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三章 元おっさん、竜王退治へ
38 遮二無二
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騎士団が到着し、火が燃え盛るミデール山にて竜王・ロヴィーナと戦う。
激戦になるのは火を見るよりも明らかだった。疲労困憊している中、追い討ちをかけるように、炎をまた吐く。
(あー、もう、あん時にあの魔法放つのはやめた方がよかったな)
まさかあそこまで固いとは予想外。魔力がほぼ底をつきそうなこの状態。ヴィーゼに託されたのは、このマーナガルムの魔剣のみだった。
周りにいる魔物達も、少しずつ倒されていく。
「ぐっ、『森へ避難しろ! ひっそりと息を潜めて!』」
魔物達にそう指示する。ヴィーゼの魔力では、これが限界に近い。
ヴィーゼの声を聞いた魔物達は、大人しく森へと避難した。近くにある森といえば、ヴィーゼの出身地。
あそこは緑豊かな場所であり、火は燃え移っていないため、安全とは言える。
周りにいた魔物達は、ヴィーゼの指示で森へと避難した。先程まで一緒に戦い、魔剣を取りに来てくれたマーナガルムを抜いて。
(どうして君は……)
『ウォォォォォン!』
周りからしたらただ泣き声を発したようにしか、聞こえない。だが、ヴィーゼからしたらそれがどんな意味を持つのか。それは安易にわかる。
未だに翼を羽ばたかせている、竜王・ロヴィーナ。
その勇ましさを感じさせるその体格と、それを貫かせる凄まじい威力の攻撃。
叩き落とすこともできない。魔力さえもほぼない。空中戦を得意としているものは、ここには居ない。
(………ここには?)
そう。ここには居ない。羽を持ち、空を飛ぶものは。居ないのなら、召喚すればいい。
アンナの家に住んでいる、グリフィンを——。
(って、魔力ないじゃん)
魔物たちを避難させるために、魔力を確実に消費した。魔力を使いすぎると人体に影響を与える。
魔力がほぼない状態で、限界突破させるような魔法を放てば、それは“死”を意味する。
体に多大な負荷をかけ、その体は持たなくなる。
それを態々実行するのは、とてもじゃないが、リスクが高い。それに召喚ともなれば、離れている距離から呼び出すには、それ相応の魔力消費を伴う。
(あー、最悪)
感情流され、こうなってしまった事を後悔している。
ヴィーゼの考えでは、召喚でフィンを呼ぼうとし、そこから空中戦に持ち込む。だったのだが、今考えれば魔力が全くないことに気づく。
「———『氷刃』!!」
アンナは自身の持っている剣を振り翳す。
横へと薙ぎ払い、そこから飛び出す一つの氷。
それを顔に食らったロヴィーナは、再び地上に降りる。弱点は“氷”
それは理解した。そしてもう一つのことを思考の中で考える。
(もしかしたら、顔に当てればダウンを取れるんじゃないか?)
だった。今までは体に当てていた。ならば、その攻撃一撃一撃を顔に食らわせれば、確実にダウンを取れるだろう。と——。
(そういえば、よくゲームとかで顔に攻撃を当てれば倒しやすい……とかあったはず…)
それを思い出し、今地面にいるロヴィーナの顔との距離を詰める。
未だに飛び立つ瞬間が見えない。この瞬間を。
今残っている自分の力を振り絞って、地面を大きく蹴り、そして距離を詰める。
高低差が存在するロヴィーナの体よりも高く飛び立てるように、再び地面を蹴った。
ロヴィーナの顔が近くに見えるこの状態、そして地面との高低差が大きく開いたこの瞬間。
魔剣を持つこの絶好なチャンスを無碍にしない程度にし、肩から落とすようにロヴィーナの顔面を狙って叩き落とした。
———ドゴッ!! ズバッ!!
そのような音を立て、次々と顔面を切り裂いていく。
顔は意外にも胴体より柔らかく、切りやすさを感じる。
「これで、終われ!!」
炎が散りばめくこの状況。体全身にその熱が来るが、それを振り切って何度も攻撃する。
そして持っていた魔剣でロヴィーナの顔に突き刺した。幼女の体となっているヴィーゼからしたら、かなりのキツさ。
かなりの大変さが体にのしかかる。だが、その負担とともにロヴィーナを切り裂き、撃退する事が出来た。
地面に降り立ち、息を切らす。荒々しくなる息と、全身の体の熱さ。汗が湧き出てくるほどの気温。
重量が重たいこの魔剣を持ちながらの、あの動きはかなり体に来る。
竜王・ロヴィーナとの交戦は、かなりの時間が経ってから終幕した。
それと同時に頭に流れてくるステータス画面の状況。
竜王・ロヴィーナを倒した事により、レベルが大きく上がる。40だったレベルが20も上がった。
美味しすぎる。
(お、レベル60になった。と言うことは、使役可能なレベルがBに上がった……。え、って事はマーナガルム使役出来るじゃん)
それを確認し、一緒に戦っていたマーナガルムの元へと急ぐ。それと同時に動き出す騎士団たち。
竜王・ロヴィーナを倒したヴィーゼに驚きの目を向け、竜王・ロヴィーナの素材を取る。
ドラゴンの肉、ドラゴンの皮、ドラゴンの角や爪、それら全て削ぎ落とし、国へと持って帰る。山の消化を行いながら。
そして、ヴィーゼの活躍は瞬く間に国全体に広がる。王宮にいる大臣の耳にも入り、一つの可能性が湧き出た。
「どうして、あの少女に竜王・ロヴィーナの封印が解け、そして倒せたのか…。もしかしたら、この国からは召喚せずとも、勇者がいたのかも知れないな」
そう呟いた。後日としてはその【マーナガルムの魔剣】はヴィーゼのものとなり、マーナガルムはヴィーゼの使役する魔物の1人?となった。
激戦になるのは火を見るよりも明らかだった。疲労困憊している中、追い討ちをかけるように、炎をまた吐く。
(あー、もう、あん時にあの魔法放つのはやめた方がよかったな)
まさかあそこまで固いとは予想外。魔力がほぼ底をつきそうなこの状態。ヴィーゼに託されたのは、このマーナガルムの魔剣のみだった。
周りにいる魔物達も、少しずつ倒されていく。
「ぐっ、『森へ避難しろ! ひっそりと息を潜めて!』」
魔物達にそう指示する。ヴィーゼの魔力では、これが限界に近い。
ヴィーゼの声を聞いた魔物達は、大人しく森へと避難した。近くにある森といえば、ヴィーゼの出身地。
あそこは緑豊かな場所であり、火は燃え移っていないため、安全とは言える。
周りにいた魔物達は、ヴィーゼの指示で森へと避難した。先程まで一緒に戦い、魔剣を取りに来てくれたマーナガルムを抜いて。
(どうして君は……)
『ウォォォォォン!』
周りからしたらただ泣き声を発したようにしか、聞こえない。だが、ヴィーゼからしたらそれがどんな意味を持つのか。それは安易にわかる。
未だに翼を羽ばたかせている、竜王・ロヴィーナ。
その勇ましさを感じさせるその体格と、それを貫かせる凄まじい威力の攻撃。
叩き落とすこともできない。魔力さえもほぼない。空中戦を得意としているものは、ここには居ない。
(………ここには?)
そう。ここには居ない。羽を持ち、空を飛ぶものは。居ないのなら、召喚すればいい。
アンナの家に住んでいる、グリフィンを——。
(って、魔力ないじゃん)
魔物たちを避難させるために、魔力を確実に消費した。魔力を使いすぎると人体に影響を与える。
魔力がほぼない状態で、限界突破させるような魔法を放てば、それは“死”を意味する。
体に多大な負荷をかけ、その体は持たなくなる。
それを態々実行するのは、とてもじゃないが、リスクが高い。それに召喚ともなれば、離れている距離から呼び出すには、それ相応の魔力消費を伴う。
(あー、最悪)
感情流され、こうなってしまった事を後悔している。
ヴィーゼの考えでは、召喚でフィンを呼ぼうとし、そこから空中戦に持ち込む。だったのだが、今考えれば魔力が全くないことに気づく。
「———『氷刃』!!」
アンナは自身の持っている剣を振り翳す。
横へと薙ぎ払い、そこから飛び出す一つの氷。
それを顔に食らったロヴィーナは、再び地上に降りる。弱点は“氷”
それは理解した。そしてもう一つのことを思考の中で考える。
(もしかしたら、顔に当てればダウンを取れるんじゃないか?)
だった。今までは体に当てていた。ならば、その攻撃一撃一撃を顔に食らわせれば、確実にダウンを取れるだろう。と——。
(そういえば、よくゲームとかで顔に攻撃を当てれば倒しやすい……とかあったはず…)
それを思い出し、今地面にいるロヴィーナの顔との距離を詰める。
未だに飛び立つ瞬間が見えない。この瞬間を。
今残っている自分の力を振り絞って、地面を大きく蹴り、そして距離を詰める。
高低差が存在するロヴィーナの体よりも高く飛び立てるように、再び地面を蹴った。
ロヴィーナの顔が近くに見えるこの状態、そして地面との高低差が大きく開いたこの瞬間。
魔剣を持つこの絶好なチャンスを無碍にしない程度にし、肩から落とすようにロヴィーナの顔面を狙って叩き落とした。
———ドゴッ!! ズバッ!!
そのような音を立て、次々と顔面を切り裂いていく。
顔は意外にも胴体より柔らかく、切りやすさを感じる。
「これで、終われ!!」
炎が散りばめくこの状況。体全身にその熱が来るが、それを振り切って何度も攻撃する。
そして持っていた魔剣でロヴィーナの顔に突き刺した。幼女の体となっているヴィーゼからしたら、かなりのキツさ。
かなりの大変さが体にのしかかる。だが、その負担とともにロヴィーナを切り裂き、撃退する事が出来た。
地面に降り立ち、息を切らす。荒々しくなる息と、全身の体の熱さ。汗が湧き出てくるほどの気温。
重量が重たいこの魔剣を持ちながらの、あの動きはかなり体に来る。
竜王・ロヴィーナとの交戦は、かなりの時間が経ってから終幕した。
それと同時に頭に流れてくるステータス画面の状況。
竜王・ロヴィーナを倒した事により、レベルが大きく上がる。40だったレベルが20も上がった。
美味しすぎる。
(お、レベル60になった。と言うことは、使役可能なレベルがBに上がった……。え、って事はマーナガルム使役出来るじゃん)
それを確認し、一緒に戦っていたマーナガルムの元へと急ぐ。それと同時に動き出す騎士団たち。
竜王・ロヴィーナを倒したヴィーゼに驚きの目を向け、竜王・ロヴィーナの素材を取る。
ドラゴンの肉、ドラゴンの皮、ドラゴンの角や爪、それら全て削ぎ落とし、国へと持って帰る。山の消化を行いながら。
そして、ヴィーゼの活躍は瞬く間に国全体に広がる。王宮にいる大臣の耳にも入り、一つの可能性が湧き出た。
「どうして、あの少女に竜王・ロヴィーナの封印が解け、そして倒せたのか…。もしかしたら、この国からは召喚せずとも、勇者がいたのかも知れないな」
そう呟いた。後日としてはその【マーナガルムの魔剣】はヴィーゼのものとなり、マーナガルムはヴィーゼの使役する魔物の1人?となった。
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