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第一章

第四話

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「に、虹の光…!?まさか…!!」
神父が目を見開く。
気づけば俺の体を天から降り注ぐ虹色の光が包み込んでいた。
まるで洗礼の儀式の時のような光だ。
「ありえない…2度目の洗礼の儀式なんて…前代未聞だ…」
神父が女神像と俺を交互に見ながら、信じられないと言った口調でそう言った。
だが、俺はそれどころじゃなかった。
なぜなら…
「SSSランクスキル<大魔道士>…これが俺のスキル…?でも…」
そう。
信じられないことに、俺の頭の中に2個目のスキルの情報が流れ込んできたのだ。
女神様から授かれるスキルは、一人につき一つと決まっている。
これは絶対に覆らない法則のはずだった。
だが、俺は現在、<女神の寵愛>と<大魔道士>の二つのスキルを持っている。
それも両方とも、最高ランクのSSSのスキルだ。
こんなことがあるのだろうか。
「何が起こってるんだ…?まさか君、もう一つのスキルを…?」
「そう、みたいです…」
恐る恐る尋ねてくる神父に、俺は信じられない思いで頷いた。
「ありえん…一人の人間が二つのスキルを授かるなんて考えられないことだ…」
「何が起こってるんでしょうか?」
SSSランクスキル<女神の寵愛>。
このありえない現象は、ひょっとしたら正体不明のこのスキルが原因となって引き起こされたのだろうか。
スキルの情報がいまだにわからないために、断定は出来ないのだが。
「ひょっとして…君こそが女神の生まれ変わりなのかもしれない…」
「いやいやいや、それはないですって!!」
突拍子もないことを言い出す神父に、俺は慌てて首を振った。


「夢とかじゃないよな?」
教会を後にして家に戻ってみても、俺はいまだに自分の身に起きたことが信じられなかった。
先ほどの出来事は、全て夢だったんじゃないかとさえ思ってしまう。
「試してみるか…」
<女神の寵愛>の時と違って、<大魔道士>を授かったときには、しっかりとスキルの使い方まで頭に流れ込んできた。
俺は恐る恐る前方に手をかざして、スキルを行使する。
「ファイア・ボール」
次の瞬間、直径一メートルくらいの火球が出現し、ものすごいスピードで壁に激突した。
ドゴッ!!!
「うわっ!?」
何も考えずにスキルを使ったことを俺は後悔する。
「嘘だろ…」
俺の自宅であるぼろ家の壁に、見事なまでの大穴が開いてしまった。
火球は地面に落ちてからもまだメラメラと燃え盛っており、やがて木でできた俺の家に燃え移ってどんどん広がっていく。
「まずいっ!?」
俺は慌てて、消火のためにスキルを使用する。
「ウォーター・ボール」
次に出現したのは、先ほどの火球と同程度の大きさの水球だった。
水球は見事火球に命中し、ジュッと音を立てて、火を全て消してくれた。
「ふぅ…」
うまくいったことに、安堵の息を吐く。
SSSランクスキル<大魔道士>。
今度はハズレスキルでもなんでもない、間違いなく『当たりスキル』だった。
信じられないことだが、現在の俺は<女神の寵愛>と<大魔道士>の二種類のスキルを持っていることになるらしい。
「はは、ははは…」
俺はヘナヘナとその場に座り込んでしまった。
そしてしばらくの間、家に空いた穴を見つめながら乾いた笑いを漏らすのだった。



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