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第六十話

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「嫌だあああああああ!!!」

「きゃあああああああ!!!」

「ぎゃあああああああ!!!」

あちこちに人々の悲鳴がこだましている。

俺たちがガザド村にたどり着いてみると、そこでは阿鼻叫喚の地獄絵図が広がっていた。

あちこちで、村人たちがモンスターに襲われている。

木造りの家は、粉々に破壊され、見るも無惨な死体が数多く転がっていた。

「くそっ!遅すぎたかっ!!」

ガレスが悪態をつく。

予想していなかったわけではなかったが…ガザド村はもはや壊滅的なダメージを被った後だった。

ざっとみたところ、生きている人間は数十人。

残りはどうなったかわからないが、その多くがすでに命を落としていることだろう。

「モンスターどもが!!おらあああっ!!」

ガレスが襲いかかってきたモンスターを1匹、切り飛ばす。

「早いところ掃討しましょう!!」

「今生きている人たちだけでも救わないと!」

他の二人もそれぞれ武器を構えた。

そんな中、俺は武器は手に取らず、落ち着いて全体を俯瞰する。

「各個撃破していったところでキリが無い…」

モンスターや村人はあちこちに散らばっている。

俺たちが一人一人救って行ったところで、犠牲者が増えるだけだろう。

出来ることならば、散らばったモンスターを一箇所に集め、一気に駆逐するのが望ましい。

「となると、あの魔法か…」

俺は滅多に使うことのない『ある魔法』をこの場で使うことにした。

「ソフィア!」

「何よ!?」

大声で『彗星の騎士団』の後衛の名をよんだ。

「今から俺がモンスターを一箇所に集める。そしたら、俺ごと魔法でモンスターを蹴散らしてくれ」

「はぁ!?何そよれ!!そんなこと出来るわけないでしょ!!」

「いいから!今は指示に従ってくれ!!」

ここで問答をしている暇はない。

俺はすぐさまその場を後にして、村の中心部に向かって駆け出した。

そして、三人から十分距離が取れたところで、魔法を使う。

「デコイ!!!」

『『『『………!!!』』』』

モンスターのヘイトを買う魔法、デコイによって、モンスターが一斉にこちらを仰ぐ。

ドドドド!!!

「…!」

そして次の瞬間には、今まで襲っていた村人たちには脇目も振らず、俺に向かって突進してきた。

「今だ!!ソフィア!!やれ!!」

そのタイミングで、俺はソフィアに魔法を撃ち込むように指示をした。

これならば、村付近のモンスターを一気に仕留めることが出来る。

だが…

「で、出来るわけないでしょ…!」

なぜかソフィアが魔法を撃たない。

俺ごとモンスターへ攻撃することに、躊躇しているようだ。

「何をしている!!ソフィア!急げっ…くっ!!」

俺は近くにきた数匹のモンスターを斬り払う。

早くしなければ…物量で押し潰されてしまう。

「…っ…あああっまったくもうっ!どうなっても知らないからっ!!」

遠くから何やらソフィアの怒鳴り声が聞こえる。

それと同時に、莫大な魔力が膨れ上がるのを感じた。

「そうだ、それでいいソフィア」

直後、巨大な爆発が俺と周囲を襲った。

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