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第十一話
しおりを挟む「なるほどね…」
俺はここに至るまでの経緯の全てを事細かに新田から聞き終えた。
「似てるな…」
新田の話を聞いて第一の感想がそれだった。
異世界にクラスメイトと共に召喚されて、役立たずだと置いていかれ、孤立する。
今の状況は、『前回』のそれと非常に酷似していた。
所詮、場所や人が変わっても人間の本質は変わらないものなのだとそう思った。
自分のために他者を簡単に切り捨てる。
切羽詰まった状況では、人間の本性が出やすいというが、この状況がまさに、俺たちを放置したクラスメイトたちの本性を物語っているだろう。
「これで、私が見てきたことは全部…今度は一ノ瀬くんの話を聞かせて…?」
「あぁ…そうだったな」
俺は話を聞く代わりに自分の話もしなくてはならない約束だったのを思い出す。
「さっきのは…一ノ瀬くんがやったの…?もしかしてスキルの力…?だったりする…?」
さっきの、とは俺がブラック・ウルフを瞬殺したことを指しているのだろう。
さすがにあそこまであからさまにやって誤魔化すこともできないため、俺は新田に頷きを返した。
「そうだ。あれは俺がやった。長くなるから省略するけど、あれはスキルじゃなくて魔法って力だ」
「魔法…?」
「この世界の住人が使える能力だ。スキルとはまた別物なんだ」
「ど、どうして一ノ瀬くんがそんな力を使えるの…?もしかして一ノ瀬くんは、この世界の人なの…?」
「いや、違う」
俺はかぶりをふった。
「これも長くなるから今は省略するけど…訳あって俺はこの世界は二度目なんだ」
「に、二度目…?」
「そう。この世界に召喚されたのは、これで二回目だ」
「…っ!」
新田が大きく目を見開く。
驚き、というよりも何かに合点が言ったような顔だ。
「そっか…やっぱりあの神隠しの事件の噂…本当だったんだ…一ノ瀬くんは以前にもクラスメイトとこうして召喚されて…」
「ん?何か言ったか?」
新田が小さい声でボソボソと何かを呟いている。
俺が聞き返すと、新田は慌てて首を振った。
「ううん、なんでもない…!そ、そっか…ここにきたのが二回目…だから、魔法が使えたんだね」
「そういうことだ」
飲み込みが早くて助かる。
俺は新田の理解力に感心する。
「あっ、それじゃあ、さ…もしかして一ノ瀬くんは、この世界から日本に帰ることが出来る魔法を使えたり…?」
「すまないが、そういうことは出来ないんだ」
これは本当だった。
世界間の移動には、非常に高度な技術が必要で、これは王族たちのみが知るものだ。
俺には召喚魔法は使えても、送還魔法は使うことは出来ない。
よって現状、俺には日本に帰るための手段がなかった。
「そ、そっか…」
新田があからさまにがっかりした顔になる。
「なんかすまん」
失望させてしまったようで、俺は一応謝っておく。
「あっ、ご、ごめん…!違うの…別に一ノ瀬くんを攻めている訳じゃなくてね…?」
「だが、まぁ、安心して欲しい。前回も俺はこの世界から日本に帰った訳だし、どうすればいいかは検討がついてる」
「そ、そうなの…?」
「ああ。新田。お前はさっき、自分一人で逃げることもできたのに、俺を助けてくれたろ?」
「う、うん…」
「その恩は返すよ。最低でも、お前だけは必ず日本に帰してやる」
「…っ」
カァアアと新田の頬を赤くなる。
俺から目を逸らし、明後日の方向を見てもじもじとし始めた。
うーん、今のはさすがに臭すぎたか。
しかし、これは俺なりの決意でもあるからな。
とりあえず俺の第一の目標は、新田を日本に帰すことだ。
そのためならどんなことだってする覚悟がある。
「よし、それじゃあ、とりあえず王都へ向かおうか」
「お、王都に…?」
「ああ。送還の方法を知っているのは王族だけだからな。とりあえず召喚主たちに合わなくちゃいけない」
「わ、わかった…!」
前回の召喚のおかげで、大陸の地図はおおよそ把握している。
どこに向かって歩けばいいかもわかっている俺は、王都の方向に向かって新田と共に歩き始める。
まさにその時だ。
「まさか召喚されてすぐにあそこまでスキルを使いこなす生徒がいるとは思いませんでしたよ」
「…?」
「…っ!?」
俺たちの間近に唐突に、見目麗しい美女が現れた。
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