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三十三話
しおりを挟む相変わらず街は賑やかで
人々はとても楽しそうに過ごしていた
買い物に来ている人と
お店の人が談笑していたり、
子どもがお使いに来ているのを
みんなで優しく見守ってたり、
とても良い街だと思う
お昼も何もなく、夕方になった
カラスの鳴き声に気を取られていると、
隣にいた見回り班の人から腕を小突かれる
「おい、あれ
新入隊の奴じゃないか?」
顎でクイッと指している方を見ると
その先にはシオンがいた
どうやら他の見回り班の人たちは
いないようで、1人で何かしているみたいだ
建物の影に隠れながら
進んでいるように見えたので
もしかしたら、と思い
シオンに合流することにした
近くまで行くと
シオンが私に気づいてくれた
「1人でどうしたの?
もしかして‥」
「‥はい、盗賊見つけました
前の偵察の時に最初に遭遇した
ベラベラ喋る奴です」
「ライハ‥」
「え?」
「前に会った盗賊がライハって教えてくれた
たぶんベラベラ喋ってたやつの
名前だと思う」
2人で頷き合い、後をつける
人通りの少ない路地裏へ入ったところで
少し先の建物に体を預けて
立っているライハがいた
私たちに向かって手招きをしていた
呼んでいるようだ
私たち2人はゆっくりと近づいて行った
「久しぶり、ナツちゃーん」
ニヤニヤ笑いながら私の名を呼んだ
「こんなところに誘導して何が目的?」
スラスラと言葉が出た
私は気づいていなかったが、
どうやら付けているのを気付かれていて
人通りの少ないところへ
誘導されていたみたいだ
「別にー?」
ライハは私の顔をジッと見ていた
私も彼からは目を離さなかった
「あっ!」
ふいに大きな声を出して
私の後ろを指さしたが
私は振り向かなかった
その様子を見たライハは
不機嫌な顔になる
「‥っちぇ、なんだよ
びっくりして振り向けよ」
「後ろからは何の気配もないもの
あなたが嘘ついてることぐらい
すぐに分かる」
苛立ちを隠せない様子のライハは
ナツの胸ぐらを左手で掴み顔を近づけた
シオンが止めに入ろうとするのを
ライハは右手で静止する
「お前もこいつを見てろ」
よく分からないので
私とシオンは眉をひそめた
ひそめたつもりだが
どうやら今はこっちのナツが出ているのか、
他の人から見たらナツの表情は無表情だ
「怖いだろ?」
どうだと言わんばかりに
フフンと鼻で笑いながら言われたが
「こんなのに怖いとか思う奴がいるのか?」
ナツは何も変わらない表情で答えていた
「あぁ?
てめぇ、あんま舐めてっと
その顔ぐちゃぐちゃにしてやるぞ!」
「あなたにそんな力がないこと知ってる、
弱い奴ほど吠えるから」
「‥このやろぉ‥ふごっ!」
ライハがナツに殴りかかろうとした時、
前の偵察の時と同じく
ライハは後ろに吹っ飛んだ
胸ぐらを掴んだ時に
ネクタイを掴んでいたんだろう
私の隊服にある
ボタンで付け外し出来るネクタイを
持って吹っ飛んだのだ
吹っ飛んだライハの横を見ると
キトが立っていた
「‥下手くそすぎ、なんだよ
ライハは」
「俺は下手くそじゃねぇ!
あいつが悪いんだろうが!」
ナツは自分の隊服の襟元を正し、
その2人を見つめた
「もう一度聞く
何が目的?」
するとキトがナツとシオンに
近づいてきた
「‥君は、あの時に
ナツと一緒にいた討伐隊、だよね?」
キトが話しかけたのはシオンだった
「‥」
シオンは何も答えない
キトは話を続けた
「‥可哀想に
こんな、どこの人かも分からない人が
指揮を取る部隊に、いるなんて」
私は固まってしまった
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