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二章 元おっさん、帝国へ

30 封印解かれし青竜

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目を覚ますとランスが庶民の服を着ていた。
何やら不穏な気配。そう思わせるような暗い顔。聞くことさえできず、俺はそのままベットから立ち上がる。ふかふかなベットで眠ると、疲れが取れる。体が多少は軽くなり、俺は部屋を出て階段を降りる。
この宿屋は三食食事付きで金貨1枚と、安くなっている。異世界での宿料が幾らか知らないが、一万円程度で泊まれる場所はほとんど無いはずだ。しかも、こんな立派な宿屋なら。
3階建物で、一階では受付と食堂がセットでついている。自分でトレイを持ち、置かれている出来立ての食材を、皿に乗せ、メニューを選ぶ。
グラタンやパスタ、シチューにカレー。デザートなんかも用意されており、セットも可能だ。
食堂の中に入ると、泊まっていた人たちがほとんどであり、いろんな食材の匂いが漂う。
それはほとんどが美味しそうな匂いであり、空腹が誘われる。

(うまそ…)

俺はパスタとデザートのセットにし、トレイを持って食堂にあるテーブルに乗せる。
美味しそうな湯気が漂い、虫の音が鳴ってしまった。
お恥ずかしい…。
フォークを持って、パスタを掬う。絡みとり、パスタの麺を口へと運んでいく。
タバスコさえあったら…とか思いながら、パスタを食べる。
ミートソースが主なソース。そこにキノコが乗っており、相性はマッチしており、美味だ。

「おはようございます。ヴィーゼさん」
「あ、アンナさん。おはよう」

甲冑に着替えているアンナさんが、やって来た。
手にはトレイを乗せており、その上にはグラタンが乗せられている。

「お隣いいですか?」
「どうぞどうぞ」

隣にアンナさんは座り、一緒に朝食を食べる。
俺はアンナさんに聞いた。ランスがどのような状態かと。

「お嬢様ですか? あまりいい顔とは言えません」

そうですか。と、反応し、再びパスタを食べる。
そんな時、階段の方からランスが歩いて来た。真っ直ぐと俺たちの方へ歩く。

「今日も帝宮の方へ行くわよ!」

何を思ったのか、そう発言した。
俺たちはボケーと、しており、理解するのに時間がかかった。

ランスも朝食をモシャモシャと食べ、王女とは思えないほどの食いっぷりである。
急いで身支度を整え、再び帝宮の方へと行くこととなる。

♢♢♢

「何だ? また来たのか」
「えぇ、そうです」
「ったく、来るなと言ったよな!?」
「どうかしたのですか? お兄様」
「あぁ、帰って来ていたのか。ランスが来たんだよ」
「あら、そうでしたの。お久しぶりでございますね。ランス?」

初めてエレーナを見た。
その見下すような笑み。ランスとエレーナを悪女と決めるのなら、俺はエレーナに一票。
帝宮に足を踏み入れた時、エレーナとおそらくだが、他の兄弟たちも姿を見せていた。
俺とアンナさんは、片膝をつき、念のために敬意を払う。

「あらぁ? そちらの方は?」
「私の友人でございます」
「貴女の? へぇー、どこの貴族なのかしら?」

エレーナは兄弟たちの元から離れ、真っ直ぐに俺の方へとやって来た。俺は顔をさえあげず、答える。

「貴族などじゃありません」
「は?」

拍子抜けしたのか、皇女とは思えないドスの聞いた声を出す。
慌ててそれを元に戻したいのか、咳払いをした。

「私の耳も腐ったのかしら? 今何と?」
「だから、貴族のものじゃ無いです」
「じゃあ、庶民が帝宮に入っていると言うことね? いい? 貴女。ここはね、客を迎え入れるのは、あくまでも貴族! 貴女のような庶民に入られたりでもしたら、汚れちゃうじゃ無い!!」

なぜか説教?されているが、意味がわからん。
煽る?煽っていい?いやいや、ここは我慢しよう。

「そうですか。ですが、私はランスの友人でございます。それに、ランスを呼び出したのは、エレーナ様のようですね。その時偶然私も居ましたので、来ました」
(これで良いかな?)

「………そう。なら、今回だけは見逃すわ。ただし。今後この敷地内に入ることがないと思いなさい」

それだけを言い残し、エレーナは去る。
正直これでよかったのか、検討もつかないがエレーナは去った。あとは、ランスがどう言うのか。目の前にいる威風さを出している元婚約者に対して。

「……ともかく、ランス。俺とお前の関係は綺麗さっぱりに終わった。良いからもう帰れ」
「嫌です。私の話を聞いてください!」
「聞くことなど何も無い」

二人はと言うと、それの一点張り。
お互いが譲らず、時間は過ぎる。

「なら、勝手に話させていただきます。私は、エレーナ様を虐めてなどありません」
「今更何だ? お前はあの時と言ってたよな? それなのに、今更何だ? 良い加減しろ」
「ですから! 私は何もやっておりません! エレーナ様のあの傷は、自らやった事です!!」
「なら、その証拠を出せ!!」

とうとう痺れを切らしたのか、グロウは怒りを露わにする。

「………無いのだろ? 所詮、お前がやったに過ぎない。もう二度と、そんな顔を見せるなよ」

最後に罵倒だけを吐き捨て、グロウは玉座から立ち、その場から去っていく。その近くにいた兄弟たちもグロウの後をついていき、残されたのは俺とランス、アンナさんだけだった。

「………証拠を見つければ良いのね。良いわ。あの時、私が味わった屈辱を、エレーナにも味わせてやるわ! 私はやっていない。何も」

ランスも顔はそこまでじゃ無いが、声が怒りを表しているかのように、低くなっていた。
ランスは俺たちを振り切り、そのまま玉座の間から去っていく。俺たちも後を追うようにし、ランスの後ろをついて行った。

♢♢♢

「ランス……」
「………ヴィーゼ、ごめんなさい」
「………ランスが謝る事ないから。何かあるんだろ? なら、それを証明する……」

と、言おうとしたところ、空高くに大きな影が現れる。

「………何あれ」

突如現れたその影は、青いドラゴン。ランスは驚愕した顔で、空を見ていた。

「あれって、リアモス王国と姉妹竜の、青竜!? 何で!?」
「青竜は、確か帝国の地下深くに封印されているはず…。なのに、どうして!?」

何がどうなっているのか。分かったら苦労なんてしない。

「ねぇ、この国はフェニックスが紋章なんだよな? なら、何でドラゴンが?」
「確かに、この国ではフェニックスが紋章です。ですが、それとは別に古代から住む青竜がこの国を襲ってから、地下深くに封印されるようになったんです。原因としては……」
「原因としては、誰かが封印を解いた……。それが出来るのは、古代から受け継がれているルビーの指輪。それを持っているのは、帝族だけ…。こんな時にタイミングよく起きるなんて………」

ランスは苦虫を噛み締めたような、顔のなる。
国中は騒然とし、青色のドラゴンは、青のブレスを吐く。慌てて帝宮からやってきた、グロウとその兄弟。近くにランスが居たのを発見した、グロウは真っ先にランスを問い詰めた。

「おい、お前がやったのか?」
「違うわ。私じゃない」
「じゃあ一体誰がやったんだ!?」

流石に全部をランスに背負わせるのは、おかしい。
グロウがランスの肩を掴んでおり、俺はそれを振り払う。

「何だ、お前」
「グロウ様。全部をランスになすり付けるのは、如何な物かと。それに、ランスは帝宮を出てから、私たちと一緒にいました。普通に考えて無理です」
「…チッ」
「それより、エレーナ様はどちらに?ランスから聞きましたが、青龍の封印を解くには、ルビーの指輪が必要だと。それを持っているのは、のみだと。そうなれば、ここにいないグロウ様方の妹さん。エレーナ様じゃなくて?」
「違う、あいつじゃない」 

頑なに妹がやったと言うことを認めたくない、グロウ。そんな罪をなすり付けるなんて、妹に踊らされているんじゃないのか?
この状況なら、認めざるおえないじゃないか。
と言うより、行動が早過ぎる。
帰ってきてすぐに、封印を解くなど。何が目的か?それをすれば、自分がやったと認めなくちゃならない。

だが、早く止めないと。国が炎の海に包まれる———。
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