3 / 23
二十歳の七夕、あなたに逢いに
しおりを挟む
小児病棟の七夕は、短冊に込める願いごとも切実。
そとにいきたい。
元気になりたいとか、走り回りたいとか、そんな贅沢は言わない。
窓から見えるあの小高い丘から、天の川が見たい。
「二十歳の七夕に、あの丘で会おう」
彼は、七夕の今日転院する。
ずっと、隣のベッドにいた同志。
「二十歳……生きてるか分からないよ?」
「生きてるよ、絶対」
二十歳の七夕は、遠い未来と思っていた。
病院から見えた小高い丘に自分の足で辿り着けるなんて、あの頃想像もしなかった。
夜の闇と厚い雲が溶け合う空には、天の川どころか星一つ瞬いていなかった。
流れる天の川に乗って現れる筈だった彼は、来なかった。
彼はなんの病気だっただろうか。
心臓だ。私と同じだったから覚えてる。彼の方が重傷だったから、転院した。
ああ、そうなんだ。そういう事。
一気に力が抜けた。
泣きじゃくる私に友人が言った。
「七夕は、もう一日あるよ」
旧暦の七夕の夜は快晴だった。
奇跡の星空、天の川。
「きれい……」
この星の中にあなたがいるのならーー、
「久しぶり。よかった、生きてた」
星の瞬きは、神様の奇跡。
そとにいきたい。
元気になりたいとか、走り回りたいとか、そんな贅沢は言わない。
窓から見えるあの小高い丘から、天の川が見たい。
「二十歳の七夕に、あの丘で会おう」
彼は、七夕の今日転院する。
ずっと、隣のベッドにいた同志。
「二十歳……生きてるか分からないよ?」
「生きてるよ、絶対」
二十歳の七夕は、遠い未来と思っていた。
病院から見えた小高い丘に自分の足で辿り着けるなんて、あの頃想像もしなかった。
夜の闇と厚い雲が溶け合う空には、天の川どころか星一つ瞬いていなかった。
流れる天の川に乗って現れる筈だった彼は、来なかった。
彼はなんの病気だっただろうか。
心臓だ。私と同じだったから覚えてる。彼の方が重傷だったから、転院した。
ああ、そうなんだ。そういう事。
一気に力が抜けた。
泣きじゃくる私に友人が言った。
「七夕は、もう一日あるよ」
旧暦の七夕の夜は快晴だった。
奇跡の星空、天の川。
「きれい……」
この星の中にあなたがいるのならーー、
「久しぶり。よかった、生きてた」
星の瞬きは、神様の奇跡。
0
お気に入りに追加
6
あなたにおすすめの小説
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
身分差婚~あなたの妻になれないはずだった~
椿蛍
恋愛
「息子と別れていただけないかしら?」
私を脅して、別れを決断させた彼の両親。
彼は高級住宅地『都久山』で王子様と呼ばれる存在。
私とは住む世界が違った……
別れを命じられ、私の恋が終わった。
叶わない身分差の恋だったはずが――
※R-15くらいなので※マークはありません。
※視点切り替えあり。
※2日間は1日3回更新、3日目から1日2回更新となります。
特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった
なるとし
ファンタジー
鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。
特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。
武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。
だけど、その母と娘二人は、
とおおおおんでもないヤンデレだった……
第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。
骸骨と呼ばれ、生贄になった王妃のカタの付け方
ウサギテイマーTK
恋愛
骸骨娘と揶揄され、家で酷い扱いを受けていたマリーヌは、国王の正妃として嫁いだ。だが結婚後、国王に愛されることなく、ここでも幽閉に近い扱いを受ける。側妃はマリーヌの義姉で、公式行事も側妃が請け負っている。マリーヌに与えられた最後の役割は、海の神への生贄だった。
注意:地震や津波の描写があります。ご注意を。やや残酷な描写もあります。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる