20 / 143
十九話
しおりを挟む外はすっかり暗くなり、
今日は何をしてから寝ようか
頭を捻りながら部屋で考えている時に
コンコンとドアをノックする音が
聞こえてきた
返事をしながら扉を開けると
そこに立っていたのは
表情の暗いナロンだった
「えっ、珍しいね
私の部屋に来るなんて」
「あー、悪い‥
ちょっと話がしたくて」
今日落ち込んでるって言ってたし
話を聞いてあげることにした私は
お茶でも淹れるから待ってて、と
ベッドの横にある椅子に座るよう伝え、
部屋についている水道とポットが
ある場所へ移動した
お茶を入れている間に
ナロンの様子を窺い見ると
椅子には座ったが、ずっと下を向いていた
机にお茶を置き、椅子に座り
どうしたの?と声をかける
「‥今日は本当に悪かった
俺のせいでいろいろ、お前にも
迷惑かけて‥馬も荷物も‥
きちんと謝ってなかったから‥」
座りながら、しかも下を向いたまま
頭を下げたから机がゴンっと音を立てた
その音は部屋中に響き渡ったのではないかと
思うほど大きく感じ
カップに入ったお茶が揺れて
ほんの少し机にこぼれた
「!?
大丈夫!?」
びっくりした私は
頭に手を添え起こす
「私は気にしてないって言ったでしょ?
頑張ってくれたよ、
謝る必要ないって」
ナロンがゆっくりと視線を上げ
私を見つめる
「‥ありがとう」
「うんうん、
これでこの話はおしまいだからね」
満足した私はお茶を一口飲む
「それともう一つ」
ナロンはお茶を一気に全部飲み、
深呼吸してから言葉を繋いだ
「ナツが、なんか前までのナツと
違う人のような感じがする
任務絡みだとそうは思わないんだが
こうやって普通に話してるときは
最近はいつもと違う」
ナロンは私から目を離さない
「何かあったのか?
頼りないかもしれんが
いつだって相談に乗る」
「‥あっ、うん‥」
ナロンには
バレないようにしようと決めたのに
どう返事しようか迷っていたら
少し悲しそうに見える表情で
「今じゃなくても
これから先でも何かあったら
相談に乗るし、俺はお前の味方だ
話したくなったら声をかけてくれよ」
そしていつものように
頭をポンポンとして
少し悲しい表情のまま、笑った
それがとても気になった
「遅くに悪かったな、
お茶もすまんかった、
じゃあおやすみ」
扉が閉まり、足音が遠くなっていく
カップも片付けず
そのままベッドに横になり
天井を見上げた
「明日、ジーナに相談にしよう‥」
好きでいてくれるなら
バレないようにしようと思ってたけど、
好きでいてくれるのなら
尚更言った方がいいんじゃないかなって
考えが変わってしまった
ナロンに言われたことは
普通に嬉しかった
0
お気に入りに追加
30
あなたにおすすめの小説
裏切りの代償
志波 連
恋愛
伯爵令嬢であるキャンディは婚約者ニックの浮気を知り、婚約解消を願い出るが1年間の再教育を施すというニックの父親の言葉に願いを取り下げ、家出を決行した。
家庭教師という職を得て充実した日々を送るキャンディの前に父親が現れた。
連れ帰られ無理やりニックと結婚させられたキャンディだったが、子供もできてこれも人生だと思い直し、ニックの妻として人生を全うしようとする。
しかしある日ニックが浮気をしていることをしり、我慢の限界を迎えたキャンディは、友人の手を借りながら人生を切り開いていくのだった。
他サイトでも掲載しています。
R15を保険で追加しました。
表紙は写真AC様よりダウンロードしました。
最愛の側妃だけを愛する旦那様、あなたの愛は要りません
abang
恋愛
私の旦那様は七人の側妃を持つ、巷でも噂の好色王。
後宮はいつでも女の戦いが絶えない。
安心して眠ることもできない後宮に、他の妃の所にばかり通う皇帝である夫。
「どうして、この人を愛していたのかしら?」
ずっと静観していた皇后の心は冷めてしまいう。
それなのに皇帝は急に皇后に興味を向けて……!?
「あの人に興味はありません。勝手になさい!」
【完結】7年待った婚約者に「年増とは結婚できない」と婚約破棄されましたが、結果的に若いツバメと縁が結ばれたので平気です
岡崎 剛柔
恋愛
「伯爵令嬢マリアンヌ・ランドルフ。今日この場にて、この僕――グルドン・シルフィードは君との婚約を破棄する。理由は君が25歳の年増になったからだ」
私は7年間も諸外国の旅行に行っていたグルドンにそう言われて婚約破棄された。
しかも貴族たちを大勢集めたパーティーの中で。
しかも私を年増呼ばわり。
はあ?
あなたが勝手に旅行に出て帰って来なかったから、私はこの年までずっと結婚できずにいたんですけど!
などと私の怒りが爆発しようだったとき、グルドンは新たな人間と婚約すると言い出した。
その新たな婚約者は何とタキシードを着た、6、7歳ぐらいの貴族子息で……。
私がいなくなった部屋を見て、あなた様はその心に何を思われるのでしょうね…?
新野乃花(大舟)
恋愛
貴族であるファーラ伯爵との婚約を結んでいたセイラ。しかし伯爵はセイラの事をほったらかしにして、幼馴染であるレリアの方にばかり愛情をかけていた。それは溺愛と呼んでもいいほどのもので、そんな行動の果てにファーラ伯爵は婚約破棄まで持ち出してしまう。しかしそれと時を同じくして、セイラはその姿を伯爵の前からこつぜんと消してしまう。弱気なセイラが自分に逆らう事など絶対に無いと思い上がっていた伯爵は、誰もいなくなってしまったセイラの部屋を見て…。
※カクヨム、小説家になろうにも投稿しています!
もう死んでしまった私へ
ツカノ
恋愛
私には前世の記憶がある。
幼い頃に母と死別すれば最愛の妻が短命になった原因だとして父から厭われ、婚約者には初対面から冷遇された挙げ句に彼の最愛の聖女を虐げたと断罪されて塵のように捨てられてしまった彼女の悲しい記憶。それなのに、今世の世界で聖女も元婚約者も存在が煙のように消えているのは、何故なのでしょうか?
今世で幸せに暮らしているのに、聖女のそっくりさんや謎の婚約者候補が現れて大変です!!
ゆるゆる設定です。
貧乏男爵家の末っ子が眠り姫になるまでとその後
空月
恋愛
貧乏男爵家の末っ子・アルティアの婚約者は、何故か公爵家嫡男で非の打ち所のない男・キースである。
魔術学院の二年生に進学して少し経った頃、「君と俺とでは釣り合わないと思わないか」と言われる。
そのときは曖昧な笑みで流したアルティアだったが、その数日後、倒れて眠ったままの状態になってしまう。
すると、キースの態度が豹変して……?
旦那様、愛人を作ってもいいですか?
ひろか
恋愛
私には前世の記憶があります。ニホンでの四六年という。
「君の役目は魔力を多く持つ子供を産むこと。その後で君も自由にすればいい」
これ、旦那様から、初夜での言葉です。
んん?美筋肉イケオジな愛人を持っても良いと?
’18/10/21…おまけ小話追加
5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる