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七十話
しおりを挟むコンコン
遠慮がちに小さめのノックの音が聞こえた
「はーい、およ?」
ジーナの部屋を訪れたのはシオンだ
夜中の突然の来訪者に首を傾げる
「どうしたんだい?」
「遅くからすみません、
少し時間いいですか?」
「構わないよ、入って」
「失礼します」
中に入ると、机の上には
書類、写真、石など
いろいろなものが散乱していた
シオンは扉を閉め、
その場から驚いたように机の上を見ていた
「すまないね、
仕事がなかなか片付かなくてさ
今片付けるから」
話しながら器用にパパッと
重ねられるだけ重ねられた荷物を
ベッドに移動させていた
その動きを顔だけで追い、
邪魔にならないようシオンは端に寄る
「こんな遅くまで大変ですね」
「いやいや、
私の要領の問題さ」
机の上の書類をもう一往復ベッドへ
運びながらハハハッと笑っていた
その書類の中に「ナツ」と書かれた
紙が見え、シオンは凝視した
その視線に気づいたジーナは
手に持っている書類に目を落とすと
あちゃーと小さく言いながら顔をしかめた
「ナツさんのこと、
何か調べてるんですか?」
何か疑っているような目だと見て分かる
「へっ? あはははっ!
調べるって何を調べるって言うんだい?」
ベッドに他の書類を置き、
ナツと書かれた紙を手にシオンに近づく
「これは、ナツの仕事内容が書かれた紙だ
ナツは、何て言うか、
‥今ちょっと仕事に手がつけられないからさ
私がナツの分も手伝ってるんだ」
「それは、ナツさんの体の中に
2人のナツさんがいるから‥ですか?」
ジーナは一瞬目を見開いたが、すぐに戻し
その紙を置く為にベッドに戻る
「なんだ、シオンも知ってるのかい?」
「はい、今日盗賊に言われました
それでジーナさんに謝りに来ました」
シオンはジーナの前まで移動し
頭を深く下げた
「ナツさんのこと、
言わないように言われてたのに
リクに話してしまいました、すみません」
「そうか、まぁリクなら
良いんじゃないか?」
あまりにもあっさりした返事に
面食らった顔をして頭を上げると
先ほどまでとは違う
真剣な横顔が歩いて行く
「私は、盗賊に言われたと言った
その部分について聞きたい」
片付いた机とセットで
置いてあるソファに腰掛けると、
手のひらを上に向けどうぞとばかりに
シオンにもソファに座るよう勧めた
「失礼します」
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