ねぇ、大好きっていって

友秋

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初めてのプレゼント

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 遼ちゃんに、待っててね、って言って二階の自分のお部屋に駆け込んだあたしは、ドアを閉めて、思わずウフフと笑っちゃった。

 遼ちゃんが来た! 遼ちゃんが来てくれた!

 久しぶりに抱き締めてもらった遼ちゃんの腕、やっぱりあったかくて、まだあたしのカラダに感触が残ってる。久しぶりのキスは、少しタバコの香りがしました。

 遼ちゃんと、二人でクリスマスが過ごせるの?

 ああ、かみさまー! にやけてしまうお顔を両手で挟んで、またウフフ。

 あ。

 手の中にあってものが顔に当たって、ハッと我に返った。そうだ、これ……。えと……こん……どーむ?

 ひあぁあっ。なんだかさっきはよくわからなかったけど、どにかくこれは見つからないとこに入れた方がいいよね。

 でもえっと、遼ちゃんが、お守りって言ってくれたから、いつも持ち歩くものがいいのかな? えっとえっと、あ、お財布!

 あたしは学校用のリュックの中からお財布を出してその中にコレを押し込んだ。

 よし! これなら大丈夫!

 お財布をリュックにしまったあたしは、机の上を見た。可愛いサンタさんの絵が付いた紙でラッピング、自分でしてみたけど、あんまりうまくできなくて微妙な仕上がりです。

 このまま、遼ちゃんにあげるの? それは、ちょっと……。

 あたしはちょっと考えて――いいこと思いついた! 遼ちゃんにこんなシチュエーションで渡せるのなら! って。

 ラッピング取って、一生懸命作った革のミサンガ、手の中に入れて後ろ手に隠して遼ちゃんが待つリビングへ。

「遼ちゃん」

 ソファに座って膝の上にのせた手を組んでテレビ観ていた遼ちゃんが、振り向く。優しい笑顔があたしに向けられて、胸がドキドキ。

 今までどんなにたくさんの時間を遼ちゃんと過ごしても、このドキドキは変わらないの。

 大好きな遼ちゃん。初めて、遼ちゃんにプレゼント。ドキドキする――。

 深呼吸して。えっと、どうしよう。どうやって。

「ひよ?」

 真っ赤になっちゃったあたしを見て、遼ちゃんが心配そうな顔で手を差し出した。

「こっち来いよ」

 うん。

「お膝、座ってもいい?」

 遼ちゃん、クスッと笑った。

「どうぞ」

 遼ちゃんの声も、笑顔も、その手も、腕も。全部。大好きなの。

 ミサンガ、あたしは遼ちゃんの手首に直接着けてあげることにした。右手は後ろ手にしたまま、遼ちゃんに差し出された手を握った――瞬間、グイッと引き寄せられた。

「キャッ」

 あたしはそのまま、遼ちゃんのお膝に。そして、キスを。

「んん……」

 遼ちゃんの、キス……しびれちゃう……。カラダが、もっともっと、って言ってる――あっ、でも待って!

 遼ちゃん、待って! ミサンガを握る、グーにした手で遼ちゃんを押した。

 唇が離れる。

「遼ちゃん! 待って! プレゼント、あるって言ったでしょ!」

 遼ちゃん、クスクス笑ってる。

「はいはい」

 遼ちゃんのお膝に上で、見上げるあたしを見て、遼ちゃん。

「ひよ、俺はどうすればいいの?」

 うんとね。

「遼ちゃん、目、閉じてください」

 遼ちゃん、大きな目をますます大きく。

「もうっ、遼ちゃん! 言うこと聞いてっ!」

 遼ちゃん、アハハと笑いながら目を閉じてくれた。睫毛の長い整ったお顔、思わず近くでじっと見たくなっちゃった。

 どきどき。

 あ、いけない。プレゼントプレゼント。あたしはミサンガを握っていた手を開いた。

 えっと、左手がいいよね。

「遼ちゃん、ちょっと左手貸してね」
「ん」

 あたしは目を閉じてる遼ちゃんが差し出してくれた左手を取った。

 筋肉で硬くて、大きな手。何度も何度もあたしに触れてくれた手なんだけど、こんな形で触れるとまた新鮮で、ドキドキが加速する。

 遼ちゃん、遼ちゃん。震えてしまいそうです。

 でも頑張って、両手で遼ちゃんの腕にミサンガ巻いて……えと、あれ?

「まだ?」
「ん、もうちょっと……あれ?」

 あたし、予想外の悪戦苦闘。

 えっと、香織ちゃんがくれた作り方の紙に、縛り方も書いてて、一生懸命覚えたんだけど。

 えっと、こうだったかな? あ、違う。こっちをこうして……。

 頭の上から、遼ちゃんのクスクスという声が聞こえる。やだぁー、遼ちゃん笑わないで! ドキドキに焦りも加わって、出来ないよぉ。

「ひよ、焦んなくていいよ。ゆっくりやって」

 遼ちゃんの優しい声。そっと顔を上げると、遼ちゃんは目をつむってくれてる。あたしは、深呼吸して。

「うん、もうちょっとだけ、待ってね」

 遼ちゃん、クスッと笑って「ああ」と答えてくれた。

 それから、遼ちゃんのお膝に乗ったままもう少し時間かけて、やっと、やっと――、

「できたぁ! 遼ちゃん、目開けていいよ!」

 遼ちゃんの左手を持ったまま、あたしは言った。遼ちゃん、そっと目を開けて、左手首を見た。

「……ミサンガ?」

 腕を目の高さまで上げた遼ちゃんを見上げて、あたしは頷く。

「これくらい細ければ、普段は遼ちゃんの腕時計に隠れるでしょ?」

 遼ちゃんが、フワリと笑った。

「そうか、ありがとな」

 あたしの胸がトクンッと跳ねる。心を優しく包んでしまうような笑みに、あたしはとっても弱くって。あのね、って言いかけた時、ぎゅって抱きしめられた。

 遼ちゃん……。

「あのね」

 あたしは遼ちゃんの腕の中から顔を上げた。

「あのね、あのね。あたし、遼ちゃんにプレゼントなんて初めてだから、何を上げたらいいか分からなくて。一生懸命、一生懸命考えたの」

 身振り手振りでワタワタ説明するあたしに遼ちゃん、クスリと笑って頬ずりしてくれた。

「ああ、ひよが一生懸命考えてくれたの、わかるよ」

 遼ちゃん、くすぐったい。あたしが肩を竦めると。

「それにしても、随分とかわいい色だな」

 あ、それはですね。

 実は、最初に作り始めたのは本当はもと遼ちゃんに似合うすごくカッコいい色だった。

 でも、模様がおかしなことになってしまったり、やっとできたと思ったら、短かったり、と失敗を重ねて……香織ちゃんのくれたキット、ほとんど使い果たしてしまったのです。

 最後に残ったのが、ピンクと赤と、かろうじてブルーで。

「あ、あのね、それは――」

 言い訳、しようとしたあたしの口が、塞がれた。

「ん……んん……」

 遼ちゃんの腕に、微かに力が加わる。痺れるあたしのカラダが、遼ちゃんを感じて――、

 ああ、遼ちゃん! あたしも、遼ちゃんのカラダに腕を回して、抱きしめた。



 
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