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第十九話

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「どう言うことかしら?」

何を言っているのかわからないといった表情で麗子が首を傾げた。

しかし、麗子が自らのカリスマスキルで支配できていないという確信がある裕也にとっては、麗子の反応は演技にしか見えなかった。

「誤魔化さないでよ、麗子さん。他のクラスメイトたちがおかしいことは気づいているんでしょ?」

「…」

そういうと麗子が真顔になった。

じっと見定めるように裕也を見つめる。

が、次の瞬間に麗子は堪忍したようにため息を吐いた。

「やはりあなたが原因だったのね、有馬くん」

「ははっ…やっぱりそうか」

麗子はクラスメイトの異変が裕也のせいであったこと、そして裕也は、やはり麗子がカリスマスキルによって支配できていなかったことを確認する。

「おかしいと思ったのよ。あなたは元の世界にいた時から慕われていたけど…この世界に来てからのクラスメイトたちのあなたに対する信頼度は正直異常だったわ。なんらかの力が働いているのは明らかだった」

「ふふ…完全に認めたね、黒崎さん。自分だけが正気であることを」

「隠したって無駄だもの。どうせ、ある程度わかっていたのでしょう?」

「まぁ、ね」

「それで…生徒たちを全員骨抜きにしたのは一体どう言うカラクリなの?」

「教えないよ。わざわざ手の内を明かしたくない」

「…そう」

「そう言うなら君こそ自分のスキルをちゃんと明かしてよ、黒崎さん。天気を予想できるスキルってのは明らかに嘘だよね?」

裕也は、クラスメイトたち全員に持っているスキルがなんであるかを喋らせた。

その際に、裕也のカリスマスキルによって支配された生徒はみずからのスキルを包み隠さずに告白しただろう。

が、麗子は明らかに嘘のスキルを申告していた。

麗子はスキル鑑定の時に、裕也と同程度にスキル鑑定の水晶を光らせた。

つまり裕也の『カリスマ』スキルに匹敵するような強力なスキルを得たと言うことだ。

そんな麗子のスキルが……ただ単に『天気を予想できる』だけのスキルであるはずがないのだ。

おそらく麗子は嘘のスキルを申告したのだろうと裕也は思っていた。

「さあ、どうかしらね?そちらがスキルの全容を教えてくれるのなら、こちらも嘘かどうか教えてくれないこともないけれど?」

真のスキルを問い詰める裕也に対し、麗子はふんと鼻を鳴らしてそういった。

その返事は、裕也にとってはほとんど嘘のスキルを申告したと認めたようなものだった。

裕也は麗子に対する警戒レベルをまた少し上げることにした。

「それで…?わざわざ私だけこの場に残して、一体なんのようだったの?私があなたに操られてないことを確認して、それで終わり?」

「まさか。それだけじゃない」

裕也がニヤリと笑った。

見るものが見れば、ゾクリと寒気の走るような、気色の悪い笑みだ。

それを向けられた麗子も、明らかに不快そうな顔になる。

舐め回すような視線を麗子に向けながら、裕也はいった。

「抱かせろ。黒崎麗子。俺の女になれ」

「…っ」

とうとう本性を表した裕也に、麗子は最大限の軽蔑をするような表情になるのだった。




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