巡り合い、

五十五話

「でも約束してほしいです
必ず今日中に帰ってくるってことを」

リクは私の前に立ち、
とても真剣な顔でそう言った
いつも笑顔のリクとはまるで別人のように
感じてしまうほどだった
あまりの目力に圧倒された私は
一度唾を飲み込んだ
そして息を短く吐き、しっかりと
リクの目を見据える

「その約束、必ず守ります」

リクはフッと表情が変わり、
いつもの優しい顔つきになると
周りの空気さえも柔らかくなった気がした

「安心しました
では、話を進めますね

単刀直入に言うと
カラスの習性を利用します」

「カラスぅ？」

路地の壁にもたれながら
シオンはカラスを見上げ、
さっき見てたのはカラスだったのかと
ボソッと呟いた

「僕は討伐隊に入って間もないし
見回り隊にも参加したことがないので
警備隊に顔を知られていません
それに今は私服です
僕はカラスに大事な物を取られた
街の一般人を演じます」

シオンは呆気に取られたのか
空いた口が塞がらないようだった

「ナツさんはもちろん、
見回り隊に参加してるシオンも
顔はバレてるので、
討伐隊として普通にしてください
それを取り返すと言う名目で
馬に乗り街から少し離れたところへ
行ってもらえればと思います」

「いやいやいや‥
お前、そんなんで成功すると
思ってんのか‥？」

「そんなのやってみないと分からないよ？」

シオンが口をパクパクとしているのに対し
リクは平然としている

「それに、あんまり回りくどいことしたら
逆に疑われちゃうしれないからね！」

この作戦も回りくどいかな、と
笑みをこぼすリクを見ていると
何故か成功する未来しか見えない
私はその案で行かせてほしいと頭を下げた

「ナツさん！？」

あたふたしているだろうシオンの声が
頭の先から聞こえてくる

「はい！
ナツさん、頭を上げてください」

ゆっくりと頭を上げる

「もう一つ言い忘れてました」

リクは私に向けてニッコリと笑った後、
シオンの方を向きしっかりと目を合わせ
また私に視線を戻した
シオンは理解してないようで
軽く首を捻っている

「シオンも連れて行ってください」