72 / 158
盈月
64
しおりを挟む
「森本せんせー」
いかにもご立腹といった様子で教室を出る森本を追いかけた。
「なんだ」
「あのー、質問があるんですけど」
沙羅を認めると、三角に怒っていた目は和らいで男のそれに変化する。
「分かった。生物室に来い」
威厳を誇示するように大股で歩き出した生物教師。
ーーチョロい。
笑いが込み上げてくる。あまりに滑稽すぎた。
「で、どこが分からないんだ?」
生物室に入るなり問うてきた。教科書を開き、向かい合わせに座る。はたから見たらちゃんと教師と生徒に見えるのだろう。だけど、チラチラと胸元に当たる視線が彼の本心だった。教師のモラルも何も無い。こいつに教わる事など何も無い。
ーーキモすぎる。早く終わらせちゃお。
「沙羅のこと、襲うんですか?」
「は? 何を言って……」
唐突に切り出した。森本の顔は一気に蒼白になり、目は泳ぎはじめる。とぼける事も無駄なくらい動揺している。
「沙羅が知らないとでも思ってたの? 馬鹿じゃない? あんたが女子生徒脅してヤッてるのなんて全部知ってるし、証拠もあるよ」
もう猫かぶるのはやめた。こんな奴に可愛さをあげるくらいならドブに捨てた方がマシだ。
「……俺を脅す気か?」
全然保ててない平静を繕って聞いてくる教師。やっぱ、小心者なんだ、こいつ。だっさ。
「そんなことしても沙羅に得無いじゃん。そんなことじゃなくて、あんたにとーっても素敵なプレゼントがあるの」
「プレゼント?」
訝しげな彼の前に封筒を出す。森本は中身を確かめ、こっちを見てくる。沙羅の言いたいことを理解したみたいだった。
「沙羅ね、西山瑠璃だーいっきらいなの。もう殺したいくらい。でもね、自分でやると沙羅、巴ちゃんに嫌われちゃうからできないの。だからね、いい話でしょ? まぁ、あんたに拒否権なんて無いんだけどね」
笑いかける。
「分かった。悪い話じゃないしな。その代わり、証拠とやらも渡してもらうぞ」
「あの子を泣かせることに成功したらね」
こんなに使える物、渡すつもりなんて無いけど、西山瑠璃の泣き顔が拝めるなら、その位安かった。
「あぁ、分かった。俺だってコケにしやがったあいつを泣かせたいし、鳴かせたいからな」
教師にあるまじき悪い顔。でも、こんな奴だから使いやすい。
「交渉成立!」
これでひとつ楽しみが増えた。
いかにもご立腹といった様子で教室を出る森本を追いかけた。
「なんだ」
「あのー、質問があるんですけど」
沙羅を認めると、三角に怒っていた目は和らいで男のそれに変化する。
「分かった。生物室に来い」
威厳を誇示するように大股で歩き出した生物教師。
ーーチョロい。
笑いが込み上げてくる。あまりに滑稽すぎた。
「で、どこが分からないんだ?」
生物室に入るなり問うてきた。教科書を開き、向かい合わせに座る。はたから見たらちゃんと教師と生徒に見えるのだろう。だけど、チラチラと胸元に当たる視線が彼の本心だった。教師のモラルも何も無い。こいつに教わる事など何も無い。
ーーキモすぎる。早く終わらせちゃお。
「沙羅のこと、襲うんですか?」
「は? 何を言って……」
唐突に切り出した。森本の顔は一気に蒼白になり、目は泳ぎはじめる。とぼける事も無駄なくらい動揺している。
「沙羅が知らないとでも思ってたの? 馬鹿じゃない? あんたが女子生徒脅してヤッてるのなんて全部知ってるし、証拠もあるよ」
もう猫かぶるのはやめた。こんな奴に可愛さをあげるくらいならドブに捨てた方がマシだ。
「……俺を脅す気か?」
全然保ててない平静を繕って聞いてくる教師。やっぱ、小心者なんだ、こいつ。だっさ。
「そんなことしても沙羅に得無いじゃん。そんなことじゃなくて、あんたにとーっても素敵なプレゼントがあるの」
「プレゼント?」
訝しげな彼の前に封筒を出す。森本は中身を確かめ、こっちを見てくる。沙羅の言いたいことを理解したみたいだった。
「沙羅ね、西山瑠璃だーいっきらいなの。もう殺したいくらい。でもね、自分でやると沙羅、巴ちゃんに嫌われちゃうからできないの。だからね、いい話でしょ? まぁ、あんたに拒否権なんて無いんだけどね」
笑いかける。
「分かった。悪い話じゃないしな。その代わり、証拠とやらも渡してもらうぞ」
「あの子を泣かせることに成功したらね」
こんなに使える物、渡すつもりなんて無いけど、西山瑠璃の泣き顔が拝めるなら、その位安かった。
「あぁ、分かった。俺だってコケにしやがったあいつを泣かせたいし、鳴かせたいからな」
教師にあるまじき悪い顔。でも、こんな奴だから使いやすい。
「交渉成立!」
これでひとつ楽しみが増えた。
0
お気に入りに追加
3
あなたにおすすめの小説
『異世界庭付き一戸建て』を相続した仲良し兄妹は今までの不幸にサヨナラしてスローライフを満喫できる、はず?
釈 余白(しやく)
ファンタジー
HOT 1位!ファンタジー 3位! ありがとうございます!
父親が不慮の事故で死亡したことで最後の肉親を失い残された高校生の小村雷人(こむら らいと)と小学生の真琴(まこと)の兄妹が聞かされたのは、父が家を担保に金を借りていたという絶望の事実だった。慣れ親しんだ自宅から早々の退去が必要となった二人は家の中で金目の物を探す。
その結果見つかったのは、僅かな現金に空の預金通帳といくつかの宝飾品、そして家の権利書と見知らぬ文字で書かれた書類くらいだった。謎の書類には祖父のサインが記されていたが内容は読めず、頼みの綱は挟まれていた弁護士の名刺だけだ。
最後の希望とも言える名刺の電話番号へ連絡した二人は、やってきた弁護士から契約書の内容を聞かされ唖然とする。それは祖父が遺産として残した『異世界トラス』にある土地と建物を孫へ渡すというものだった。もちろん現地へ行かなければ遺産は受け取れないが。兄妹には他に頼れるものがなく、思い切って異世界へと赴き新生活をスタートさせるのだった。
その他、多数投稿しています!
https://www.alphapolis.co.jp/author/detail/398438394
異世界へ誤召喚されちゃいました~女神の加護でほのぼのスローライフ送ります~
モーリー
ファンタジー
⭐︎第4回次世代ファンタジーカップ16位⭐︎
飛行機事故で両親が他界してしまい、社会人の長男、高校生の長女、幼稚園児の次女で生きることになった御剣家。
保険金目当てで寄ってくる奴らに嫌気がさしながらも、3人で支え合いながら生活を送る日々。
そんな矢先に、3人揃って異世界に召喚されてしまった。
召喚特典として女神たちが加護やチート能力を与え、異世界でも生き抜けるようにしてくれた。
強制的に放り込まれた異世界。
知らない土地、知らない人、知らない世界。
不安をはねのけながら、時に怖い目に遭いながら、3人で異世界を生き抜き、平穏なスローライフを送る。
そんなほのぼのとした物語。
無自覚勇者のチート漫遊記~わたし基本的に料理しか興味ありません~
あき
ファンタジー
大学に中退届けを出したその日、支倉さなえは突如異世界に召喚された。世界最強の魔法使いに『勇者』として見込まれた彼女はチート過ぎるマジックアイテムをごっそり相続することとなるが、如何せんこの『勇者』は料理にしか興味がないのだった……
ソロ冒険者のぶらり旅~悠々自適とは無縁な日々~
にくなまず
ファンタジー
今年から冒険者生活を開始した主人公で【ソロ】と言う適正のノア(15才)。
その適正の為、戦闘・日々の行動を基本的に1人で行わなければなりません。
そこで元上級冒険者の両親と猛特訓を行い、チート級の戦闘力と数々のスキルを持つ事になります。
『悠々自適にぶらり旅』
を目指す″つもり″の彼でしたが、開始早々から波乱に満ちた冒険者生活が待っていました。
人生初めての旅先が異世界でした!? ~ 元の世界へ帰る方法探して異世界めぐり、家に帰るまでが旅行です。~(仮)
葵セナ
ファンタジー
主人公 39歳フリーターが、初めての旅行に行こうと家を出たら何故か森の中?
管理神(神様)のミスで、異世界転移し見知らぬ森の中に…
不思議と持っていた一枚の紙を読み、元の世界に帰る方法を探して、異世界での冒険の始まり。
曖昧で、都合の良い魔法とスキルでを使い、異世界での冒険旅行? いったいどうなる!
ありがちな異世界物語と思いますが、暖かい目で見てやってください。
初めての作品なので誤字 脱字などおかしな所が出て来るかと思いますが、御容赦ください。(気が付けば修正していきます。)
ステータスも何処かで見たことあるような、似たり寄ったりの表示になっているかと思いますがどうか御容赦ください。よろしくお願いします。
幻獣使いの英雄譚
小狐丸
ファンタジー
昔世界を救う為に戦った英雄が、魔物に襲われた事が原因で亡くなった娘の忘れ形見の赤ん坊を育てることになる。嘗て英雄だった老人は、娘の二の舞にせぬよう強く育てることを決めた。英雄だった老人と嘗ての仲間に育てられた少年は、老人の予想を超えて成長していく。6人の英雄達に育てられたチートな少年が、相棒の幻獣や仲間達と大きな力に立ち向かう。
積みかけアラフォーOL、公爵令嬢に転生したのでやりたいことをやって好きに生きる!
ぽらいと
ファンタジー
アラフォー、バツ2派遣OLが公爵令嬢に転生したので、やりたいことを好きなようにやって過ごす、というほのぼの系の話。
悪役等は一切出てこない、優しい世界のお話です。
転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】
ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします
ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった
【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。
累計400万ポイント突破しました。
応援ありがとうございます。】
ツイッター始めました→ゼクト @VEUu26CiB0OpjtL
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる