何故エルフが怒っているのかわからず目を白黒していた。ルレイドが戻ってきて様子を伺っているが、一触即発なのは間違いない。

「知りたいことを知れれば後は必要ないト!? 人間以外は死ねということデスカ!?」

 何故死という言葉がでてきたのか。ふと俺はエマが持ってきたもう1つのお茶に目をやった。ひったくるようにコップを奪い取ると、その中身を一気飲みする。炭酸を一気するのは正直しんどかったけど勢いに任せた。
 ドン、と空になったコップをテーブルに叩きつける。エルフは俺の行動に目を大きく広げて驚いている。
 多分、俺の考えてることが当たってるんだろう。

「もしかしてだけど、人間とエルフって食べられるものが違ったりする?」

 俺の質問にエルフはハッとした顔をした。エマも同様だった。

「今出したのは人間には日常で飲まれるお茶だよぃ。でもエルフにとっては違うのかぃ?」
「・・・・・・エルフにとっては毒物デス。飲めば幻覚症状を起こす危険性ガ」
「知らないとはいえ悪かったなぁ。前にも出したことがあったけど、それもそっちの不信感を与えるには十分だぃ」

 エマの謝罪にエルフは力なく首を横に振り、顔に手を当ててイスに座り直した。

「あのさ」

 俺が話しかけると疲れ切った表情のエルフがこちらを向く。少し敵意が治まっているように見える。

「少し話し合おう。エルフと人間、お互いわからないことが多すぎるって」

 そもそもまず聞かなくちゃいけないことがあるし。

「名前を教えてよ。エルフって種族じゃない呼び方」

 その質問に、エルフは力なく微笑むのだった。


+++

 エルフはリーフェンと名乗った。
 そして話してみればそりゃ人間不信にもなるわと思った。
 人間がエルフの監視をしているとき、エルフの食事ももちろん出されていた。ここにいるときだってそうだ。だがその食事はリーフェンにとっては毒の寄せ集めにしか見えなかったという。スープなどの食材から味付けの調味料まで、エルフが食べてはいけないというものばかりだったそうだ。そうなると食べれそうなパンや水まで何か仕込まれているのではないかと疑ってしまうのも無理はない。
 だってザ・毒のスープにしか見えないものがあったら、逆にそうじゃない方がもしかしたら気づかないだけでもっとマズい毒が入っているって思っちゃうじゃん。ミスリード感じちゃうじゃん。
 そうなるとリーフェンの脳内に、人間は自分を殺すかそれに似た悪意を持っているという図式が成り立ってしまう。よって元々良い感情のなかった人間を信じることはできなくなる。もし話してしまったらその時点で殺されると確信してしまった。そうなると人間の為すこと話すことが敵意あるものに見えてしまう。
 人間も人間側でエルフとエイリアンが同じ臭いで、かつエイリアン騒ぎはリーフェンが現れてからだ。俺もだけど、エルフとエイリアンが繋がっていると思ってしまうだろう。エルフと関係ないといったら嘘だけど、それをいったら人間とも関係あったしね。人間とエルフのハーフなわけだし。
 それにプラスしてリーフェンと接触が長くなるにつれて、不穏な目でリーフェンを見るのだ。これはリーフェンの顔がいい(俺の好みとしては別だが)のと雰囲気、おそらくエルフ独特のものが人間を引き寄せるんだろう。もしかしたら昔の人間はこれにあらがえなかった可能性もある。その可能性はあまりにも安易だし今となってはもう確認しようもないんだけど。

 基本的に俺が話をして、エマがルレイドの指示を聞きながら補足したいところを聞いていった。やはりリーフェンの美少女顔のせいか男よりも女の方がまだ耐性があるようだ。しかもお茶の件で勘違いをしてしまったからか、リーフェンも若干エマに対して対応は柔らかい。若干ではあるけれど。

 そしてエルフのことも教えてもらった。基本的に千年近く生きられるということ。そのためあまり人口を増やすことはできず婚姻出産の決まりが厳しいこと。魔法は植物の魔法。あの蔓のようなものだけではなく、木や草なども土壌や環境で変化はあるが自由自在に育てられる。あの蔓はあれが1番早く成長でき、かつ俊敏に動かすことができるからだそうだ。植物の中にはもちろん食べられるものや薬となるものもあるため、能力さえ使えれば子だけでも生き残ることは難しくないらしい。それもあってリーフェンは人間と接する以外、結界を解くことに躊躇いはなかったという。
 他にも細々と教えてもらったが、ここでは省略しよう。

 一通り聞き終え、そして今俺は何をしているかというと。
 鍋の中身をかき回している。


 ・・・・・・突拍子もないことだってのはわかってるぞ!! 俺も鍋かき混ぜながら何やってんだろうなって思ってるよ! さっきまでシリアスっぽかったし、なんならここしばらくはシリアスってたのにね!!
 原因というか発端はリーフェンがよく出していた蔓からできる実を見せてもらったことだ。この実だけでエルフが最低限生きていくのに十分な栄養と水分を得られるらしい。人間から出された食べ物が食べられないため、これで飢えを凌いだらしい。スープは食べられないし、水はこぼし、パンは隠して窓から捨てていたそうだ。
 リーフェンがいうこの実、コロニジアだが一口だけ齧ったがすぐに吐き出してしまった。口に入れた瞬間、人間が食べられるものではないと体が反応したのだ。この反応にリーフェンは不満げだったが、先ほどのお茶の件もあって種族の違いというのを再確認したようだった。
 それで俺はこの実をなんとかして食べられないかと、水と一緒に鍋に入れて火にかけてみた。このとき異臭がしたので室内ではなく外でやっている。ルレイドがいるから簡単に火をおこせるしね。
 その結果、もっとヤバいものが出来上がった。この世界では嗅いだことのない化学製品を燃やしたような臭いだ。鼻つまんじゃったよ。そしてなんかドロドロと抵抗のある感触してるし。混ぜにくいから調理器具じゃなくて木の棒使ってるわ。
 今更ながら確信する。これ絶対に食えない。
 くっそおおおおお。異世界転生あるあるの食べ物錬成とかできないかなって思ったけど、そう簡単にいくわけないわな!! 別に料理得意でもないし、実家暮らしで当たり前のように母親に作ってもらってたやつが料理で活躍できるわけねぇだろうが!!
 料理できる人だったら、この実を食べられるようにできたんだろうか。こんにゃくのごとく、食べれないもの×食べられないもの=食べれるものという、わけのわからん化学変化起こしたんだろうか。俺には無理だ。諦めとかそういうのではなく、完全に分野違いだ。

「何がしたかったんデスカ・・・・・・」

 リーフェンが呆れた顔で俺を見ていた。やめて、そんな目で見ないで。
 エルフもこの実はそのまま食べる以外の食べ方はないらしい。鍋に入れて異臭のあるそれを食べようという気はまったく起きないようだ。エマもルレイドも、これは食べるものじゃないと断言していた。ですよねー。

 俺はため息を吐きながら作業を止め、木の棒を鍋から持ち上げた。灰色のドロドロしたものが木の棒にくっついてて、うへぇ・・・・・・となる。ドロドロのそれは火から離すとすぐに凝固したようで木にへばりついている。

 これ、剥がれるのかな。

 冷めたのを確認してから爪で引っかいてみると、簡単にペリペリと木の棒から取り外せた。端からくるくると巻き上げるようにして剥がしていく。そしてスポンと木の棒からそれは抜けた。

 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。完成したそれを見て言葉を失う。
 くるくると巻き上げたそれを引っ張ってみる。伸縮性があった。まるでゴムのようだ。ってかゴムじゃねぇか。混ぜやすいようにある程度太さのある木の棒を選んでしまったから、まるでコンドームのようだ。

 俺は無言でもう一度、鍋に木の棒を入れた。ドロドロの液体が木の棒にくっついたら鍋から出す。冷ます。剥がす。やっぱりコンドームが完成する。

「・・・・・・・・・・・・ふっ」

 俺は笑った。そして膝から崩れ落ちた。

「ちょっと、いくら失敗したからってそこまで気落ちすることないデショウ!?」

 リーフェンが慌てて俺に言う。どうやら心配してくれたようだ。
 でも違う。違うんだ。失敗とか成功とかそういう問題じゃないんだ。







 この世界に同性愛という概念を作ってしまった俺が、最初に発明したものがコンドームって・・・・・・・・・・・・。


 情けなさすぎて涙出るわああああああああああああああああああ。



~~~~~~~~~~~

 異世界に行ったら、なんか発明するのはあるあるですよね!!!

 ちなみにエイリアンの設定は2年前くらいに友人との会話で確定しましたが、自分でも書いててウプッとなってます。書き方マイルドにしているので、平気な人はむしろ物足りないくらいかと。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

専属奴隷として生きる

佐藤クッタ
恋愛
M性という病気は治らずにドンドンと深みへ堕ちる。 中学生の頃から年上の女性に憧れていた 好きになるのは 友達のお母さん 文具屋のお母さん お菓子屋のお母さん 本屋のお母さん どちらかというとやせ型よりも グラマラスな女性に憧れを持った 昔は 文具屋にエロ本が置いてあって 雑誌棚に普通の雑誌と一緒にエロ本が置いてあった ある文具屋のお母さんに憧れて 雑誌を見るふりをしながらお母さんの傍にいたかっただけですが お母さんに「どれを買っても一緒よ」と言われて買ったエロ本が SM本だった。 当時は男性がSで女性がMな感じが主流でした グラビアも小説もそれを見ながら 想像するのはM女性を自分に置き換えての「夢想」 友達のお母さんに、お仕置きをされている自分 そんな毎日が続き私のMが開花したのだと思う

【短編ホラー集】迷い込んだ者たちは・・・

ジャン・幸田
ホラー
 突然、理不尽に改造されたり人外にされたり・・・はたまた迷宮魔道などに迷い込んだりした者たちの物語。  そういった短編集になりはたまた  本当は、長編にしたいけど出来なかった作品集であります。表題作のほか、いろいろあります。

【SF短編集】機械娘たちの憂鬱

ジャン・幸田
SF
 何らかの事情で人間の姿を捨て、ロボットのようにされた女の子の運命を描く作品集。  過去の作品のアーカイブになりますが、新作も追加していきます。

鋼の殻に閉じ込められたことで心が解放された少女

ジャン・幸田
大衆娯楽
 引きこもりの少女の私を治すために見た目はロボットにされてしまったのよ! そうでもしないと人の社会に戻れないということで無理やり!  そんなことで治らないと思っていたけど、ロボットに認識されるようになって心を開いていく気がするわね、この頃は。

【短編集】エア・ポケット・ゾーン!

ジャン・幸田
ホラー
 いままで小生が投稿した作品のうち、短編を連作にしたものです。  長編で書きたい構想による備忘録的なものです。  ホラーテイストの作品が多いですが、どちらかといえば小生の嗜好が反映されています。  どちらかといえば読者を選ぶかもしれません。

ポチは今日から社長秘書です

ムーン
BL
御曹司に性的なペットとして飼われポチと名付けられた男は、その御曹司が会社を継ぐと同時に社長秘書の役目を任された。 十代でペットになった彼には学歴も知識も経験も何一つとしてない。彼は何年も犬として過ごしており、人間の社会生活から切り離されていた。 これはそんなポチという名の男が凄腕社長秘書になるまでの物語──などではなく、性的にもてあそばれる場所が豪邸からオフィスへと変わったペットの日常を綴ったものである。 サディスト若社長の椅子となりマットとなり昼夜を問わず性的なご奉仕! 仕事の合間を縫って一途な先代社長との甘い恋人生活を堪能! 先々代様からの無茶振り、知り合いからの恋愛相談、従弟の問題もサラッと解決! 社長のスケジュール・体調・機嫌・性欲などの管理、全てポチのお仕事です! ※「俺の名前は今日からポチです」の続編ですが、前作を知らなくても楽しめる作りになっています。 ※前作にはほぼ皆無のオカルト要素が加わっています、ホラー演出はありませんのでご安心ください。 ※主人公は社長に対しては受け、先代社長に対しては攻めになります。 ※一話目だけ三人称、それ以降は主人公の一人称となります。 ※ぷろろーぐの後は過去回想が始まり、ゆっくりとぷろろーぐの時間に戻っていきます。 ※タイトルがひらがな以外の話は主人公以外のキャラの視点です。 ※拙作「俺の名前は今日からポチです」「ストーカー気質な青年の恋は実るのか」「とある大学生の遅過ぎた初恋」「いわくつきの首塚を壊したら霊姦体質になりまして、周囲の男共の性奴隷に堕ちました」の世界の未来となっており、その作品のキャラも一部出ますが、もちろんこれ単体でお楽しみいただけます。 含まれる要素 ※主人公以外のカプ描写 ※攻めの女装、コスプレ。 ※義弟、義父との円満二股。3Pも稀に。 ※鞭、蝋燭、尿道ブジー、その他諸々の玩具を使ったSMプレイ。 ※野外、人前、見せつけ諸々の恥辱プレイ。 ※暴力的なプレイを口でしか嫌がらない真性ドM。

神様のポイント稼ぎに利用された2

ゆめ
BL
 女神様から便利なスキルセットを授かり異世界転生した僕。  あれから約一年、気付いたら一妻多夫の子沢山。  今日ものんびりライフを謳歌します。 ※R指定なシーンや残酷な描写が発生しても予告はないです。 ※他シリーズから主人公が出張してます、積極的に物語を引っかき回します。 別サイトにも掲載中

二度目の人生は、地雷BLゲーの当て馬らしい。

くすのき
BL
夕方のクリスマス。 恋人の為に買い物に出た佐竹 紫は、行きつけの喫茶店で恋人の浮気現場に遭遇する。 すぐさま携帯端末で別れを告げ、帰宅した家の中で今度は、恋人からのプレゼント(BLゲーム)を見つけてしまう。 『あとで一緒にプレイしよう』 その文面に怒りを覚え、床に投げつけた次の瞬間、紫は意識を失ってしまう。 そして次に目を覚ました先では、  おめでとうございます。  前世の記憶を取り戻しました。  貴男にとっては、地雷のBLゲーム  『Bind』の世界へようこそ。  当て馬キャラではありますが、  どうか二回目の人生を  ユニ・アーバレンストとして  心ゆくまでお楽しみください  という謎画面が表示されていた。 なんとか状況把握に努めようとする紫ことユニだが、周りにいる仲間は元恋人の声そっくりな攻略キャラクターと、汚喘ぎんほぉ系悪役顔中年カップルだった。 ……離れよう。 そう決意を新たにしていたら、昔の屑系元彼も転生していて、あまり会いたくなかった肝心のヒロイン(♂)はチュートリアルセッ●スならぬ敗北セッ●ス中(異種姦)だった。 この世界、本当に何なの!? おまけにスケベするまで出られない部屋で3Pとか、マジ勘弁してくれ! 表紙絵はAI生成したものですが、ちょいちょい反逆にあい、一番マシなこれに落ち着きました。 そばかすがログアウトしておりますが、心の目で追加していただけると有難いです。

処理中です...