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キミの瞳に映るもの2
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篤の打球がスタンドに入った瞬間、夏菜子の頭が真っ白になった。篤のホームランをみたのは中学の時以来だったから――。
ホントに打った。ホームに戻ってくるその時まで……いや、ベンチに入ってしまうその瞬間まで――夏菜子は一秒たりとも篤から視線を逸らしたくはなかった。でも……彼がホームベースを踏む頃にはもう涙で全然見えなかった――。
スタンドで応援している一年生部員達が興奮冷めやらぬ状態で盛り上がっていた。
「やっぱり緒方先輩スゲーよ!」
「あそこで打てるんだからなー」
その様子を見ていた夏菜子は満足そうに微笑んだ。
「まったく……いい加減コクってしまえばいいのに」
真美がため息交じりに呟いた。
座る場所を探そうと、スタンドのベンチ脇に続く階段を下り始めた時、一年生部員が夏菜子に気づいた。
「あ、木原さん! こんにちは!」
「こんにちは!」
「あ! オレが先に! こんにちは!」
我先に、と挨拶の大合唱が始まった。軽く騒ぎになったので頭だけ下げ、夏菜子は逃げるようにその場から退散し、少し離れた場所に落ち着いた。
不動のバッテリー篤と貴史の幼馴染ということに加え、その容姿。夏菜子は野球部員の中で有名人だった。
「夏菜子を振るバカな男はいないでしょ」
「なに言ってんのよ」
夏菜子は笑う。
「篤の視線の先にはね、白球とそれを一緒に追いかける仲間しかないの。私の入り込む隙間はどこにもないの」
負けず嫌いだった夏菜子は小学生の時、仲間だった篤と貴史に置いて行かれたくなくて三年生から野球を始めた。母の反対を押し切って、長かった髪もバッサリ切って……。
――あの頃なら篤の目に私は映っていたのかしら……。
「それでいいのぉ?」
真美も里奈も、ちょっと理解できない、と肩を竦めた。
「いいの。それが篤だもん」
「なんだかそうやって自分を納得させてるみたいね」
そうかもね――夏菜子は青い空を見上げた。
ホントに打った。ホームに戻ってくるその時まで……いや、ベンチに入ってしまうその瞬間まで――夏菜子は一秒たりとも篤から視線を逸らしたくはなかった。でも……彼がホームベースを踏む頃にはもう涙で全然見えなかった――。
スタンドで応援している一年生部員達が興奮冷めやらぬ状態で盛り上がっていた。
「やっぱり緒方先輩スゲーよ!」
「あそこで打てるんだからなー」
その様子を見ていた夏菜子は満足そうに微笑んだ。
「まったく……いい加減コクってしまえばいいのに」
真美がため息交じりに呟いた。
座る場所を探そうと、スタンドのベンチ脇に続く階段を下り始めた時、一年生部員が夏菜子に気づいた。
「あ、木原さん! こんにちは!」
「こんにちは!」
「あ! オレが先に! こんにちは!」
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不動のバッテリー篤と貴史の幼馴染ということに加え、その容姿。夏菜子は野球部員の中で有名人だった。
「夏菜子を振るバカな男はいないでしょ」
「なに言ってんのよ」
夏菜子は笑う。
「篤の視線の先にはね、白球とそれを一緒に追いかける仲間しかないの。私の入り込む隙間はどこにもないの」
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――あの頃なら篤の目に私は映っていたのかしら……。
「それでいいのぉ?」
真美も里奈も、ちょっと理解できない、と肩を竦めた。
「いいの。それが篤だもん」
「なんだかそうやって自分を納得させてるみたいね」
そうかもね――夏菜子は青い空を見上げた。
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