巡り合い、

アミノ

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七十九話

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私は前と同じようにネクタイごと
胸ぐらを掴まれた

「シギの話聞いたからって
調子乗ってんじゃねぇぞ
俺が知らねぇ訳ねぇだろうが」

「知らないから、言えないんでしょ?」

私は怯まないように、
怖がっているとバレないように、
抵抗しないでいた

もしかしたら声は震えていたかも知れない
それでも視線は逸らさないようにした

「あれは俺らが売り捌いたんじゃねぇ
俺らも売り捌いた事が分かったから
お前が出てくるんじゃないか、
シギのことが分かるんじゃないか、って、
キトが街の中に入ってったんだよ」

「‥ライハ達じゃないなら、
誰が、売ったの?」

ネクタイから手を離し大きなため息をついた

「南西の奴らだよ」

「‥え?」

「北東と南西はボス同士が繋がってんだよ
街を襲う時に挟み撃ちしやすいし、
それに混乱させられるし?
でも、向こうの下っ端たちが
金に目がない感じで
結構好き勝手やってるらしいから
分けた物資をさっさと売っ払ったんだろうよ


私が聞いたんだけど、
うんうんと自分で自分の言葉に頷きながら
あまりにスラスラと話すライハの事が
つい心配になってしまった

「‥そんな事、私に話してもいいの?」

「あっ?」

苛立ちから我に帰ったライハは気付いたようで
口を開けて、一瞬固まった

「まぁ、いいんじゃね?
俺は盗賊として生まれた訳じゃねぇし
結構自由にさせてもらってるしな
たとえ追い出されても別に困らねぇ」

それに、と言いながら、
腕を組みニヤッと笑う

「今のお前、あっちのナツちゃんだろ?」

あっちのナツに言ったところで
討伐隊にバレないと思っていそうだ

「あっちでもこっちでも
記憶としては繋がってるけど‥」

「‥マジかよ!?
それは知らんかったわ‥」

そうか、ライハは
シギが入れ替わってたのは知っているけど、
あまり詳しくは知らないんだな

「まぁ、いいや
とりあえずシギのことで
なんか分かったら教えろよ」

そう言うと、ライハは歩き出した

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