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■第23話 西の国 マフォール その11

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カミルさんとレベッカさんとエリーとの三人を、
初めて相手してからもう3日経った。
呪いの解呪から既に1週間は経とうとしている。

あれから3日3晩ずっといちゃいちゃこらこらしていた。
レベッカさんも最初は「優しくしてくだされ」とか言っていたものの、
3日目になってからは慣れたのか自分から求めるようになった。
人の体力は亜人と比べると少ない。だがレベッカさんはその域を既に超えていた。
亜人のカミルさんと、人のレベッカさんとエリーを三人相手にするには余裕はあるにせよ、3人とも元気すぎる。
まぁまだ俺はあと4人増えても問題ないくらいには有り余ってるけどね。
その4人分を3人にぶつけているのだ。そこのベットで3人ともぐったりしているのは仕方がないのだろう。

まぁそういう話もしていて尽きないのだが、
そろそろセシルの動向が気になる。
あれから1週間も経っているのになんの音沙汰もない。
逆に心配になってくる。
これはあれだな、
校舎裏に呼び出して告白をして、
OKが出たのにも関わらず、相手からは挨拶さえなにも返ってこない。
本当に付き合っているのか分からなくなってくるという不安と同じだね!!
え?ちょっと違うんじゃないかって?細かいことは気にしない気にしない。

さて、呪いの方は本当に解呪出来ているので、
もしかしたら既に気づいてなにか仕掛けに来る準備をしているのではないだろうか。
それとも俺のことを探っていて、国王がそれを阻止しているのか。
まぁどっちにしろそろそろケリつけたいし俺から出向こうかな。

と考えていたその時。

コンコンコン

ノックの音が聞こえてきた。ドアは開けようとしない。
そのままの状態で向こうから声が聞こえてきた。

「マサキ様。早急にお伝えしたことが御座います。
国王様の私室へ来ていただけませんでしょうか。」

「分かりました。準備したら向かいます。
あ、カミルさん達はどうしますか?」

「いえ、カミル様はまだお休みでしょう。そのままで結構です。」

「分かりました。」

さてなんの話なんだろう。





◆◆◆





準備を整え、早急に国王の私室へ向かう。

コンコンコン

「私です。マサキです。」

「入ってくれ。」

「失礼致します。」

ドアを開けるとそこには国王と王妃、それから見慣れない金髪オールバックがそこに座っていた。
服装を見たところいい所の人っぽい。凄く高そうなネックレスに指輪までしている。
その男を見るとすぐに口を開いた。

「この男が?見るからに貧相の無い奴だ。私に歯向かおうとは100年早いわ。
そこで土下座でもして謝罪でもしてみれば許してやってもよいぞ。」

なんだこの野郎。やってもいい?やってもいいか?
いや国王の前だ。流石にやめておこう。
だがちょっとムカついた。威圧までは出さないにしろそれ相応の言い方をしてやろう。

「あ?誰だこいつ。てめぇこそなに失礼なこと並べてくれちゃってんの?八つ裂きにされたいの?」

「き、貴様!!!我に口答えするつもりか!!!」

「あ?自己紹介も自分から出来ないやつがなに言ってんだ。それともママにそんなことも習わなかったのでちゅか~?」

「き、貴様!!!!!!!!!首と胴が未来でくっついているとは思うなよぉぉぉぉ!!!!」

そいつ。金髪オールバックは俺に向かって帯刀していた、剣を首の所をめがけて右から左へ抜刀してきた。
そんな攻撃はマサキには通用するわけもなく、左手の人差し指と中指で剣先を挟む。

「き、貴様...!」

「おい金髪オールバック。抜刀してきたってことは死の覚悟があって、この剣を俺に向けてきたんだよな?」

「な、なにを...。」

「だーかーらー。これを俺に向けてんだ。死ぬ覚悟くらいあるんだろ?」

「貴様が私に歯向かったのだ!!死の覚悟うんぬんなんてあるわけがないだろう!!!!」

「はぁ。これだからお偉いさんは...困ったもんだねぇ...ねぇ?アルさんティアさん。」

国王と王妃は金髪オールバックが、
マサキに剣を振るって剣先を指で挟まれるまで一度たりとも声を発してない。
それもそのはず。マサキが金髪オールバックを煽るとは微塵も思っておらず、
あまつさえ、そんな煽り文句で怒りに任せて剣を振るうとは思っていなかったのだ。

「あ、あぁ。マサキの言う通りだ。」

「そ、そうですね...。」

「ほら。国王も王妃もあんな事言ってるぞ。どうすんだこの後始末。」

「き、貴様ら!!呪いの事を忘れたわけではあるまいな!!!」

あぁ...こいつセシルだったのか。どうりで国王と王妃が強く言えないわけだ。
というかセシルは呪いが解呪された事を知らないのか?
もしかして契約書は金庫の中でそれを随時確認してないってことなのか?

《その通りですマスター。》

おいおいまじかよ...ってなんでメーティス知ってんだ。

《常にセシルを監視しておりました故。》

あ、そうなのね...メーティス...恐ろしい子!!
というわけでこの男、セシルはなにも知らない。
というかなにに歯向かったって国王さんは言ってくれたんですかね?ちょっとあとでお仕置きかな?
そして、1から説明するのは面倒、というより俺の事が知れるのはどうあがいても、面倒事に直結する。
なので俺が解呪した。それだけ言っておこう。
力の末端も見せたくはないけど威厳ってのを見せなければな。もちろん国王と王妃のね?

「さて。セシル。お前の後始末どうつけようか。」

「な、なんの話だ!」

「いやね?この王族の呪いさ。俺が解呪したからさ。
もうあんたの言いなりになることなんて一切ないのよね。」

「っは!なにを馬鹿な!貴様如きが呪いの解呪が出来るはずもない!!
むしろ宮廷魔道士100人呼んでも大丈夫なはずだ!!!」

なにそのツッコミ入れて下さいと言ってるかのようじゃない?

「あ~まぁ俺の力知らないもんね。
あ、そういえばマイザンは捕縛してるから。あいつは極刑で死刑になるから。」

「な、なんの話だ。そのマイザンとやらは我は知らん!!!」

「しらばっくれても無駄だって。
どうせカミルさんがいなくなった所で契約違反とかなんだの言って王座を取ろうとしたんだろ?
情けないね~自分の力でのし上がれもしないのに人の力でのし上がろうなんて。他力本願も良いところだわ。」

「なにを根拠もない事を!!」

「根拠って言われてもなぁ知ってるんだから仕方ない。なんなら契約書今から持ってくるか?」

「お前にあの在り処を探せる訳がない!!」

「おっと。とうとう口走っちゃったよ。よくそんな頭で大公になれたもんだな。まぁお前の力じゃない訳だけど。」

「ぐぬぬ...うるさいうるさいうるさい!!...こうなったら...皆殺しだ!!!
リング発動!隷従の証!!ハッハッハッ!!!これでお前も俺の配下だ!!!
お前の四肢もろとも切り落として牢屋に一生ぶち込んでくれるわ!!!
さぁ俺の前で跪け!!!!」

.........。

「な、なぜだ!!なぜ言うことを聞かない!!!」

「何故って俺にその魔法の耐性があるからな。てかちょっとは危機感ってのを覚えろよ。脳筋(脳みそ筋肉)かよ。」

俺はそのセリフを吐くのと同時にショルダーホルスターに装備していたコルトパイソンをセシルの額に押し当てる。

「な...な...。」

「あぁこれ?これねぇ。銃ってやつなんだわ。この世界にあるのかな?まぁどっちでもいいけど。
これの威力ね。一発山に打ち込んだら山もろとも吹き飛ぶくらいには調整できるよ。
まぁ今は鉛よりも脆い土でできてるから、人1人くらいが吹っ飛ぶ計算かな。」

そのセリフを聞いてか聞かずか、セシルの足から暖かく、アンモニア臭のする液体が流れていた。

「うわ。きったな。お前それでも男かよ。はぁ...。ここの掃除は流石に女性にはさせられないな。
おいセシル。自分で掃除しろよ。自分のケツは自分で拭けってな。あ、これ違うかな?」

うんうんいい気味だ。長年カミルさんを精神的に傷つけてきたんだ。
このくらいの腹いせはさせてもらって当然だろう。
あんな幸せそうなカミルさんの笑顔をこんな碌でもないやつなんかに傷つけられてたまるか。

そんなこんなでセシルは色々白状した。
自分が王座を取ろうとしていた事。民を裏で操っていた事。女を女と見ず自分の私利私欲の為に使っていたこと。
奴隷商から女や金を巻き上げていたこと。契約書の在り処の事。ホント全部だ。
それにしてもまじで屑野郎だな。裏がこれなら民のみんなは怒りを通り越して呆れるんだろうな。
まぁそもそも解呪したんだ。セシルの処遇は死刑なんて甘ったるいだろ。
俺なら無期懲役で一生牢屋暮らしで裁くだろうな。それも餓死寸前で一生。





◆◆◆





そして3日が経った日のこと。セシルの処遇が決まった。死刑だ。
俺はまさかとは思っていたが、本当の事らしい。
そしてセシルの家で私利私欲の為に使われていた女性達は、
全て国王の元でメイドとして扱う事になった。
全ての女性。それも妻となった者や子供でさえもセシルを嫌っていた。ある意味凄い。
ここまでの嫌われ者はそうそういない。
ホント私利私欲の為だけに集めていたんだな。しかも逆らったら体罰だ。そりゃあ嫌う。
中には四肢がなくなっていた者までいた。止血はされているので死にはしない、が、心が既に壊れていた。
それも1人じゃない。そんな女性達には俺からのささやかなプレゼントとして全て元通りにしてあげた。
かなり泣きつかれた。一生お側で仕えたいという者はまだいい。だが未だ心が壊れて居るものまでいた。
心が壊れている者に関しては国王が全面的に癒やしを与えると断言していた。四肢をなくした女性にも子供がいた。
その子達には何不自由なく暮らせるようにするとも言っていた。
とりあえずはいいとして。仕えたいと申し出てきた女性を数えてみた。...10人は居た...。
どうするか...。てか俺本当に面倒事しか関わってないな!?その時...。

「マサキよ。君には大公の爵位を与えたいと思っている。な~に別に何かを成し遂げろとは言わんよ。
自由にしてくれて構わない。それこそそこの者たちが仕えたいと言っているのだ。
貴族たるもの一件くらい家がなくてなは。なのでこれはティアからだ。」

国王は右手にもっている1枚の羊皮紙を渡してきた。
そこには、



----------------------------------------------------------------------
               贈呈


カンザキ・マサキ殿

貴殿は類稀なる才能と力を持って
王族と民を非道な者から守ってくれた
その礼として貴殿にいくつかのものを贈呈しよう

・大公の爵位を授与する。
・王妃の持ち家1つ
・白金貨500枚
・メイド10名ならびにメイドに教育するメイド長1名


----------------------------------------------------------------------



「いいのですか?こんな待遇処置。俺には宝の持ち腐れになるのでは...。」

「マサキよ。本当に自由にしてくれ。これは王族と民の皆からの礼なのじゃ。
この国代表として渡している。素直に受け取ってくれる事を願っているよ。」

「分かりました。引き受けます。ありがとうございます。」











そして俺はこの日から、大公の爵位と11名のメイドと大金と持ち家を持つことになった。
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