鬼畜執事のKING

三三

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入ってきたあの鉄の門を抜けると、乗ってきた白いセダンではなく、隣に駐車してある黒い高級車に乗り込むオーナーとリクさん。
「早く乗れよ」
「ひっ、はいっ!」
リクさんの脅しにより←いいのか?そんな事言って!
開いている後部座席のドアを見て、ここに乗るんだな!と察した私はすばやく乗り込もうとして・・
固まった!
その後部座席の奥には既にオーナーが座っててっ、そのぉ・・っ
「遅ぇ!」
「ひ!は、はいっ!」
これまたリクさんの脅しの一声で飛び乗ったはいーが奥には行けず
チョコンとその端に座り込みドアを閉めた私。
それを確認したのか、助手席に居るリクさんが運転席の人に告げる
「出せ!」の言葉で車は動き出した。
ひ~~~~~~~~~~~~~~~~っ!マジ怖ぇぇよっ!リクさん
はぁ・・って隣に目をやると、
ギロン! 「っくっ!」 これまた!心臓が一瞬で凍りつきそうな獣の目!
空の眼力上回ってんじゃね??
そんくらい生きた心地しない空間に今います・・前も横も向けねぇぇぇぇぇ

結局その道中、窓の外をずっと眺める格好のままで。背をむけるしかないじゃん(><)
奥座席に君臨されているオーナー様はどこかに携帯をかけて話をしていたし。
その話してる内容は全くわかんないし。
だってオーナーの口から出される言葉はほとんど
「ああ。」とか「おー。」とかしか言わないんだもん。
そんな緊張の空間からやっと開放されたのは30分後で、
私達の乗った車がキッと停まった場所は、白くて高いマンションの前。
この空間から早く脱出したかった私は真っ先に車から飛び降りると、その建物を見上げた。
一体、
「・・ここは」
どこ?
「あの女の住んでるマンションだ。」
「えっ??」 その言葉に驚いてる私を軽くスルーしてリクさんはそのマンションの中へ進んでいく。
「待ってるか?」
太く低い声のわりに、そんな気遣いと見れるような言葉をかけてくれたのは、
ゆっくりと後部部座席から降り立つオーナー様からで。
「空は絵里子と一緒いるぜ?その場所へ行けれるか?」
「ぅ・・っ」
頭ではわかってたけど、ソレをそういう風に言葉に出されるとかなりショックをうける。
元カノと一緒に・・居る・・空。
もしかしたら・・ヨリ戻したんじゃ・・
私が行っても「なんで来たんだ?」って顔されるんじゃ・・
心が乱れる。
見ると、いつの間にか私の前まで来ているオーナー
私の答えを待っててくれてる?
「・・あ・・のっ・・」
「空になんて言われた。」
「え?」
空に・・なんてって・・
その、いっぱいありすぎてわかんねぇよっ!!
いっぱいいっぱい・・
あ、・・信じろ・・って。ぜってぇ裏切らねぇからって。
クッと上を向いた私の顔を、目の前に居るオーナーは優しく微笑むと
「行けそうか?」
と聞いてきた。
「はい!」
力強くそう答える私の背中をまたオーナーは軽く押した。
それはパワーをくれてる感がして、また私に力を与えてくれる。

エレベーターは30階を示し、その階に辿りつくと、開かれたエレベーター前にはリクさんと、もう2人見慣れない男の人が立っていた。
その2人がエレベーターの両戸を抑えて、オーナーと私をフロアへと降り立たせてくれる。
リクさん同様2人とも背の高い人で、1人はギャル男系のチャラいかんじなんだけど整った顔してて、平成仮面ライダー役なんかやったらちょ~似合いそ~なんて思っちゃうくらい。
もう1人は対照的に体つきはマッチョ系なコワモテ顔をしている。髪型がソフトモヒカンだからか、でかいハリネズミを想像してしまう。←失礼だろ
そんな観察をしていると、
「居ます」
単語のみでわけわんない言葉をコワモテの人が発する。
その言葉を理解してるのか、オーナーは
「ああ。」とだけ答え、ズンズンと廊下の奥へと突き進んでく、
その後をリクさんチャラ男、コワモテと続き、私も慌てて後を追った。

廊下の一番先。
その扉の前で、オーナーの足が止まる。
たぶん・・ううん間違いなく、ここがその部屋なんだ。
ここに、この扉の向こうに・・空が居る。
ドクンッ
大きく心臓が波打った。
大丈夫!何度もその言葉を繰り返した。

「俺だ。」
扉の前でオーナーが低くそう叫ぶ。
中からの応答は無い。
つーか!普通、俺だって言われたくらいじゃ開けないんじゃね?
無反応な扉に濠を煮やしたのか、オーナーはなにやら胸のポケットに手を入れた。
ハッ!まさかっ!!もしやっ!なんか飛び道具とかじゃないでしょうねっっ??!!!
有り得る!ぜってぇこいつらなら有り得る!!
ヤバイそれだけはまずいよっつ!!!
なんとか止めなくてはっ!!!
「待っ・・」
ピッ
「へ?」 ピッ?
その不穏な音にオーナーの手元を見ると
カードのようなものを扉の取っ手の上部分に差し込んでいる。
アレ?飛び道具じゃない!?え?
あ、これっていわゆるカードキーって奴なんじゃないっすか??
そのカードキーをオーナーが引き抜くと、取っ手を下げただけで扉がスッと開いた。
え??なんで・?オーナーが鍵を持ってるの??
不思議な光景に戸惑ってる私にはお構いなしに皆さん、ゾロゾロとその部屋へと入っていぅてしまう!
「わわっ!」
何がなんだかわかんないけど、慌てて閉まりそうになってる扉をつかみ中へと入った!
セーフ――――――――――っっっ!!!
 
て!なに??この部屋っ??!!
入った途端目に入ってきたのは凄まじいほどの光景で。
壁一面にペンキか絵の具かわかんない赤と黒の色が飛び散ってて
玄関からすぐの床には布?切れッ端が散乱してて
「――!?」なんなの?
こんなトコに空がいるの??
前に居た4人の姿が奥の部屋へ入っていくのが見えた。
ドキドキドキドキ
私の足は皆のようには進んでくれない。
ありえない状況にガタガタと震えが止まらない。
でも、行かなきゃ、私も行かなきゃ。

震える足を引きずるようにして、奥の部屋までたどり着くと、開いているドアからゆっくりと入った。
「!!――・・そ・・ら?」
窓際の白い大きなベッドに目を閉じたままの空が寝かせられている
え・・寝ているんだよね?
全く動かない空の様子に、もしかして?もしかして?もしかして?
の声が鳴り響く。
足が・・足が動いてくんない
なんで、そこに空が居るのに、見えるのに
なんで私はそこへ行けないの?
ガクッ
膝から崩れ落ちたわたしの体。
ガシッ! 「!!」
その体が床に落ちる前に、強い力が私の腕を掴んだ。
掴まれた腕の方を見ると、ソレはオーナーで。
そのまま私を元の姿勢へ立て直してくれた。
「あっ、あっ・・」 言葉にならない私の言葉を
オーナーはフッと笑う。
そして、
「死んでねぇから安心しろ。」と、私をベッドの方へ軽く突き飛ばした。
まだ、足がしっかりしてない状態でそんなんされたからヨロヨロっと空の寝ているベッドの上に倒れこんでしまった。
結果オーライな形で空の近くまで来れた私は、マジマジと空の顔を覗き込む。
ふぅ・・という空の息遣いが聞こえる。
手を握るとほのかに暖かさが伝わってくる。
よ・・
「良かったぁぁ―――・・っぅぅっ・・っ。」
それを確認して安心したせいか、そのまま空の胸の上に泣き崩れてしまった。
その時、
ガッシャン!!と部屋の隅で何かが壊れる音がした!
ビックリして上半身だけを起こし、その音のほうへ目をやると、
床にはガラスが飛び散ってる。
かなり大きい欠片もある。花瓶・・?
そして、立てかけてあっただろうパーテーションらしきものも倒れていた。
その先に誰か座りこんでいる・・
髪の長い・・女の人。
その人が誰かは次に発せられるオーナーの声によってわかった。
「いいかげんにしろ!絵里子っ!!」
あ・・やっぱり、あの人が・・絵里子さん
空の元カノ・・
ゆっくりその姿に目をやる。

少し乱れている長い髪は栗色に染め上がっててゆるく巻き上がっている。
肌がものすごく白い。
スレンダーな体系に見えるけど、ここからでも胸の大きさはわかるくらいある。
絵里子さんもまた私を見ていた。
ぱっちりした瞳が力をもって私を見据えている。
私なんか太刀打ちできないくらいキレイな人。

でも、空の事を傷つけた人。
現に今も空の事を傷つけてる・・人。

そんな私達の前を遮るようにして立ったのはオーナー。
「空は連れていく。」 そう穿き捨てた。
チャラ男さんとコワモテさんが私の側に来て、運ぶからと、空の体を2人で抱み部屋を出ようとしたその時、
また
ガシャン!! 「!」
と金属音が鳴り響いた。
今度は、鉄製の置物が床に叩きつけられている。
「空を連れてくなら私、死ぬからっ!」
「!」
えっ?!
「空を返して!返して返して!!!」 
絵里子さんの叫び声は続く。それと同時に色んな物が壊れる音がする。
なに?
返して?空を?
なに言ってんの?
なっ、
「なに言ってんのっ??」
頭の中の言葉がそのまま音になって部屋に響く。
その声で一瞬、部屋中が静まり返った。
でもすぐにその静寂を壊したのは
「あんたね!あんたさえ居なければ空はまた私の元に帰って来るんだから!」
姿はオーナーの体で遮られているから見てはとれないが、その口調だけで十分、敵意を感じ取る事はできた。
「潰してやるから!あんたなんかすぐに空の前から消してやるから!」
絵里子さんはそう続ける。
「・・・や」
「あんたなんかー・・」
「やってみればっ!」
絵里子さんの声を遮るように私が叫んだ。
「――なっ!」
「やれるもんならやってみろっつてんの!」もう止まらない!
「!!」
「あなたなんか、本当は空の事なんて好きじゃないくせにっ!」許せない!
「!!!」
「空のことを利用しているだけの人になんか絶対に負けないんだから!!」許せない!!
「―――!!」
「空がどれだけ苦しんでいたか知らないで・・っ、勝手なコトばかり・・
――言わないでよっっ!!!」 
それはもう叫びだった。
ハァハァ・・呼吸がうまく出来ない。
涙が声とともに溢れ出している。
心臓がバクバクいってて体が小刻みに震えている。
ハァ・・ハァ
スッ・・
「?!」
そんな私の頭の上に大きな手が乗っかる
ハッとして上を見上げると、いつの間にか目の前にオーナーさんが居た。
「ゆっくり息をしてみろ。あわてるな。」
優しい表情を浮かべ、そう言う。
私は言われたとおり、ゆっくりと息を吸ってはいた。
ハ・・・・ァッ
体の震えが少し治まってくるのがわかる
それもオーナーはわかったのか、頭の置かれた手を離し私からも離れた。
そして、後ろを向いたままの格好で
「後は任せてくれないか。」
「え」
「あんたは空とここから出ろ。」
「――っ?」
そのオーナーさんの言葉と同時にリクさんに腕を引っ張られた。
「行くぞ。」
そう言って、強引に連れ出そうとするリクさん。
「えっ、で、でも」 まだ、言い足りないっ
「これ以上言ってもラチあかねぇだろ。」
相変わらず目つきは鋭いが、口調は意外にも穏やかだったリクさんに
私の興奮状態だったキモチも緩んでくる。
「空のことも心配だろ?」クィっと顎を扉の方に動かす。
そこには、まだ目を開けない空を抱えたあのお2人さんがいて私の方を見ていた。
「・・うん、わかりました。」 そう頷き、
変わらず背を向けているオーナーさんの方にペコッと軽く頭をさげると、リクさんの引っ張る出口へと向った。

私達が扉を開け、外に出た瞬間、閉まりきっていない扉の向こうから
「カイなんて大嫌――いっ!!」
って叫ぶ絵里子さんの声が聞こえた。
カイって・・?誰?オーナーさんの事?
そんな疑問を持ちつつも、そのまま私達はその部屋へ戻ることなく乗ってきたエレベーターへと進んだ。
その後、なにがあの部屋でおこなわれたのかは知らない。

車まで戻ると、チャラ男さんとコワモテさんがすぐに後部座席に空を乗り込ませ、
私は、空の頭が来るほうへと回り込み、その頭を膝の上に乗せる。
リクさんは2人と何かはなしをしてから助手席に乗り込むと、待機していた運転手さんに
また「出せ。」とだけ告げた。
私が窓越しにチャラ男さんとコワモテさんにペコリと頭を下げると、2人もニッコリと笑って(チャラ男さんは手まで振って)見送ってくれた。
結局のところ、あの人たちが誰なのかはわからず仕舞いだったけど、
今、私の膝の上には空の顔があって
手を伸ばせば、触れられる距離で。
「っぅ・・」
今更だけど、安堵で泣けてくる。
「・・ん」
「えっ?」
ピクッと微かに動いた体に顔を空に向けると、
そこには
あの瞳が見開かれていた。
空の・・キレイで鋭い・・まるで鬼のような瞳。
「れ・・?美未・・」 
言葉がたどたどしい。
「そっ・・らぁぁぁ!!」
思いっきりその顔に抱きつくと、
「わっ!ばか!くるし・・っ!」ともがく空。
でも、そんなの無理!絶対離さないんだから!!
「薬で眠らせられてたから、いきなり騒がすと後で苦しむぞ?」
「ええっっ!!!」
リクさんの一言で、すぐに前言撤回!
すぐに空から離れ、「ごめん大丈夫?」
と聞きなおすと、
「だいじょ・・ぶじゃねぇぇっ!!痛ってぇ!なんだ??コレっ!!」
頭を両手で押さえて苦しみだしたもんだから、私までテンパって
「わぁぁぁ!ごめんごめんっ!!」と叫び出し
「てめぇーら!うるせぇぇぇ!!!」リクさんまでもが怒鳴りちらす始末で・・
車ん中は大騒動になって走って行った。

その大迷惑な車が停まった先は、皆で出たあの麗騎士の関係者入口の場所だった。
頭を押さえながら、車から降りる空と、それを横で支える私。そしてリクさんが鉄の門の前まで来ると、中からりかちゃんが心配そうな顔をして駆け寄ってきた。
鉄の門が開かれると、りかちゃんは空の姿を確認して、私の開いてるほうの肩に頭をつけて泣きだしてしまう。
「――っ。」あのりかちゃんが涙で言葉が出ない。
私はそれにつられてもらい泣きしてしまった。

頭がそーとー痛いらしい空は、
「りか、ウゼェ!」と言い、私を置いてさっさとリクさんともう一つの門へ歩いていってしまう。
おかげで、自由になった私は改めてりかちゃんと抱き合い大泣きして。
りかちゃんはりかちゃんで、
「空、ちょ~ムカツクー!!!」って言葉も一緒に吐き出すもんだから泣きじゃなくて笑いにかわっちゃってけど(笑
そうさせてくれたのは空。
ホントは1人でなんか歩けなかったくせに
強がって私を置いて行ったのは、私とりかちゃんを思っての事
鬼のくせにやばいくらい・・優しいんだ。

少ししてから、私達もあの門へ入ると、
一番奥のオーナーの部屋ではなく。その1こ手前の部屋の扉が開かれていた。
「?」
「あ、今はカイさん居ないからこっちの部屋へ入れって事みたい。」
フツーにりかちゃんはそう言う。
「・・・・」
「どうかした?美未香。」
「・・えっと、オーナーさんの名前って、カイさん?」
「え?あ、ああ。美未香はまだ知らなかったんだっけ?」
「うん。・・」
「リクも他の人達の前ではオーナーって呼ぶけど、私と三人の時はカイって呼んでるよ」
「よ、呼び捨てっ?つか!リクさんもオーナーさんも一体何者なの??」
そう!空が戻ってきてくれたことで、少し余裕ができたのか、今まで抱いていた疑問が私の中で呼び覚まされる。
「―――・・ん」
言葉に詰まるりかちゃん
聞いちゃマズイ事だったのかな??
でも知りたいよっ!!謎過ぎるよっつ!!
「ああーわかったわかった!だからそんなに念を送んないで。」
「は??念??」
「うん、今い――――っぱい美未香から出てた。めっちゃ、教えろ~~って念がっ!」
「ぐ!」 それは・・単に顔に出ていただけじゃぁ・・いや、多分きっとそうに違いない
ハッ!そんな事はどうでもいいっ!
「んじゃ、教えてくれるの?」
「はぁ・・・んーまずは空に聞いてみて♪」
「へ?」
「で、教えないようだったら私が教えてあげるから♪」
「は???はぁぁぁぁぁ????」
「ホラ~個人情報の問題もあるしねっ♪」
茶目っ気いっぱいでそう答えるりかちゃん
いや、私の場合、ソレ無かったよ?
フツーにスマホみられましたよ??それはいいんですかい??
「だ~か~ら~まずは空に聞いてって♪」
私の心を読んだらしいりかお嬢様はさっさと、その開かれている扉の中へと駆け込んだ。
ちっ!逃げたなっ


とりあえず、
部屋へ入るとオーナーの部屋にあったのと同じソファが置いてあって、
そこに頭を押さえた空が仰向けに寝ている。
リクさんはカウンターバーのような場所でなにやらしていた。
照明がちゃんと点いているこの部屋は全体がよく見え
奥にビリヤードの台と、壁にはダーツの的が3つ飾ってあり、
事務所のような堅苦しさがない部屋だった。

カウンターの中から、リクさんは出てくると手にゲラスを持っていて
それを空に差し出す。
「あ?いいよ。んなもん」
「いいから飲んどけ。」
「ちっ。」
ぶすっとした顔をしながらも空はそのグラスを手にとる。
それが何かわからないでいる私は、思わず空の事をガン見してた。
すると、
こっちこっちと手を振られた。
ん?空の方へ来いって事?
手の振りにつられて空の側まで行くと、グラスの中のものを飲むため半分体を起した分、スペース開いた場所に私は座らされた。
まだ頭の痛みが取れないらしい空は、相変わらず顔を歪めてる。
「大丈夫?」
「ん、ああ。多分これ飲めば少しは楽になると思う。」
と、グラスを指さす。
「多分じゃねぇ!絶対だ!早く飲め空!」
頭上から降ってくる鬼リクさんの声に
「ちっ」 軽く舌うちをして、空はソレを飲み干した。

「まずっ」 顔を歪めて舌を出すその仕草に、つい
「子どもみたい。」と、私はふふっと笑ってしまった。
「・・ムカつく。」
「へ?」
「お前にガキ呼ばわれされっと、ちょームカつく。」
「は?」
「後から、おぼえとけ。」
「はひ??!!」
なんでか、ちょーが付くぐらい不機嫌モードな空。
つか!なに??そんな事でむくれること自体,がガキなんじゃね?
ガキ扱いされたって文句言えないんじゃね??
負けじと、私も不機嫌モード全開してみた!
がっっ!!
ソレをチラッと横目で見ただけで「はぁ・・」とため息をつかれたしっ!
うぬぬぬぬぬぅぅ!!!
「はぁぁぁ」 
なぬ?!もっとデカイため息つかれたよっっ!!?
「ちょ、空っ・・」
「リク、俺やっぱ、少し横になってくるわ。」
私の言葉なんて全くスルーでっ!!
リクさんにそう言うと空はソファから立ち上がった。
グイッ
「へ?」
それと同時に引っ張りあげられてる私の腕。
????????
「お前も来んだよ!」
「へ?」
体勢的に↑から見下ろされるその目は真正面から見るよりも鋭さ↑↑↑してて
思わず
「はっ、はい!」と返事をし、立ち上がってた!←あああっ・・なんて小心者なんだぁぁ私ぃぃっっ(><)
空は、そんな私の腕を掴んだまま、その部屋から出ると、すぐ目の前の部屋へと引っ張っていく。
「え?いいの?勝手に入って。オーナーさんの許しとか・・」
私がそう心配すると、
「俺らのたまり場に許可なんかいらねぇんだよ。」
との返事。
「・・・え?」
えーと・・た・・まり場???
普通に疑問
「んと、たまり場って、よく不良とかが作ってる場所の事だよね?」←あいまいな知識
「・・・・」
空、なにも返事しない。
「それとは違う意味のたまり場ってあるんだね、知らなかった。」
ホントにそう思った。
「・・・」
まだ、空はなにも答えてくんない。
「空・・」 って声をかけたトコで固まった。
その部屋の
奥の壁一面に広がる
黒い大きな布に言葉を失った。

なに・・これ?旗?

黒い重厚な布には金色の刺繍でなにかいっぱい縫われていて
その中でも、ひと際目立って「鬼」と「士」の文字が浮かびあがっている。

「・・鬼(おに)・・士(し)?」
「ちげぇよ、鬼士(きし)って読むんだ。」
「・・・・は?」
斜め前に立つ空が振り向きもしないでそう言った。
「きし・・?」・・って何?!
「ん―――・・いわゆる
・・・族名。」
少し躊躇いながらそう答えた空。
「ふー・・ん・・・・・・
―――――――――んっっ???!!えっ??ぞ、族?名??え?暴走族の族っ??!!」
「長ぇな。」
理解に少々時間がかかってしまった私につっこみいれてきた
つか!
「言ってるイミが把握できてないんですが??!!」
「・・ばか?」
「は?」
「だな。」
「はぁぁ???」
そんな失礼極まりない言葉をわざわざ区切って言ってきやがる!!
「だって!・、暴走族の旗がなんで麗騎士の中にあるの?
ここは執事様の館でしょ??!!どう考えても不釣合いだよ??」ふるふるっ
「・・・館って。」
「乙女の夢の楽園じゃん!ここは!」
「あ・・ああ」
「なのにおかしいよっ~~~~!!!」
「・・・・」
私の気迫に押されたのか空は何も言わない。

まぁ、確かに空もリクさんもオーナーさんも執事っーよりは鬼だけどさ!
鬼そのものなんだけどさ!
ん??
点・点・点
んんっ??!!
今、なにか頭を過ぎったぞ??
空・・も
リクさん・・も
オーナーさん・・もっ
鬼・・

鬼  
点・点・点・・
ま・・さ・・
かね?
チランと黒い布に目をやる。
「鬼士」の文字を囲むように金の刺繍でいっぱい名前が縫われている。
その中でも一番大きくド真ん中に縫われている名前
【相馬 戒】
そうま・・かい?って読むのかな?相馬って空と同じ苗字だなぁ??
しかも、戒(カイ)って・・
その隣の名前も他の文字よりは大きく縫われている。
え・・っと
【水城 陸】 みずき・・りく・・?
んー・・???
真ん中を挟んで反対側の名前も大きい
んー・・
【要 凌司】 かなめ?りょーじ?
その名前の隣へ視線を移したところで
私の抱いていた疑問は
確信に変わった。
【相馬 来紀】
と縫われている文字を見て。

これは空の本名。
同姓同名?なワケないよね。
山田太郎とかだったらソレもアリだろうけど(←山田太郎さんに失礼だろ
ゆ~~っくりと視線を空に移す
「ぅ!」
知らぬ間に、私の方をじっと見つめてた空の瞳。
そして
「・・ソレ、俺。」
と、正解確定の言葉!
「―――――“!!」
「ついでに言うと、その真ん中のムダにでけぇ名前がカイ。隣のがリク。」
「――――――“”“っえっ??!!はっ??」
「・・カイが立ち上げた俺らのチームだよ。鬼士は。」
「!!!!」
「・・・」
ちょっと待て
ちょっと待ってくれっ!
「んと!カ、カイさんて・・オーナーさんの事だよ・・ねっ?」一応確認!
「ああ」
「カイさんてこの戒さん?」 再度確認!
旗の中央に君臨している【相馬戒】のトコに指をさし聞いてみる。
「・・ああ」 今、そう言ったろ!って顔をする空。
更に付け加えて、
「ここの従業員はすべて族関係の奴らで成り立ってる。」
「はっ??!!」
えっ!?
え~~と??
んーと???
ん~~~~~~~~と!!
つまり?
皆さん?
ここの執事の館のお方は?
オーナーをはじめ
ぼーそーぞくの人達の館だったってコト??
・・
さ・・
「サギだ」
「あ?」
私のつぶやきに空の眉が吊り上がる。
ぅ・・っと一瞬怯んだけど
そこは私!
負けじと、反対に睨み返し
「だって、間逆じゃん!セレブ執事と悪の暴走族だよ?接点0じゃん!」
「・・・」
「完全に客のコト騙してる!サギでしょ!」
その言葉にさすがに空も
「騙すっつーか、・・カモフラには使わせてもらってたかもな。」
と言葉を発した。
「カ、カモフラってレベルじゃないよっ!?」
「色々、事情あんだよ!」
「っ!
なっ、なによ!そんなどなり声あげればいいってもんじゃ・・」
「居場所を・・」
同じく怒鳴り声で返そうとした私の声を空の次の言葉が黙らせる。
「え?」
「・・・族関係の奴らの居場所、特に悪い奴なんかは行き場所ねぇんだ。
社会にも・・
自分ちにも。」
「!」 え?
「親からも見放されてる奴ばっかでさ、
そんなん、これからどーすんだ?って。」
・・・ん
「・・でも・・それは・・
自業自得なんじゃ・・」 
私は冷たいけど正論を言った。
だってそうでしょ?普通にまじめに生きてる人達だったら社会からも親からだって見捨てられるコトなんてない。
「・・最初から
好きで族に入った奴はいねぇよ。」
「は?」
「そいつらにはそいつらなりに色々と抱えているものがあるんだ。
俺も、そうなようにな。」
「!」
今の一言が胸に突き刺さる
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夫とは卒業と同時に婚姻、 1年以内に妊娠そして出産。 跡継ぎを産んで女主人以上の 役割を果たしていたし、 円満だと思っていた。 夫の本音を聞くまでは。 そして息子が他人に思えた。 いてもいなくてもいい存在?萎んだ花? 分かりました。どうぞ若い妻をお迎えください。 * 作り話です * 完結保証付き * 暇つぶしにどうぞ

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